6.エフォル到着
リョウ視点です。
リナと村へ向かう間に俺は、リナからこの世界の種族について聞いた。
人族、エルフ族、ドワーフ族、魔人族、竜族、獣人族と今まで小説で読んできた種族がほとんどだった。
大体の認識は合っていたが、人族が他種族を見下していることが引っ掛かった。
俺も周りから見れば人族である。
せっかく異世界に来たことだし、様々な種族と話してみたいと思っている。
しかし、他種族を見下している人族が相手で会話が上手くいくのかと思うと、不安で仕方ない。
まあ、まだ会ったこともないうちに考えすぎても仕方がない。
案外話してみると、良い関係が築けることもあるだろう。
現に俺はリナとこうして歩いている。
リナの人の良さもあるのだろうが、こうして俺たちは種族の隔たりを無くして話すこともできているのだ。
俺の努力次第で他の種族ともこうした関係は築けるかもしれない。
そう考えるとこれからの生活が楽しみになってくる。
今のところ、上手く行き過ぎな気もするが、上手くいっているなら気にするなといつもの楽観的思考で過ごすことにした。
そうして今更ながら
「そういえば、村の名前は何て言うの?」
とリナに聞いた。
相変わらずリナの笑顔や仕草にドキドキしつつ、浮かれていたため、村の名前を聞き忘れていたのだ。
多分他にも聞いていないことや、本来聞くべきことが沢山あるのだろうが、リナがあまりにも可愛すぎて緊張やら、ドキドキやらでそこまで頭がまわらない。
リナはそんな事まったく思っていないのだろうから尚更一人でテンパっている自分が恥ずかしくなってくる。
このドキドキを知られないようにしようと、心を落ち着かせているところで、先程の質問が返ってきた。
《村の名前はエフォルって言うんだ。この辺の森では一番大きな村で、先祖が森に移り住んできた時に、森に住むエルフ族の村って意味で付けたんだって!今は森から出て生きてくエルフもいるんだけどね》
向かっている村はエフォルと言うらしい。
良い名前だなと思いつつ、リナの言葉を思い出すと疑問が生まれた。
「森の外に行くエルフ族は結構いるの?」
俺の知る小説のエルフは森で暮らしていて、森の外に出るのは奴隷にされてしまったり、冒険者などの職業に就く者で、あまり多くない印象だった。
ただ、今のリナの話を聞く限りでは森の外に出てもエルフが普通に暮らせる基盤があるように思える。
色んな可能性を考えていると、俺の質問にリナが答えた。
《森の外に住むエルフはあまり多くないけど、森の外の世界を知るために、森から少しの間離れることは結構あるよ。私も学園に通ってるし。》
思ったよりもエルフと人族との交流は深いみたいだ。
閉鎖的な印象をエルフに持っていた俺は意外とアクティブなエルフ族に思わず笑ってしまった。
何で笑ってるんだろう?と不思議な顔をしているリナだが、相変わらず可愛い。
会ってまだそんなに時間も経っていないが、不思議とリナには心が開けている。
そんな事に気付いてしまうと顔が熱くなってきたが、表情に出ないようにしていると、ふと先程浮かんできた疑問をリナに聞いてみる。
「この世界にも学園があるの?」
小説では見かけることもあるが、まさか、たまたま会ったリナが学園に通っているとは思わなかった。
学費など色んな費用がかかるだろうから簡単には入れないだろうけど、学園があるなら行ってみたい気持ちはあった。
小説とかの印象だが、様々な種族が学園に通い、コネを作ったり、種族を超えた友情を育んだりと、夢広がる場所だ。
俺の世界の学校も似たようなものだったが、俺が通っていた学校はどこも、冷めた人が多く、やる気のある人は煙たがられるような所だった。
結局行動しなかった俺が言うべきではないが、とてもつまらない場所だった。
色々知っている世界でも、そのような空気が蔓延してる場所で先陣を切る事はできなかった俺が、異世界にきて同じような状況になった時行動が起こせるのか。
そう考えると学園に通ったとしても同じになるのでは無いかと不安を抱いていると、リナはとても楽しそうに学園について教えてくれた。
《リョウの世界にも学園があったの!?私の通っている学園はエジマリフ魔導学園って言う所で、さっき私のあげた種族のうち竜族以外が通ってて、国内で一番大きな学園なの!》
《生徒の数も多いし、どの種族も友好的な人達が多くて、毎日すごい楽しめて、クラスっていうのもあって、行事はクラス対抗ですごい盛り上がるんだ!》
《授業は色んな功績を残した有名な先生達がたくさんいて、様々な知識を教えてくれるんだよ!》
《それだけじゃなくて、研究施設とかも揃ってるし、学園がある町オーノスはエジマリフ学園を全面的に支援しているから、最新の設備が揃っているから、ちゃんと学べばこれ以上の環境はないの!》
思ったよりも詳しく、しかも凄い勢いで話してくれた。
さっきの種族の話でも思ったけど、自分の興味のあることを聞かれると、勢いでどんどん話してくれるみたいだ。
俺はこの世界の知識を全然知らないから色々話してくれるのは嬉しい限りだし、(考察)のおかげか物覚えもよくなっている。
しかも話し終わった後に、ハッとこちらを恥ずかしそうに見て、真剣に聞いていたのがわかると、嬉しそうに笑うのが最高に可愛い。
何かリナを可愛い可愛いしか言ってない気がするんだけど、そんな言葉でしか表現できない俺のボキャブラリーの少なさに泣けてくる。
リナが可愛い話は置いといて、学園での生活は聞いただけでも凄く楽しそうで、是非行ってみたいと思ってきた。
魔導学園というくらいだから魔法も教えているんだろうし、この世界の歴史や文化、色んな種族との交流、最新の設備や研究などもあるなら、元の世界に戻る手がかりを見つけることもできるかもしれない。
そうすると、何としても学園に通わなければならない。
学園に必要になる物をリナに聞こうと思っていると、リナが俺の隣から前に走っていき、村の入り口で手を広げて
《ようこそ!エフォルへ!》
と挨拶してくれた。
満面の笑顔でいうリナに思わず見惚れてしまったが、何とか意識を持ち直し、リナへ笑顔を返し、二人で村へ入っていった。
次の更新は4月18日予定です!
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