37.ダスガリット
リョウ視点です。
メンテナンスといっても、俺の武器はそもそも整備のいらない物だし、この世界に来て初めて武器を持った俺がサビ取りに必要な知識があるわけがないので、まずは短剣に意識を集中させてみる。
すると、微かだが俺の魔力に短剣が反応しているのがわかる。
俺は魔力を操り、形、質、強度、込めるイメージ等を変えながら、短剣に魔力を流していく。
すると、俺の魔力に呼応して元から強かった存在感が一気に増してきた。
それに伴い、短剣から本来の力を取り戻す手順が伝わってくる。
それを1つずつ試していくと、ようやくサビが少しずつ取れ始めた。
薄らと見える刀身の輝きは今まで見てきた武器の中でも1番で、下手をすればカリバーンよりも格上の武器かもしれない。
気を緩めずに、手順にそってサビを取っていく。
すると、ようやくサビを取り終えて元の綺麗な短剣へと戻った。
これは半端じゃない。
見るだけでも伝わってくるこの短剣の強さと美しさ、それに加えて効果まで規格外みたいだ。
精霊短剣ダスガリット。
これがこの短剣の名前らしい。
先程サビ取りの為に流した魔力から、この短剣の歴史を読み取ることができた。
というよりも、この剣の意志のような物が混じりあってきたというのが正しいだろう。
だが、完全に俺の魔力と同化する前に、意志の方が俺から離れていった。
理由はよくわからないが、何かを断念しているような感じだった。
ともかく、その時に感じた短剣の記憶から、この短剣が精霊同士で戦った過去の大戦の時に、光の精霊シャライが生み出し、愛用していた物であることがわかった。
どこで見つけてきたかは知らないが、どうやらこの短剣は持ち手を選ぶようで、錆びた状態はこの短剣の選別のようなものだったらしい。
なら、錆を取れた俺ならばこの短剣を使えると思ったのだが、どうやら短剣にも理由がわからないらしく、何度短剣に魔力を合わせても、同化する前に短剣の方が離れてしまうのだ。
俺に使えないと知って、少し残念だったが、良い装備に間違いはないので、サクラにも使えるか試してもらう。
「サクラ、錆びた短剣のメンテナンスが終わったんだが、どうやら俺じゃ使えないみたいだから、サクラは使えるか試してみてくれ。」
《これがあの短剣!?、これ凄いなんて物じゃないわよ!、こんな品質の装備は初めて見たわ、リョウが使えないのに私に使えるかわからないけど、やってみるわ。》
そしてサクラは、先程の俺の動きを見ていたようで、俺のやり方を少しだけ自分流にアレンジして魔力を流していた。
まだ俺よりも効率も質も悪いが、その内に俺は魔法でサクラに勝つことは出来なくなるかもしれない。
その片鱗は既に見えてきている。
俺はこれからが楽しみだと思いながら、短剣とサクラの魔力のやり取りを眺めていた。
すると、俺の時とは違い、サクラの魔力と短剣のエネルギーが合わさり、同化して、新たな力へと変えていく。
精霊剣ダスガリットは、光の精霊のシャライが作っただけあるので、魔法の強化をしてくれる。
それに伴い、より効率よく魔力を使えるように、所有者の魔力に合わせて短剣のエネルギーが同化していき、より最適化していく。
どうやら、俺の時とは違って短剣に認められて、短剣のエネルギーと自分の魔力を無事同化させる事ができるようになったみたいだ。
同化を終えたサクラは不思議そうな顔をしていたので、異常がないかを確認する。
「おめでとう!、無事に短剣との同化に成功したみたいだな、何か身体に以上とかはあるか?」
《ありがとう!、ほんとにすごいわねこの短剣、同化したエネルギーからこの短剣の歴史を感じられるし、同化のおかげで身体の調子はかなりいいわよ!》
「それならよかった!、今日の模擬戦はどうする?、その武器に慣れるまでは少し時間がいると思うから少しあとでも構わないよ。」
《仕方ないけど、予想以上にこの短剣の潜在能力が高すぎて、まだまだ戦闘なんてできないからね、悪いけどリョウ、今日は1人で訓練するわ、今日はありがとう、とても楽しかったし、色んな発見が出来てよかったわ!、また次もよろしく頼むわよ!》
「楽しんでもらえてよかったよ、俺も今日は楽しかったよ、また次もお互いに楽しんで、最後に模擬戦で締め括ろうな!」
こうして、俺とサクラの絆はより一層深まった。
サクラと離れ、朝のおさらいと実戦形式で魔法を使いまくりながら捌いていく。
昨日よりも今日、朝より昼と言った具合に1日1日を無駄にせずに成長できるように訓練していく。
(並列思考)でサクラの様子を見てみると、魔法の威力が今までと桁違いに強くなっている。
そして、俺のやり方を真似し、量は少ないがその代わりに迎撃が短剣なのでバランスをとりながら実戦訓練をおこなっていた。
段々と動きの良くなっていくサクラを見ていると楽しい気分になる。
こうしてお互いに訓練をしていると、リンダから呼び出しがかかる。
[リョウ様ー!、ご飯が出来ましたので戻ってきてくださーい!、そして私の愛を込めた料理を食べてください!]
[ありがとな、早く戻るからもう少し待っててくれ。]
こうして、俺とサクラは訓練を終えて俺たちの部屋へと戻っていく。
もちろん、人払いの魔力撒きも忘れないで発動させている。
そのおかげで馬鹿共に遭遇することなく俺たちの部屋へと着いた。
いつも通りに席順をクジで取り合い、ようやく食事を始める。
相変わらず美味しいリンダの食事に満足し、今日あった出来事などを個人個人で話している。
まあ雑談とか世間話程度の話なのだろうが、やはりそこは女の子だけあって、みんなとても楽しそうに盛り上がっていたので、俺は(並列思考)で全員の話を聞いて楽しんでいた。
やがてしゃべり疲れたのか、みんなの眠そうな様子がわかったので、早速アミダくじを使って、今日の添い寝する人を決めていく。
今日は、左にサクラ、右にリンダという組み合わせになった。
リンダの動向が少し心配だったのだが、リンダも疲れていたようで、俺の腕に抱きついて身体を寄せて寝てしまった。
サクラも慣れない短剣の扱いで疲労しているようで、すぐに寝息をたてはじめた。
他のメンバーも余程さっきの会話が楽しかったのか、ベッドに入ると即座に寝息をたてていた。
みんなの寝息をを子守唄にして、俺も眠りについた。
クラス内トーナメントまであと3日!
次回更新は6/3です。
もうすぐpvが20000になります!
これも皆さんのおかげです!
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