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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第2章 エジマリフ魔導学園編
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26.未確認生物の正体

リョウ視点です。

ウィダル荒野で最初に出会ったモンスターはハリネズミのような生物だった。

だが、体長は3メートルを超えるほど大きかったので俺は勝てるか不安だった。

それでも、大きな体長のせいで動きが鈍いハリネズミだったので、とりあえず何とかなりそうだ。


今までは明らかに俺たちよりも弱いと思えるモンスターだったり、小さなモンスターが多かったので気にならなかったが、これからモンスター狩りに出かけて稼ごうとするならこういったモンスターと戦う事も増えるだろう。

とりあえず、力試しをするために俺は魔法で戦うことにした。


どの属性が効くかはわからないので、とりあえず全ての属性を展開させ、最大強化してから放つ。

ドペルのおかげで質が上がった魔力は、魔法の強化限界をあげてくれたようで、今までは消費魔力を3倍までしか上げられなかったが、今では7倍まで上げられるようになったため、威力もそれだけ上がった。

魔法が直撃すると、一発目から敵がダウンしてしまい、その後の魔法で跡形も無くなってしまった。


見かけ倒しの敵にガッカリしていると、スートから声をかれられた。


《リョウはもう少し自分の実力を正確に把握した方がいい、あの程度の相手リョウなら、ゴブリン達と変わらない。》


「え、そんな感じなのか?、何か身構えて損したな。」


《そもそも、エルンに模擬戦で勝っているんだから、それよりも脅威を感じない相手に負けることはない。》


「そう考えるとそうだな、アドバイスありがとな。」


そう言ってスートの頭を撫でると、幸せそうにしながらも少し照れていた。

そんなスートをかわいいと思いつつ、次のモンスターを探していく。

今度は素材を回収するために、原形を残すように戦わないといけないな。


そうして次に遭遇したのは、大きな熊のようなモンスターだった。

めちゃくちゃ威嚇してきているのだが、先程のスートの言葉通りにエルンと比較して良く観察すると、確かにゴブリン達よりは強そうだが、大した脅威を感じなかった。

なので、俺はカリバーンを握り身体強化で熊に突っ込む。


俺のスピードに反応出来てる気配はないので、そのまま剣を振ると大きな熊は見事に一刀両断された。

町から離れるほどモンスターは狂暴になるようだが、この辺では相手にもならないようだ。

それなりに稼ぎを期待してたので、少しガッカリしていたが、素材はもらえるので納得する事にした。


すると、今度は体長が2メートルくらいのトカゲのモンスターと先程の熊とハリネズミが集団で迫ってきた。

あの中に突っ込んでもシナイルードンやフリスネイドもあるので戦えるだろうが、わざわざ危険を侵す必要はないので、ルサフルと魔法で対処する。

スートも槍の二刀流スタイルと技で対処するようだ。


さっきの事もあるので、魔法は全属性用意しながら強化はせずに、レイワロンに通すだけにしていた。

ルサフルの魔力矢もあるので、こっちに近付けるやつは1匹もいなかった。

スートの方も適度に手加減しているようで、イメージを強くしたり、細かく操ったりと最早戦闘ではなく、訓練に移行しているみたいだった。

その余裕に俺も笑いそうになりつつ、戦闘を終わらせた。


最初の戦闘と違い、今度はきちんと素材を回収出来るだけの姿形を残した。

そうして出来たモンスターの山を次々とゲートに放り込んでいく。

今気がついたが、俺たちが狩り終えたモンスター達の他にも見たことのないモンスター達も増えていた。

おそらく、エルンが狩っているやつだろう。


しかも送られたモンスター達が少しずつ素材と魔法石に変わっていってる。

素材の質が良いので、おそらくマドルが捌いてくれたんだろう。

帰ったら感謝しようと思っていると、偵察機械の1機が明らかに他とは比べ物にならない程の圧力を放つ生物を見つけた。


俺はスートにそれを伝え、目的地へと向かう。

そこまで距離は無かったので、すぐに未確認生物の元へと着くと、こちらをかなり警戒していた。

しかし、こちらをすぐに襲ってくる訳ではなく、何となく助けを求めている気がした。

スートもどことなく悲しそうにしていたので、改めて観察すると、俺は驚愕した。


スートや金クラスのメンバーは暴走の原因である黒い異物に干渉されていただけだったが、人とモンスターの中間のような未確認生物は、人であった意識がモンスターになりたくなくて、黒い異物に乗っ取られるのを無理やり抑えてるようだった。


俺が近付こうとすると、黒い異物の抑えきれない部分が攻撃を仕掛けてきた。

俺は攻撃を避けて、改めて攻撃されない所まで下がった。

おそらく、このまま人としての意識が消えると、モンスターとなってしまうのだろう。

しかも、それも時間の問題なので、俺はスートや金クラスのメンバーを救った時とは逆で、今にも消えそうな人としての意識を取り出すことにする。


ただ、これはおそらくカリバーンに魔力を渡して身体を作ってもらった時と同じになるだろうから、生半可な魔力では駄目だろう。

俺は今持っているありったけの魔力を使いながら、相手の魔力に同調させ、未確認生物の中から人としての意識だけを抜き取る。


すると、今までは人とモンスターの間みたいだった未確認生物は完全にモンスターとなった。

見た目は完全にドラゴンでめちゃくちゃ強そうだ。

エルンと比較しても遜色ないくらいの実力はありそうだ。

ここで戦闘になったらかなり辛いなと思っていると、俺が引き抜いた人としての意識が身体を構成し始めた。


身体を作り出した意識は小さな女の子の姿に変わり、地面に着きそうな長い黒髪に、モンスターのドラゴンと同じ目をしていた。

ただ目の前のモンスターと違い、全てを否定するような冷たさは感じられず、とても優しい目をしていた。

ただ、小さな身体にはかなりの魔力と生命力を秘めていた。


彼女はドラゴンと向き合い、互いに牽制し合っているようだったが、曲がりなりにも俺の魔力で身体を作っていたので、きっと戦えない事もないだろう。

戦うなら俺も協力するしな。

そう思っていると、ドラゴンはこちらを一瞥してどこかへと飛び去ってしまった。

攻撃しようかとも思ったが、スートは既に戦闘できる状態ではなく、あのドラゴンの人だった時の意識である少女も立っているのがやっとのようだった。


俺がまずスートを緊張状態から解放させて、いつもの調子に戻させる。

少女が敵対してくるとは思えないが、もしそうなってしまったその時に戦えない状態では困るため、少女も心配ではあったが、スートを優先させた。


「スート、もうドラゴンは行ったから安心しろ。」


《そっか、あのドラゴンから出た女の子は?》


「まだ敵か味方か判断できないから、先にスートを立ち直らせようと思ってこっちにきた。」


《あの子はきっと私と同じ思いをしてきたと思う、ここに1人でいることを考えるともっと酷いかもしれない、だからなるべく気にしてあげて。》


「わかった、何かあったらよろしくな。」


スートは俺の言葉に頷くと、俺は少女の元に歩いていく。

少女は俺が人だからか警戒しているが、俺が魔力をあげたこともわかっているようで、複雑そうな顔をしている。

そのまま攻撃されても困るので、俺はある程度距離を開けながら会話することにした。


「やあ、俺はリョウ=テンジンっていうんだ、君の他にも俺は亜人族を見たことあるから、そう警戒しなくて構わないよ。」


《助けてくれたのは嬉しかったけど、あなたを信用できるはまた別なの。》


「そっか、それならまあ仕方ないんだけど、このままいつまでもここにいる訳にはいかないから移動しようか。」


《この際仕方ない、ついてい、、く、、ッ!》


そういって胸を抑えながら膝を着く少女。

俺は慌てて駆け寄り何か異常がないか探す。

すると、彼女の意識が弱まり過ぎて身体を維持できないみたいだった。

だが、これはどう対処していいのかわからない。

俺が途方にくれていると、俺の身体のドペルのオーブが俺にアピールしてくる。

言葉を話している訳ではないのだが、不思議と考えている事が伝わってくる。


彼女に俺を移せと。


どっちにしろこのままでいれば、この少女が死んでしまうだろう。

俺はドペルに全てを託すことにした。

頼むから、身体を乗っ取ったりするなよ!

俺はそんな思いをドペルに込め、少女にドペルのオーブを送り込む。

少女の身体に入っていったドペルは弱まった少女の意識と合わさり、自らのエネルギーを少女に分け、1つになった。


苦しさが消えたことに気付いたのか少女は、自分の身体を触り、異常が無いことを確認すると俺に再び感謝をしてきた。


《あなたがあたしを救ってくれたんだね、あたしはソルン=ツムキ、さっきは警戒して冷たい態度でごめん、あたしも自分の意識が離れるのを留めるのに必死だったの、けどあたしに力をくれたドペルさんかな?、があなたがどんな人なのかを教えてくれた、だからあたしはあなたに着いていきたい。》


「そんなに持ち上げられる程の人間ではないんだが、無事でなによりだ、それより着いてくるのは構わないが、今でも俺は相手できる人数がギリギリだから、あまり相手をしてあげられないかもしれないがいいか?」


《それなら安心して!、あたし変身できるから!、フォーム!》


そう言って魔法を唱えたソルンは全身を輝かせて小さなドラゴンになった。

ただ、さっきのドラゴンと違い、かなりの小型で俺の肩に乗れる程度の大きさになった。

それよりも魔法を俺と同じ魔法名だけで唱えた事に驚いた。

しかも、フォームは聞いたことのない魔法だった。

まあ、ドペルは俺の分身のようなものだし、魔力も元は俺の物だから、似たような事が出来てもおかしくはないが、それでも驚くのは仕方ないだろう。


「おお、ドラゴンになれるのか!、しかもさっきの魔法詠唱なしだったな、凄いな!」


《さっきドペルから教えてもらったの!、だから出来るようになったし、あたしの暴走した姿はドラゴンで1回乗っ取られかけたから、弱くはなるけど変身できるようになった!》


「なるほどな!、そういえばドペルはどうなったんだ?、ソルンと一体化したみたいだったんだけど。」


《ドペルはあたしのもう1人の意識としているよ、出て来てもらう?》


「ああ、話ができるならしてみたい。」


そう言うと、ソルンはもう一度フォームを使って、今度はドペルの姿になった。

そして話始めた。


『やあ!、俺はドペルだぜ!、リョウ久しぶりだな!』


「いや!、そんなフランクに来たらビビるわ!、だけどそうやって話せるようになってくれて嬉しいよ!、これからはソルンといるんだろ?、よろしくな!」


『ああ、任せとけ!、リョウから生まれた俺だからな、今までの経験は全部持ってる!、まだまだソルンじゃ使えないのもあるが、しっかり支えていくぜ!、そんじゃそろそろ変わる!、1回しかリョウとは訓練できなかったけど、ただの魔力分身だった俺に優しくしてくれて嬉しかったよ!、ありがとな!』


そう言ってフォームでソルンへと戻った。


《こんな感じだから、ドペルはあたしの相棒!、あたしも強くなるからよろしくね!》


「ああ、ドペルを頼んだ!、それとあっちにいるスートも亜人族だから仲良くしてくれ。」


そうしてスートを紹介すると、ソルンはダッシュでスートの元へ走っていった。

同じ亜人族だけあってすぐに意気投合したみたいで楽しそうにしていた。

さて、ソルンもきっと俺の部屋に来るんだろうから、リンクイヤーを用意して他のメンバーにも話しておかないとな。


俺はそう考え、リンクイヤーを作ろうとした所で、ドラゴンのいた場所を何気なく見ると、1枚の鱗が落ちていた。

だが、この素材はソルンのドラゴン形態の鱗と同じ材質だったので、これをギルドに渡たしたら、ソルンが暮らし辛くなってしまうだろう。

だから俺はこの鱗をゲートにしまいこんで、いつか使う日が来るまで置いておくことにした。


鱗を回収したあと、早速リンクイヤーを作り効果を説明して、ソルンが着けたのを確認した所で全員に呼び掛ける。

全員が応答したのを確認して俺は状況を説明する。


[みんな突然済まない、今回スートとギルドの依頼をしてたんだが、暴走寸前の亜人族の女の子を救って俺の部屋に呼ぶことになった、あとで顔合わせすると思うがよろしく頼む!]


そして、ソルンの自己紹介が終わって俺たちは町に戻ることにした。

しかし、あの逃げたドラゴンは一体どこにいるんだろう?

いつか相手をしなければならない瞬間があるだろう。

その時の為に、今よりも実力を磨いていこうと決めた。


この日ドラゴンの王、竜帝エペンドラが誕生した。

そして、これがやがて起こる大戦の引き金になったことをこの時の俺はまだ知らなかった。



次回更新は5/23です。


これからも、評価、レビュー、感想、ブックマークお待ちしていまーす!


「憧れの異世界で」を末永くよろしくお願いします!

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