22.魔法は自由
リョウ視点です。
体育館に着くと、金クラスのメンバー達が訓練していた。
その中には、金クラス所属のハーレムメンバー達をはじめ、シンやアジル、カリバーンもいた。
わりと主要なメンバー達も揃っていたのは都合がよかった。
遠目から見ていたドーマ先生も驚きを隠せないようだ。
{これホントにみんな金クラスのメンバーなのかい?、何か前に見た時と明らかに雰囲気とか違うんだが、それに青髪の彼はリョウと同じで凄まじい魔力だね、他のメンバーもあまり見たことないくらい魔力の質がいいね、それでもやっぱりまだリョウ程自由に扱えているわけではないね。}
「まだ魔力の扱い方を教えたばかりですからね、ただ元から魔法を使えるのと、俺の戦い方も見ているので、コツを掴むことが出来れば案外早く俺よりも魔力を上手く扱えるようになるかもしれませんよ。」
やはりドーマ先生から見てもうちのメンバーの魔力は優れてるみたいだ。
まあ、魔力を俺と同じように扱えないのは今のところ仕方ないと思ってる。
まだ、魔力の扱いを少し教えただけだし、俺はスキルも手に入っていて、基礎を教わらない状態で自由にできたから、短い間でも何とかなっただけだからな。
それでも、昨日と比べたら格段に魔力を上手く扱えるようになっているから、このままいけば俺のように使えるようになるのも、そう遠くはないだろう。
さて、ドーマ先生はもう少し観察していくそうなので、俺はせっかくの自由日なのにあまりルイに構ってあげられていないと思ったので、少し離れたとこで2人で訓練する事にした。
しかし、訓練は基本的に自分の可能性を見つけたり、伸ばしていくものだからあまり他人とやっても効率が良いとはいえないのでどうしようかと思っていた。
無論、模擬戦をやるなら話は変わってくるのだが。
「ルイ、今日はせっかくの自由日なのに、結局あまり楽しませられなくて済まなかった。」
《全然そんなことないよー!、リョウと一緒にいられて楽しかったし、今も私のために時間作ってくれたから嬉しいよー!、私の気持ちも受け止めてくれたし!、それでもリョウが満足いかないなら、次の自由日にもっと楽しませてねー!!》
そういって笑顔になるルイはとても魅力的だった。
そんなやり取りを終えて、俺とルイはそれぞれ訓練を始める。
俺は作った武器を慣らすために素振りや足運びなどを意識して訓練する。
トライゴルク、アノスブレイル、ブラーク&カリバーン、フリスネイプと物理攻撃系の武器を1つずつ試していく。
どれも武器と俺の間の繋がりが深まったからか、以前よりも遥かに扱いやすく、俺専用の装備になってきたし、武器の声ではないがどんな風に扱えば上手く使えるのかも少しずつわかるようになってきた。
途中で武器を持ち替えたりしながら、動き方を変えたり、他の武器の動きを応用したりしながら戦闘のシュミレーションをしていく。
今のところの最強の相手はエルンだ。
あの時は魔法を上手く使って勝てたが、いずれは武器だけでも勝てるようになっていきたい。
俺は仮想エルンに向けて、イメージトレーニングを進めていく。
ただ、やはり魔法がないとどう頑張っても勝てるイメージがわかない。
そうして、色んな動きや武器の使い方を試したり、攻めたり守ったり反撃に力を入れたりと色んな事を試していった。
少しはイメージのエルンと打ち合えるようになったのだが、それでもすぐに組伏せられてしまう。
とりあえず、今日は物理系の武器はここまでにして、次はルサフルを使う。
身体強化を使い、全速力で動きながら壁の一定範囲だけを狙い打ちする。
始めは動きながらだと、一定範囲からどんどん矢が外れてしまい、実際の戦いではまったく使い物にならないレベルだった。
しかし、しばらく続けているとようやくまともに当たるようになり始めた。
更に続けていくと、動かない的には問題なく当てられるようになった。
その後は、1回に射つ矢の本数を増やしたり、それぞれの属性を変えたりしながら放っていた。
ようやくルサフルの扱いにも慣れてきて、今では5本同時発射できるようになったので、これで戦闘の時でも弓でサポートできるだろう。
最後はレイワロンだな。
レイワロンを通して魔法を使ってみると、いつもの魔法の2倍くらいの威力と範囲に届くようになった。
しかも、今でもある程度自由に魔法は操れるが、レイワロンを持った状態なら、魔法の届く範囲なら自分の思い通りに魔法を操れる事がわかった。
そして、試しに魔力をそのまま周りに配置して、それを魔法に変化させたりしてみると、普通に発動させられたので、奇襲とかに使えるなと思いながらレイワロンの便利さがわかった。
全ての武器の訓練が出来たので、あとは模擬戦やモンスター狩りに行って、実戦経験を積んでいけば更に使いやすくなっていくだろう。
そして、ふと考えてみた。
魔法はどんな装備の時も俺は使っていくはずだ。
そしたら、レイワロンを常に装備したままにして、別の武器を使うことは出来るのか試してみる事にした。
レイワロンを背に装備したまま、トライゴルクを呼び出す。
その状態でレイワロンを通して魔力や魔法を放出させると、さっきまでと同じように使うことが出来た。
そして、トライゴルクの使い勝手も変わらない。
他の武器も同じように試してみたが、結果は同じだった。
これはちょっと感動した。
レイワロンのおかげで俺の魔法を使った戦闘は更に強化され、その他の武器の扱いも上手くなった。
エルン相手のイメージトレーニングをしてみたが、以前戦ったときよりも遥かに戦い易かった。
ただ、あくまでもイメージではあるし、実際は戦ったときよりも強くなっているだろうから、そう簡単に勝つことは出来ないだろうが、少なくても昨日より俺が強くなった事は間違いない。
こうやって明確な成長を感じるとやる気も出てくるし、自分の可能性も信じていけるから嬉しい。
一通り試し終わると頭に無機質な声が聞こえてきた。
【スキル(分析)を手に入れました。】
早速スキルの確認をするため、ステータスを開く。
ステータス
天神 凌 (てんじん りょう)
HP19000/19000
MP32000/34000
装備 (エジマリフ魔導学園制服) (靴) (カリバーン) (レイワロン) (リフールリング) (ブラッドリング) (マジックキープリング) (リンクイヤー)
スキル (並列思考) (浄化) (登り降り) (拳技) (精神耐性) (異世界言語理解) (意識共有) (魔力創造) (グロウサポート) (ウエポニック)
(分析)
スキル(分析):魔法や技を解析し、持っている知識、経験から高精度な推測を可能にする。
漠然とし過ぎてわからないが、多くの情報や経験を持っていれば、さっきのイメージトレーニングのようなものも、より実戦に近い形にできるということか?
まあ、これもそのうちに使い道も分かってくるだろう。
ちょうど一息つこうとしたところで、ドーマ先生が近づいてきた。
{うん、リョウのクラスを気に入ったよ!、僕の研究も進むだろうし、彼らは伸び代もありそうだから、今の内から研究に協力してもらって成長過程も見ていきたいからね!、もちろん僕が1番興味があるのはリョウだけどね!}
「それはよかったです!、ただ少しだけ問題がありまして、次の武術大会の予選をトップで通過するつもりなんですが、俺たちは学園での評価が良くないので、言いがかりをつけられる可能性があるので、出来ればその時に力になってほしいです。」
{なんだ、そんな事か!、全然構わないよ!、それで研究が進むなら安いもんさ、いやーしかし、リョウといると面白そうだね!、どうせ授業を受けられるような生徒は君たちくらいしかいないから、研究に必要な機材とかも持ってくることにするよ!}
「お互いにギブアンドテイクで行きましょう!、そしたら俺は機材を守るための道具を作らせてもらいますね、今いりますか?」
{いや、機材を持ってきてデータを取りたいから、それからでもいいかい?}
「わかりました!、それじゃここで待ってますね!」
会話が終わると、スキップしながら体育館を後にするドーマ先生。
よほど嬉しかったのだろうなと思いながら、俺はルイの訓練の様子を見る。
俺の作った拳甲をはめて、おそらくこの世界オリジナルの武術と思われる型の訓練をしていた。
見ると、体内に生命力と魔力を混ぜながら循環させていて、以前よりも動きが良くなっている。
型の訓練をしながら魔法も詠唱するという訓練もしていた。
何となく俺の戦い方を真似ている印象があり、よく見ているなとちょっと照れる気持ちを抑えながら訓練の続きを見る。
さすがに待機魔法は無理なようだが、獣人族で魔法が使えて、あれだけの動きが出来るのは脅威になるだろう。
そして、いよいよ技の練習をするみたいだ。
目を閉じて、生命力を1度安定させてから、それを一気に集め圧縮して、イメージを作っていく。
あれは今までルイが使っていたフィニッシュナックルではない。
フィニッシュナックルよりももっとイメージが強く、負けないという思いの中にも相手の技にも柔軟に対処するという意志も含んでいる。
何か愛情とかも混ざってるのは気のせいだろうか。
するとルイは、俺の方に向いてきた。
俺を嫌な予感と冷や汗が襲う。
対するルイは物凄い良い笑顔をしている。
《女の子をじっと見つめてた罰だー!、タレイガー!》
ライオンと虎を合わせたような動物型の技が俺に向かって放たれる。
さて、技に技をぶつけて打ち勝つのが最も楽な方法だが、他にも対処法を考えてみようかと思う。
生命力は魔力よりも強く、生命力で具現化されたイメージは時には魔法よりも破壊力がある。
俺はミサ先生の授業を思い出した。
{魔法は本来自由なものです、だからこそ皆さんは柔軟なイメージを持って魔法に取り組んでください。}
そうだ、魔法は自由なんだよ!
誰が技に魔法は勝てないって決めた!
魔力が生命力に劣っているなら、その分多く魔力を使えばいい!
魔法も技もイメージが全てだ!
ルイのイメージを超えれば魔法でも勝てる!
俺は新しく手に入れた(分析)でルイの技を解析し、(魔力創造)であの技に勝てる魔法を作る。
魔力を圧縮して、無属性の魔法を作り出す。
込めるイメージはエネルギーの拡散。
こういった攻撃とか支援に分類しない特殊な魔法こそが無属性の強みだ。
技だろうが、魔法だろうが、結局の所はそれぞれを媒介にしたエネルギーの塊だ。
それを拡散させて、霧散させれば打ち消せる。
それに向いている属性は無属性だ。
これも魔力の可能性になるかな。
そんな事を考え、俺は魔法を発動させる。
「アトミゼーション!」
白の光を集めた魔法を剣に変えて、レイワロンの効果でルイの技を標的として放つ。
アトミゼーションとタレイガーがぶつかり、相殺される。
よし、魔法でも技に勝てるんだ!
これなら、俺は戦闘をかなり有利に進められるかもしれないな。
俺が喜んでいると、ルイがこちらへ駆け寄ってきた。
またいつものパターンかと思いながら、俺はルイに詰め寄られると優しく受け止めた。
突然の事にあたふたするルイを見てかわいいと思ったのは仕方ないだろう。
《さっきの魔法だよねー!、技は止められるとは思ったけど、魔法で相殺されるとは思わなかったよー!》
「俺もちょっと挑戦してみようと思ったからな、それとルイ、朝から言ってるがやるなら前もって言ってくれ!、心臓に悪い。」
《リョウが私の事をジーーーーーーっと見てるからいけないんだよー!、私だってあんなにジーーーーーーっと見られたら恥ずかしいんだよー!、だから照れ隠ししてもいいじゃんか!》
「お、おう、何か済まない、というかジーーーーーーっとって強調しすぎだろ!、そんなに見てない、、、はずだ」
《なんで視線を外したの?、自覚あるってことだよねー!》
ポコポコと叩いてくるルイ。
そんなルイとじゃれ合う時間も楽しいし幸せだなと思い、自然と笑顔になった。
次回更新は5/19です。
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