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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第一章 ここ、異世界?
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4.エルフが見つけた人間

リナ視点です。

エルフ族特有の耳がゴブリンの叫び声を捉えた。


それほど距離も離れていないため、もし村に来て荒らされても困ると思い、私は声の方向へと急いで近づいていった。


森は私の故郷であり、エルフ族が得意な地形でもあるため、森で鍛えた身体能力と、エルフ族のスキルにより、素早く木に登っていき、枝をつたって木に飛び移って行く。


初めの頃はこの高さに恐怖し、身体能力が足らず、木の上を自由自在に動くことは出来なかったが、今では慣れたもので何の恐怖もない。


もし落ちたとしても、風の魔法で衝撃を和らげることも出来るし、風を起こして飛ぶのを補助もできるため、問題はないのだ。

MPの無駄遣いになるから出来る限りの使わないでいるけどね。


そうやって木々を移り、ゴブリンを見つけると、近くに見たことのない格好をした人間を見つけた。


私達の村にも人間が来ることがある。

村を森を抜けるための中継地点にするかわりに商品をもらったり、商品の売買をしたりする。

その一方で私たちを捕まえて売りさばこうとする人間もいる。


そういうやつらは襲ってきたら返り討ちにするし、森にいる間なら捕まえた子を解放しにいったりもする。

森から出てしまった人間を殺してしまうと、色々と面倒な問題が起こってしまうため、逃がさないようにするしかないのが悔しいところだ。


少し思考がそれたが、あの人間はいったいどっちなのだろう。

見たところ、武器も持っておらず、まるで気づいたらいきなり森に放り出されたかのような格好をしている。


そんなバカなと思いながら、考えをまとめようとしていると、再びゴブリンが叫び声をあげて、人間に突っ込んでいった。

しかし、人間は気づいているようだが、動く気配はない。

見たところ、戦闘慣れした様子はなく、なんとなくだが、初陣に似た緊張感とぎこちなさがある。


それを無理やり押し込んで戦闘をしようとしている。

ゴブリンは剣を持っているが、切れ味は無いに等しく、切られて死ぬことはないだろうと思った。

もしかしたら強くなるために、わざわざ何も持たずに森に入ったのかもしれない。


目の前で死なれるのは困るため、いつでも助けられる準備を整えて、戦況を見守っていた。


やはり人間の彼は初めての戦闘なのだろう。

私からしたら脅威にもならないゴブリンの攻撃を大袈裟に避け、反撃も出来ないでいた。

相手が来るのを待っていたのに対応が悪いのを見て、本当に助けが必要かもしれないと思い、弓に手を掛ける。


しかし、戦いが進むうちに彼の動きは洗練されてゆく。

どれだけ一つの動きをするのに考えているのか、スキルを手に入れた時とは違っているが、動きが変わってゆく。

ゴブリンの攻撃を避けた彼はゴブリンの顔面を殴り吹っ飛ばした。


私は彼を見て、ゴブリンをあそこまでしか飛ばせない時点で身体能力が高くないのがわかった。

なぜあの実力でこの森に入ってきたのだろうか?

準備をしての武者修行や、仲間ときてはぐれたならまだわかる。

それでもこの森の生物はそんなに強くないし、彼の実力で来れるとこでもないのだけど。


起き上がったゴブリンを見て、やはり身体能力が足りていないため、ダメージが少ないなと思った。

まあ、時間を掛ければ倒せなくはないだろうし、みた限り戦闘中に成長できるみたいだから、大丈夫だろうと思い、見回りに戻ろうと考えたとこで、ゴブリンが彼に向かっていった。


また吹き飛ばすのかと思っていたが、彼は先程よりも良くなった動きでゴブリンの攻撃を避けて、ゴブリンの顎をかちあげ、腹に蹴りをいれ、動きが悪くなったところで、ゴブリンの肘の骨を折り、剣を奪った。


もう少し苦労すると思っていた私は、彼の成長スピードに驚いた。

あの身体能力でゴブリンと戦うなら力押しではなく、策を考えなければならない。

初戦闘なら尚更経験が当てにならず、頭の回転と勇気が必要になる。


ゴブリンと言えど、敵意を向けてくる生物に変わりはない。

心が弱かったり、足がすくんだりすればあっという間に気おされて動けなくなってしまう。


そんな中で彼は、僅か数回の攻撃のやり取りで、凄まじい速度で経験を積んでいる。

そしてそれの生かし方がかなり上手い。


そうしてゴブリンから奪った剣で勝負を決めた。

剣の扱いは素人同然もいいところだったが、ダメージを受けて弱ってきていたゴブリンを相手にするのは十分だった。


そうしてゴブリンを倒した彼は、おそらく初戦闘の緊張感がなくなり、今更ながらだが恐怖や初めて生き物を殺す嫌悪感などに襲われているようだった。

声をかけようと思ったが、今声をかければ戦闘が終わった疲労感や、達成感、優越感などがあった場合、正常な判断が出来ない可能性がある。


そう考えていると、彼は川のある方へ歩き出した。

未だに彼の素性がわからない以上、このまま放置しておくわけにはいかない。

今の彼なら私が戦闘すれば、確実に瞬殺できるだろう。


ただ、無駄に殺す必要もないため、まずは対話してみようと思い、彼の後を追った。

川につくと、彼は水を飲み、石に腰かけると一気に疲れがおそってきたのか、何か声を発していた。


しかし、内容は聞き取れなかった。

不思議に思い、素性がわからないことや、先程の戦闘での成長スピードから、警戒心を高めて彼へと近づく。


彼は空を眺めて、突然困りだしたように見えたが理由はわからなかったため、そのまま気にせず声をかけることにした。


《ここでなにしてるの?》


私の声に振り向いた彼と目があった。

なんとなくそらしたら負けだと思い、視線を外さずに、しかし警戒を解かずにいると、彼は武器を地面へと置き、両手を上げた。

敵意がないことがわかり、警戒を緩めたが、彼が何者なのかもわからないし、質問の答えも返されていないため、返答を待った。


「ーーーーーッ」


何か返答をくれたようなのだが、言葉がわからなかった。

聞いたこともない言葉だったからだ。

首を傾げて、どうしようか考え、これで伝わらなかったら、一度離れて彼を監視して、害をなすようなら殺そうと思い、


《君はここでなにしてるの?どこから来たの?》


と、ダメ元で聞いてみた。


すると、


「俺は天神 凌といいます。気がついたらこの森にいて、生き残るために辺りを調べていました。自分でもまだわからないことだらけですし、信じてもらえるかはわかりませんが、おそらく別の世界から来ました。」


先程まで聞いたこともない言葉だったのに、今度はちゃんとした言葉で聞こえた。

その事に驚いたが、これで会話ができると思い、彼の言っていたことを整理した。


気がついたらこの森にいたというのは、にわかに信じがたかったが、先程の戦闘や格好、また別の世界から来たというのを考えれば、間違っていないように思える。

少なくても彼が嘘をついているようには見えない。

それに彼もまだ現状を把握できていないようで、不安や途方にくれることもあるだろう。


私は何となく彼に興味がある。

あの戦闘もそうだが、別の世界から来たということは私の知らない知識もあると思う。

彼のことをもっと知りたいと思うし、困っているなら助けてあげたいと思う。

お人好しとか良く言われるけど、これが普通だと私は思う。


悪い人じゃないなら友好を広げるのは良いことだ。

そう思い私は彼に、


《私は、リナ=エルフィン、リナって呼んで。あなたのことはリョウと呼ばせてもらうね。まだ全てを信じた訳ではないけど、とりあえずの状況はわかったわ。もしよかったら私の村に来ない?寝るとことか無くて困っているでしょ?その代わりあなたの事を教えて?》


と提案した。





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