16.新メンバーと寝床争奪戦
リナ視点とデミアン視点です。
リナ視点は2回あります。
リョウが体育館から飛び出して行った時、私と召還された二人を除く全員がリョウを追おうとしたが、あまりの速さに追いかけるのを諦めていた。
私は女子会の代表として、新しく仲間になったマドルとエルンに女子会で決まったルールを説明していた。
マドルは魔力をもらえるので、自由日はいらないらしく、エルンは空いている日曜に自由日を使う事になった。
そして、二人を連れて他のメンバーと改めて自己紹介をしてもらった。
金クラスの人からは、リョウに対する尊敬の眼差しが増えていた。
それもそうだろう。
この二人から感じる強さが尋常じゃない。
家事をメインにこなすマドルはさすがにデミアンよりも強さを感じる事はないが、それでも今の私達女子会メンバーが戦える強さではない。
エルンに関してはデミアンとは比較もできない。
デミアンとは違い、エルンは戦闘に特化しているため、純粋な強さでエルンが圧倒的に上回っているからだ。
そんな二人をサラッと呼んでしまう辺りでリョウも十分規格外なのだけれど。
色々とリョウの事を共有し、その強さとデタラメさを理解している女子会メンバーですら召還を見ていた時は、空いた口が塞がらなかった。
そんなマドルとエルンだが、これから学園で生活していくうえでエルンには大きな問題がある。
それは背中に生えている大きな羽だ。
それが彼女の格を上げていて、まるで女神のように見えるのだけれど、そんな存在はデミアンと同じようにお伽噺でしか出てこない。
デミアンはかろうじて魔族で通せるし、マドルも人族で通せるが、エルンだけはこの羽を何とかしないと生活が困難になる。
私はエルンに翼の事を聞いてみる。
《えっと、エルン?、その翼って普通の人には見えないようにしたりも出来るの?》
『ああこれか、そういえばこちらの世界で翼の生えているのは竜族とモンスターくらいなものか、安心しろ、見えなくさせるのは簡単にできる。』
そういって、エルンが目を瞑ると白い羽が見えなくなった。
そしてこちらへ笑顔を向けるエルンはどこからどう見ても人族だった。
何でもありなんだなと思っていると、デミアンがこちらへやってきた。
エルンとデミアンの二人とも複雑そうな顔をしてるのは気のせいだろうか。
『リナさん、少しエルンさんと話をしたいのですがよろしいですか?』
《私は構いませんよ、エルンは?》
『私も問題ない。』
『ありがとうございます、ではエルンさん少しこちらへ来て下さい。』
そうしてデミアンは、エルンを連れて体育館のはずれに行った。
彼らが戻ってくるまで、私も訓練していることにした。
∨∨∨
『こんな所まで来て話しとはなんだ?、悪魔族の王属特殊部隊の隊長さん?』
『全てお見通しでしたか、天使族の王立軍総隊長、お話とは他でもないわたしたちの関係の話です、お互い直接的に戦った事はありませんが、対立関係にありましたからね、しかし、今は同じマスターの元に召還された者同士です、私が求めるのは和解、それが無理でも一時休戦です。』
『なるほどな、こちらの情報も伝わっているわけか、さすがだな、デミアン貴様に問いたい、もし自らの王がこちらに来た場合どうする?』
『わたしは、マスターであるリョウに味方します、確かに王にはお世話にもなりましたが、それは駒として最低限です、しかし、マスターはわたしの希望に応えてくれ、わたしを部下ではなく対等な存在はとして扱ってくれます、ですからわたしの中の王は今ではマスターです。』
『ほう、それほどまでにリョウを気に入っているのか、話しはわかった、ただ和解するためにはもう少しデミアンとリョウの双方を見極めなければならない、それで私が納得できたなら和解等ではなく、同盟を組んでやろう!』
『ありがとうございます、それでは信頼を勝ち取れるよう精進致しますので、これからもよろしくお願いします。』
『ああ、私の期待を裏切るなよ、こちらもよろしく頼む!』
そういってリナの元へ戻っていくエルンを見て、デミアンはホッとしていた。
自分の役職を正確に知っているとは思わなかったのもあるが、まさかマスターが天使族の総隊長を呼び出すとは思わなかったので、これからのために交渉したのだが上手くいったのが一番だ。
それにしても、いつの間にか王への忠誠心よりも、マスターへの忠誠心の方が大きくなっていた事に今さらだが驚いた。
悪魔族の王は、その称号通り絶対的な力と情無き心を持っていた。
味方は駒として扱い、死んでも構わないというような無茶を平気でさせる。
駒を維持するため訓練等をしてくれる事もあるが、それは一方的なもので、この攻撃で死ぬような奴はいらないというようなスタンスだ。
だが、そんな王でも強くしてくれたこと、特殊部隊の隊長という称号を授けてくれた恩はあった。
それに情がなかったとしても。
そんな時、わたしはマスターに呼び掛けられた。
拙い魔力量に話を聞く価値もないと思っていたが、諜報要員を欲しがっているのに、召還魔法で呼び出そうとするものなのに、マスターに駒のように扱うという考えは感じなかった。
それに興味を持ち、よく魔力を吸いとってみると今まで取り込んだ事の無いほど極上の魔力であり、気高く輝く魂を持っていた。
わたしだって召還の呼び掛けを受けたのは一度や二度ではないし、数多くの魔力を取り込んできたし、数多くの魂も見てきた。
その中でもマスターは全てがトップクラスであった。
だからこそ、どんな人物か気になり召還に応じた。
出会ったマスターは想像以上の人物であり、わたしにオリジナルの装備までくれた。
そんなマスターに知らないうちに惹かれていたようで、いつの間にかマスターが王でも構わないと思えた。
これからもわたしはマスターに着いていく。
マスターにどんな障壁が立ちはだかろうとも、わたしは立ち向かう。
だが、それだけの事をするためにはまだ力が足らない。
エルンも味方に率いれなければならないとなると、益々力が必要だ。
わたしは久しくやっていなかった訓練を始める。
ただ、マスターの助けになれるようにと願って。
∨∨∨
戻ってきたエルンを見て、私は不思議に思い聞いてみた。
《エルンどうしたの?、何かすごく機嫌が良さそうだけど。》
『なーに、マスターが想像以上に面白そうな男だとわかったからな、これからが楽しみなんだよ!』
デミアンとどんな話をしたのかはわからないが、リョウの評価が上がるのは嬉しい。
本人は褒められると照れはするけど、そこまで評価を気にしない。
むしろ、貶められようが罵られようが関係ないといった感じだ。
その代わり、仲間の誰かが馬鹿にされたり、舐められると豹変する。
庇われる人達は確かに自分の事を大事にしてくれているのがわかって嬉しいけど、同じくらいリョウの事も大切だ。
それをもう少しわかってほしいと思う。
まあ、そんなリョウも好きなんだけどね。
そろそろいい時間になり、他の女子会メンバーも訓練を終えていたので私も切り上げて、部屋へと戻る。
みんないつの間にか引っ越し準備は終えていたようで、8人でそのまま部屋へと向かった。
部屋に着くと、リョウが既にベッドで寝ていた。
普段の何でもできるリョウしか見ていない、新しく部屋に来たメンバーは、リョウの無防備な姿に顔を綻ばせていた。
そして、私はある事実に気がついた。
この前までは3人でリョウを抱いて寝ていたが、今回は8人もいるため、ベッドは取り合いになる。
私が早速彼女たちにそれを伝えると、みんなの目の色が変わった。
全員が戦う目になったのだ。
しかし、マドルは機械人形なので睡眠を取らなくて良いらしい。
なので、マドルを抜いた8人でベッドでリョウと寝る権利を争う。
こういう時にやるのはもちろん、ジャンケンだ!
それをみんなに伝え、集中力が全員高まっていく。
まるで、強力なモンスターと戦う直前のようだった。
《最初はグー、ジャンケンぽい!》
絶対に負けられない戦いがここにはある。
そのため、みんなが一つの手に込める思いも半端ではない。
よって、初めはアイコだった。
《アイコでしょ!》
そうして次に出した手もアイコ。
結局、何回もこれを繰り返し、ジャンケンで勝敗が決まったのはそれからしばらくたってからだった。
リョウと寝られるメンバーは、私とサクラとエルンだった。
他のメンバーは悔しそうにしていたが、しぶしぶベッドを出して、それぞれのベッドで横になっていた。
きっとこれから毎晩、この戦いが続くのだろう。
そう思うと、何となく負けたくないという気持ちがわきあがり、今はリョウの側にいられる事に喜びを感じた。
だが、ここで一つ問題があった。
今までは、スートのような軽くて小柄な女の子だったからリョウの上に乗っかれた。
だが、私達3人は重くはないが、リョウの上に乗っかれるほど軽くもない。
その事実に気付き、もう一度ジャンケンで誰がリョウと寝るか勝負した。
今度は一発で決まり、私がリョウの左側、サクラがリョウの右側で寝ることになった。
なんだかんだでみんな疲れていたようで、すぐにあちこちから寝息が聞こえてきた。
マドルは、ドアの前に立ち周りの気配を探っているようだ。
けれど、マドルも仲間なのだから何かいい方法はないかと考え、私には思い付かなかったので、明日リョウに相談してみる事にした。
今日は色んな事があった。
朝から馬鹿みたいな連中に絡まれたのをリョウが追い返し、リョウが他クラスに宣戦布告し、金クラス内トーナメントという面白い行事に参加する事になり、リョウの事を慕うメンバーが5人も増えて、、、
すごく濃い1日でとても楽しかった。
こんな日々が続いていってほしいと思いながら、私は意識をなくした。
次回更新は5/13です。
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