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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第2章 エジマリフ魔導学園編
31/141

12.新たな可能性と2人の変人

リョウ視点です。

俺はしばらく使っていなかったクロックの魔法のアラームを使い、この前リナと訓練したくらいの時間に目を覚ます。

今日もリナは訓練に行っているようで、既にベッドからいなくなっていた。

俺もスートとルイを起こさないようにしながら、準備を整えて本校舎の訓練所へと向かう。


この時間ならわざわざ別校舎に行かなくても、見下してくるような学生はいないだろう。

部屋を出て体育館に着くと、リナは新しい弓の感覚を確かめているようだ。

昨日見た時よりも動きが良くなり、属性魔力矢も苦労せず使えているようだ。

しかも驚く事に全属性の魔力矢を作れている。


基本的に扱える属性は1~3個と無属性のはずなのだが、リナは全て使えている。

これが、リナの才能なのか、学園の教え方が悪いのか、はたまた俺の(グロウサポート)のおかげなのかはわからないが、何はともあれリナが強くなってくれるなら嬉しい限りだ。


リナの訓練が一段落したところで声をかける。


「おはようリナ、昨日見た時と比べると見違える程動きが良くなったね!」


《リョウおはよー!、リョウにもらった弓がすごくてそれのおかげでもあるよ!》


そういって嬉しそうに弓を持ちながら微笑んでくるリナはやっぱりかわいかった。

そんなリナを見て朝から元気になってきた俺だったが、浮かれ過ぎてリナに聞こうとしていた事を忘れるところだった。


「そういえば、リナって全属性使えたっけ?」


《ううん、今日この弓を使ってる時にリョウの7色の剣を思い出して、私にも出来るか試してみたらいつの間にか全属性の矢を作れたの!》


どうやら全属性使えるようになったのは俺の武器のおかげみたいだ。

ただ、俺のように複数の属性を合わせた魔力矢はまだ作れないようだ。

それでも、魔力矢を作りやすくなったらいいなと思ってマジックチェンジを込めたんだけど、まさか属性まで自由に出来るとは思わなかった。

その辺も考えながらこれから色々と作っていこう。


さて、聞ける事は聞けたし俺もここへ来た本来の目的を果たすことにしよう。

まずはカリバーンの装備だ。

カリバーンには、鉄剣を渡したあとは何も渡していなかった。

カリバーンは、リナに継ぐ古株であり元は俺の剣でもあるので、俺も同じようにカリバーンに俺の意志を込めた剣を作ってあげたいと思う。


俺は意識を集中させ魔力で剣を作り、生命力を流し具現化、そこに様々な魔力を込めていく。

魔法を強化するブーストマジック、身体能力を強化するブーストフィジカル、剣の鋭さを上げるシャープ、自動修理のリペア、共に戦う意志。

これらで作られた剣は俺の持っているカリバーンよりも少し大きくカリバーンの体格に合った物になっている。

7色に輝く刀身はとても美しく、見るものを惹き付け、それを支える持ち手はサファイアの宝石よりも更に鮮やかな青で、俺の魔力が込められた紋様がこの剣の品格を上げている。


俺が昨日初めて作ったブラークとは比べ物にならないほど強力な剣だった。

これで、俺の持つカリバーンと同等の力を持つこの剣をカリバーンに持たせる事ができる。

元はカリバーンも剣に宿っていた意識だったため、同等の剣を使えば実力を限界まで使えるだろう。


次はデミアンなのだが、彼の装備をどうしようか迷う。

騎士と言っていたのだから、盾を持った重戦士というのもありだとは思うのだが、俺の召還時のイメージは情報収集能力と単独行動をこなせるというものだった。

デミアンもこのイメージを強く反映した人物であるはずなので、重戦士装備はあまり適さないだろう。

とはいえ、忍者や盗賊のような装備もデミアン自身の品格があるため似合わないだろう。


そうして俺がイメージしたのは刀だった。

単独で強く、使用者の技量が高ければ知らぬ間に斬られているということも実現可能になり、デミアンはそれを出来るだけの能力もあるだろう。

本人に希望を聞いていなかったのが失敗ではある気がするが、一人だけ渡さないというのも裏切りの原因になってしまうだろう。

もし、別の物が良ければまた新しい物を作るだけだ。


俺は意識を集中させ魔力で刀を形成し、生命力を流して具現化、その後に様々な魔力を込める。

斬れ味を高めるキーン、狙われにくくなるハイド、魔力変化を行いやすくするマジックチェンジ、自動修理のリペア、最後にマスターとしてのこれからも共に歩く意志を込める。

こうして完成した刀は、刀身が真っ白で鞘も真っ白だった。

その代わり持ち手の部分は全てを呑み込むかのような漆黒の黒に俺の魔力が込められた金の紋様が刻まれていて、美しさと禍々しさが合わさり不思議な魅力を放つ刀になった。


昨日の夜は2本の武器で限界だったが、今朝はもう1本作れるだけの余裕があった。

魔力と生命力は使えば使うだけとまではいかないが、ほぼ似たような成長を見せるようなので、道具生成は重要な成長手段に成りうるため、出来る限りやっていこう。


俺の道具生成の一部始終を自分の訓練を中断してまで見ていたリナが俺に話しかけてきた。


《昨日も見たけど、それってすごい綺麗だしリョウの力が伝わってきて見るだけで頑張れる不思議な力だよねー!》


そういってうっとりとした笑顔を見せるリナ。

不意打ちで褒められたので照れてしまった俺だが、いつまでも訓練を中断させてるわけにはいかないので話題を変えることにした。


「褒めてくれてありがとねリナ、リナに聞きたいと思ってたんだけどルイの使った技とかはリナも使えるの?」


《私は技は使えないよ、一応学園で教わった知識として知ってる限りだと技を使うには使う武器のスキルを持っていること、その武器に命をかけていること、技の形や効果、強さ明確なイメージを持ちぶれさせないことが条件なんだって、でも私は武器に命をかけられていないからか技を使えないんだ。》


俺はリナの話を聞いて、俺が技を使えなかった理由がわかったと同時にリナが技を使えなかった理由もわかった。

というか、学園では教え方が大雑把すぎないか?

魔力に関しても技に関しても、こんな教え方をしたら一部の人物しか使うことができないだろう。

これは、一度本格的に授業を受けてみて先生達と話す必要がありそうだな。

だがそれはまあ後回しにして、とりあえず俺の仮説が合っているか試そう。

これが合っていれば俺もリナも技を使えるはずだ。


「リナは色々と知っていて凄いな!、ちょっと今から技を使えるか試してみる、これで技が使えればリナにも使えるように教えられるから少し見てて!」


《ほんと!?、しっかり見てるね!》


目をキラキラさせながら俺に熱い眼差しを向けるリナだが、自分で言っておいてなんなのだけどめちゃくちゃ緊張するし、何よりなんか恥ずかしい!

俺はとりあえず心を落ち着かせてカリバーンとブラークを構え集中する。

俺が技を使えなかった理由は明確なイメージ技に持っていなかったからだ。

技は(魔力創造)と似ている。

違うところは生命力を使って威力、効果、形を同時にイメージしなければならないことだ。

ということは、同じ技でもその時々で技の細かな所を変えながら発動させる事ができるある意味万能な物だろう。


これで、道具生成の仕組みも何となく理解できた。

魔力だけではただのイメージの塊しか出来ないのだが、ここに生命力が入ることでその道具の形、強さ、効果を持たせ具現化させられるのだろう。

逆に生命力だけではイメージがあってもそれを宿す物がないために具現化できないのだろう。

魔力という素材と生命力という素材を合わせる事で自らの望む物に限りなく近い物が出来るのだろう。


ただし、道具生成でもわかるように強力な物や効果を付けるならそれに応じて消費は増えていく。

技の場合はそれぞれの技に対応する装備を持っているため、それを道具生成の際の魔力と同様に扱い、生命力で残りイメージの全てを具現化させるのだろうから、あまりに強すぎる技は身を滅ぼすだろう。

そう考えるとレイさんの使った技はものすごい物だったので、彼の実力の高さを改めて実感した。


カリバーンとブラークへ生命力を送る。

イメージは飛ばす斬撃、形は刀身そのもの、威力は壁に深い跡を残すほど、効果はカリバーンに火をブラークに風を纏う。

生命力が安定しイメージを具現化させ始める。

ここで言葉を発してぶれないイメージとして確立させる。

イメージ出来るのなら技名は自由に決められる。


「フライブレード!」


カリバーンを振ると炎を纏った斬撃が、ブラークを振ると風を纏った斬撃が壁へ向かい飛んでいく。

壁に当たると、深い斬撃の跡と共に炎の熱で焦げ、遅れて届いた斬撃でXの跡となり、風の効果で無数の斬撃の跡が刻まれる。

生命力の消費量は剣という媒介がある分道具生成よりも生命力を使わないのかリフールリングの回復速度上昇であっという間に取り戻せるくらいだった。


使ってみた感想としては、技は魔法よりも強力で自由度がかなり高いが、多用し過ぎれば命の危険もある諸刃の剣だ。

ただ、(魔力創造)を使える俺としては手数と万能さでは魔法、強力な一撃や大技の相殺は技みたいな感じで使っていけばいいだろう。

というか、技はおそらく魔法を使えない獣人族が魔法に対抗するために考えられたものだろう。


だがなぜ獣人族は魔法が使えないのだろう。

ルイを見る限り魔力が全く無いわけではなかった。

おそらく身体強化くらいなら問題なく出来ると思う。

身体強化と魔法の発動は何が違うのだろう。

技を使えるのだからイメージを作れないという事はないだろう。

今度ルイに聞いてみよう。


さて、技の実験も終わったのでいよいよリナにも技の使い方を教えよう。

さっきから俺の技の発動を思い返しながら何やら四苦八苦しているみたいだからな。


「リナ、俺の技を見て参考になった?」


《うーん、何となくリョウが弓を作ってくれた時と似たような感じがしたのと、属性魔力矢を作るようなイメージなのはわかったんだけど、やっぱり命をかけるの所がわからない、弓に対する熱意は誰にも負けないと思うんだけど。》


そういって悩むリナだが、内心俺は驚いていた。

リナは(魔力創造)や生命力の扱いを知らないはずなのに俺の動きだけで、技の本質に近づいている。

属性魔力矢はようするに魔法を変化させて矢にするイメージだ。

これを生命力を使って威力の調節と効果の設定を自力で行えば技の完成だ。

リナの言うとおり命をかけるの所だけわかれば使うことが出来るのだ。

基本的に魔力を属性を持った武器に出来る人物は生命力の扱いさえ掴めれば技の発動が出来るのだろう。


これは上手くいけば魔力操作を教えるだけで技を使う際の基礎ができるということであり、逆に技を使えるなら魔法を使う基礎ができるという事だ。

これなら今まで魔法を使えないとされていた獣人族も魔法を使うことが出来るかもしれない。

今日ルイと試してみて、成功したら金クラスのみんなにも伝えよう。

楽しみが増えてきたが、今はまずリナを優先しよう。


「すごいよリナ、そのイメージで合ってる、ただ使う力が魔力じゃなく生命力という力になるんだ、わかりやすく言うならHPだね。」


《生命力なんて意識したことなかったけど、魔力みたいに誰にでも操れるものなの?、それに使っても平気なものなの?》


「誰にでも操れるかはまだわからないけど、少なくても生命力は誰もが知らない内に身に纏っているものだしちゃんと意識できれば自由に操作できるはずだよ、それに空っぽ近くまで使わなければ危険はないよ、実際ルイも技を生命力を使って発動しているからね。」


《わかった、どうすれば操作できるの?》


「生命力は身体の内側にある魔力と違ってオーラのように身体の外側を包んでいるものだから、それを意識出来れば、あとは魔力と扱い方は同じだよ。」


俺のアドバイスを聞いて目を瞑りながら生命力を認識しようとするリナだが、どうしても魔力を動かそうとしてしまうため、その度に俺が注意する。

何回か繰り返すと生命力を認識したようで少しづつ動かせるようになったようだ。

そこからは早く、魔力と同じように体内に流したり、一点に集めたり出来るようになった。

リナは生命力の強力さに驚いていたようだが、しばらくすると疲労が溜まってきたようで肩で息をしていた。


《生命力ってすごい強力だけど、扱いが難しいね、リョウはよくそんな平気な顔して使えるね、すごいよ!》


「リナも使っている内に身体が慣れてくるよ、とりあえず疲労回復させようか、リフレッシュヒール!」


リナに魔法をかけると、先ほどまで肩で息をしていたリナの呼吸がだんだんと落ち着いてきて、少し経つと万全の体調に戻ったようだ。


《その魔法すごいね、使った生命力が回復していくのがわかったし、さっきまで身体がだるかったのにそれも無くなったよ!》


そういってぴょんぴょんするリナは相変わらずのかわいさだった。

さて、技を使うための下準備も終わったことだし、早速技を発動してもらおう。

俺はリナから離れてリナの技を観察する。

リナの生命力が弓に集まり、矢を形成し始める。

だが、矢は1本ではなく3本、それを壁へ向かって構える。

どうやら魔力と違ってどんな効果やイメージ、威力を持っているのかは発動するまでわからないみたいだ。

ということは、技同士のぶつかり合いはイメージの強い方が勝つのだろうから誰にも負けないという意識が重要になってくるな。


《サウザンドアロー!》


技名と共に放たれた3本の矢はそれぞれが拡散していき数えきれない程の本数に変わり、壁に刺さると無数の傷が刻まれる。

それも当たった一本一本全てに風を纏っているようで刺さった全ての矢の周囲は傷だらけになった。

おそらく最初の3本の風の力を均等に矢の本数分に分けたようなので、一つ一つの風の威力は高くなかったが、多くの敵を弱らせる手段としては最高だろう。


技を使い終えたリナは満足そうな顔をしながら俺に報告してきた。


《技使えるようになったよ!、やっぱりリョウの教え方は上手だね!、リョウがいなかったら私一生技を使える事は無かったよ、ありがとね!》


「そういってもらえて俺も嬉しいよ、リナは俺が教えるとすぐに出来るようになるからこっちも教えがいがあるよ!」


最高の笑顔をリナに向けられて俺も自然と笑顔になる。

だいぶ時間が経ってしまったので今日はみんなで学食に行くことにした。

体育館を出て、スートとルイを起こすため部屋へと戻る俺とリナ。

珍しく二人とも起きていて、二人で特訓していた事を教えると、ズルい明日から私たちも混ぜてとスートとルイに怒られたので、明日からは4人で訓練になりそうだ。


制服にはそれぞれのクラスを示すバッジを着けなければならないという決まりがあったらしく、それを今日初めて知らされたので、胸元に金のバッジを着ける。

今まで気づかなかったが、リナ達もそれぞれのクラスのリボンをしていた。

リナとルイは緑、俺とスートは金色だ。

これに早く気づいていればリナを探す時に苦労しなかったのにと今更ながら悔やんだ。

まあ、デミアンも召還できたので結果オーライだが。


わざわざ別校舎に行くのも面倒だったので、本校舎の食堂へ向かったのだが、これが間違いだった。

今までも何故かスートと歩いていると、好意的だはない視線を感じるなと思っていたが、俺がバッジを着けた事で理由が明らかになった。

俺とスートが金クラスだから馬鹿にしているのだろう。

スートは慣れてしまったのか、平然としていたがリナとルイはあからさまに機嫌が悪くなっていた。


とりあえず3人の頭をそれぞれ撫でると3人とも嬉しそうにしていて、機嫌も良くなったようで安心した。

それと引き換えに俺への嫉妬や見下す視線が増えたみたいだが。

そして食堂に入り、定食を買い席で食べていると見るからに柄の悪そうな連中が絡んできた。


「おいおい、金クラスのクズが随分良い女連れてるじゃねーか、おいとっととお前どっかいってこの女達を俺らに譲れよ。」


「金クラスの女もいるじゃねーか、こりゃラッキーだな!」


そういって俺の事など無視してリナ達に近寄る馬鹿共。

おいおい、学校にこんなやついていいのかよ。

俺は呆れながら馬鹿共に声をかける。


「こっちは食事中なんだし、マナーも守れないような奴らに俺の大切な3人を譲るわけないだろ、出直してこい。」


俺の台詞のどこがおかしかったのか大声で馬鹿笑いしながら俺を見下してくる。


「おいおい、金クラスのクズのくせにトップクラス紫に楯突くとか頭おかしいのかよ!」


「ほら今なら舐めた口きいたのも許してやるからとっととうせろよカスが!」


「はあ、話の通じないやつがどうやって会話するんだよ、それともなに、紫の人たちはレベル高すぎて一般人とお話出来ないの?、かわいそうだね。」


俺の皮肉に笑いを堪えるのに必死なリナとスートとルイ。

それが気にくわなかったようで、顔を真っ赤にしながら俺に向かってくる馬鹿共。

ちなみに人数は5人だ。

5人でどうして3人の女の子と話そうと思ったのか謎だがまあ、馬鹿の考えることはわからないし考えるだけ無駄だ。


「てめえ、俺らがせっかく見逃してやろうとしたのに調子に乗りやがって!」


「金クラスのカスが粋がるとどうなるのか教えてやらねーとな!」


そういって殴り掛かってこようとする馬鹿共。

後ろで魔法の詠唱までしてやがる。

しかもそこそこ強力なやつなんだけど、こいつらは後先考えてないのかな?

ここでくらって正当防衛にしてもいいが、金クラスってだけで責任を押し付けられそうだな。

放っておいたらリナ達に被害が出るしな。

くらっても返しても、放っておいても面倒って今日は厄日だな。


俺は殺意を込めた魔力に生命力を流し相手へぶつける。

ただの魔力だし、生命力でよりリアルになっただけで攻撃力はないから咎められないだろう。

目にも見えないし。


「少し黙れよ、馬鹿共。」


俺の魔力をぶつけられた5人は尻餅をついて震えていた。

魔法を発動しようとしていたやつも魔力をコントロール出来なくなったようで発動できないで魔力が霧散していた。

魔法の失敗は初めて見たが、魔力の無駄遣いだな。

俺も気を付けよう。


そして尻餅をついたやつらは逆ギレしてきた。


「こっちが手を出してねーのに魔法使ってくるとか暴力行為だ!」


「てめえ、ただで済むと思うなよ!」


手を出してないとか良く言うよなこいつら。

しかもこれ魔法じゃねーし。

いかにも雑魚キャラのような捨て台詞を吐いて去っていく5人組。

あいつら何をしたかったのだろう。

ちなみに殺意は馬鹿共にしか当ててないので、食堂にいた人達から見れば、騒いでた5人組が魔法を使おうとしたり、殴りかかろうとして何故か尻餅をついていたという、大変アホらしい場面だ。


リナ達もキョトンとしていた。

しかも、あいつら大声でクラスも名乗っていたし、何人か先生の姿も見える。

これで一方的に喧嘩を売ってきて勝手に逃げた馬鹿共という紫クラスには汚名しか残らない結果になった。


あー、朝から散々な目にあった。

せっかくのリナ達との食事なのにもったいない。

もう絶対にこの食堂には来ないようにしよう。

俺だけならともかく、リナ達を巻き込むわけにはいかないからな。

リナとルイはデミアンに護衛してもらおう。

俺が対策を考え終わった所でリナ達が話しかけてくる。


《ねえリョウさっき何したの?、何か魔力っぽいのを感じた気がするんだけど。》


《何であいつらが突然逃げてったのかよくわからないから説明してよー!》


《リョウ詳しく!》


リナ、ルイ、スートの順に詰め寄られた俺。


「あのー、また要らぬ絡みされそうなんで3人とも離れようか、とりあえず殺意込めた魔力をあいつらにぶつけただけだから、特にすごいことしてないよー。」


俺の説明に納得したようだったが、俺から離れる時は3人ともしぶしぶといった感じだった。

だからそんな顔しないで!?

罪悪感に押し潰されそうだから!?

何か毎回突っ込みいれてるなと思いつつ、俺は今朝から考えていたルイとの訓練を提案してみた。


「ルイ、今日予定空いてないか?、ちょっと試したい事があるんだが。」


《うーん、今日は出たい授業あるから夕方からなら大丈夫よ!》


「じゃあ、用事が終わったら別校舎の体育館に来てくれ!、ホントは本校舎に俺が来れればいいんだけど、また問題起きそうだからさ、悪いけどこっちまで頼むな。」


《りょーかい!、リョウは気にしなーいの!》


こうして、俺の試したい事は夕方までお預けだが、延期じゃないだけ良しとしよう。

俺はリナとルイと別れ、スートと共に別校舎へ向かう。

道中、相変わらずな視線を向けられたが絡まれなかったので一先ず安心した。

そして俺とスートが教室に着くと、全員の視線が俺に集まった。


そして、すごい勢いで詰め寄られた。

20人に詰め寄られた俺は身動きが取れなくなり、視界に入ったカリバーンに助けを求めたが、そっぽ向いて口笛吹いて気付かないふりをしやがった。

デミアンは視線が合うと微笑んでくるだけだった。

あいつら俺を見捨てやがった!?

俺は諦めてもみくちゃにされた。

救ってくれてありがとうや、一生着いていきますやこれからよろしくなどどう返したらいいかわからないようなものまであって困った。


(並列思考)のおかげで何とか聞き取れるが、無かったらどうしようもなかっただろう。

俺は当たり障りのない返しを笑顔で返していた。

そして、ようやく解放された所で異物の影響の少なかった4人が話しかけてきた。


「僕はシン=ヤマトだよ、これからよろしくね、リョウくん、もう体調は大丈夫?」


《私はフラン=ドワルです、リョウ殿、今回は我らを助けていただきありがとうございます。》


「よう!、俺はアジル=フルールだ、この前はサンキューな、これからよろしく頼むぜ!」


《私の白馬の王子様!、私はリンダ=リドルです!、一生着いていきますのでよろしくお願いします!》


何か色々と突っ込み所がある人が若干1名いたが、気のせいと思うことにしようか。


「改めてリョウ=テンジンです、みんなが元気になって良かったです!、俺も見ての通り元気になりました、これからよろしくお願いします!」


それぞれ紹介を終えた俺たちに近づいてきたカリバーンとデミアン。

デミアンはまだ良いとして、カリバーンに容赦はしない。

俺はカリバーンに高速で詰め寄り、ボディーブローを2発入れておいた。

うずくまるカリバーンに満足していると、リンダさんが俺にキラキラした目で近づいてきた。


《さすが私の王子様、素敵です、是非これからも私をお側に置いてください!》


ちょっと待てーい!

せっかくさっきのヤバそうな発言していたのを無事にスルーしたのに、もう一回ぶっ込んできやがった!?

しかもこれからもってなに、俺こんな人にロックオンされたの!?

せっかく整った顔立ちなのにこれじゃ全部台無しだよ!?

何このスペックの無駄遣い!


「い、いや、俺には既に大切な人がいるので。」


《今は3人ほどいるのでしょ?、なら増えても問題ないです!》


「これ以上増えても俺が責任持てないし。」


《私は自己責任で着いていきますので問題ないです!》


「俺よりもちゃんと好きになってくれる人はいると思うよ?」


《そこも含めて自己責任です!、それにあなたは優しい人です!、絶対に好意を無下にしたりしません!、私壁が高いほど燃えるんです!!》


この人やべえーーー!!

何で、全然この人諦めないんですけど!?

これ以上増えちゃったら俺、関係性を維持できると思えないんですけどー!!

途方にくれている俺に更なる爆弾を落としてくる人が1人いた。


《リンダに負けてはいられません、私もリョウ殿に着いていきます、私の一生を捧げても恩は返せないでしょうが、これからよろしくお願いします。》


そうして頭を深々と下げるフランさん。

それをニヤニヤした笑顔や嫉妬、好戦的な目など色々な視線を向けてくる金クラスのメンバー。

やめてー!!

そんな目で見てこないでー!!

というか、この人真面目すぎだよー!?

何で黒い異物出しただけで一生捧げるとか言ってんの!?

もうどうにかしてくれよ、この人たち!?


俺は再びカリバーンとデミアンに助けを求めたが、あっさりと却下された。

あいつらホントこういう時は頼りにならねーな!!

俺はそのまましばらくの間二人に詰め寄られ続け、同じ部屋に住んでいる事をスートが悪い笑顔でバラしたので、このフランとリンダまで俺の部屋に来ることになってしまった。

当然反対したのだが、俺の意見が通る事はなかった。


俺は今夜リナ達に事情を説明しなければならず、朝から馬鹿共に絡まれ、教室では変人の女の子達に絡まれ、まだ午前中にも関わらず泣きそうになった。


だが厄日なだけあり、これはまだまだ始まりだったのをこの時の俺は知らなかった。





次回更新は5/9です。


引き続き、評価、レビュー、感想、ブックマークお待ちしております!


今後も「憧れの異世界で」をよろしくです!!

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