5.召還魔法
リョウ視点です。
俺が目を覚ました時にはカリバーンとスートは既に起きていたようで、カリバーンはどこかに行ったようだった。
スートは俺が起きたのに気付くと、嬉しそうに笑っていた。
《リョウ、おはよう。》
「スート、おはよう。」
こうして朝の挨拶を終えた俺たちは、出かける準備を終え、食堂へと向かう。
あまりスートを人目に着く所に連れていく訳にもいかないので、別校舎の食堂へ向かった。
別校舎の食堂は本校舎よりも更に安く、銅貨1枚だった。
確かに本校舎の食堂の方が美味しかったが、別校舎の食堂もそこそこ美味しかった。
しばらくは、懐具合も考慮して別校舎で食べようと思った。
食事を食べ終えた俺たちは、どうしようか悩んでいた。
とりあえず急がなければならない問題として、スートの今後をリナと相談しなければならない。
だが、今日は予定を立てていない。
俺は(魔力創造)で何とかならないか考えた。
魔力の流れは大体みな同じなのだが、魔力の量や受ける感覚など少しずつ違いがある。
それで探そうかとも思ったが、昨日俺が見たリナの魔力は(魔力創造)で目を作り替える前だったため、大した情報を持っていない。
そんな曖昧な感覚ではおそらく特定することはできないだろう。
魔力でテレパシーのような物を使ってみようかとも思ったが、これはまずスートに試してみたが、相手の魔力の流れを正確に把握して、その魔力に自分の魔力を同化させて、魔力を通じて会話する、まあ糸電話のような物だったので近くにいないと使えない。
これは戦闘中に意志疎通する時に便利そうだなと思うくらいだ。
そう考えると、俺のいた世界の携帯は万能だったんだと改めて思う。
時間も見れるし、アラームも付いてるし、連絡もとりやすい。
そして俺は、今まで感覚で時間を察知していた事を思い出しそれで昨日は遅刻したので、正確な時間のわかって、アラームを鳴らす魔法を創る事にした。
昨日の訓練で思ったことだが、詠唱は無くてもいいが、やはり魔法名は言葉に出さないとせっかくの魔法なのに使ってる気分にならないし、何よりイメージするのに時間がかかった。
おそらくほとんど誤差はないだろうが、そういった誤差が大事な場面で命取りとなる場合もあるかもしれないため、誤差を無くすためこれからは魔法名を唱えることにしよう。
俺は現在の時間の感覚が不思議とわかる。
おそらく起きている時は正確な時間を把握できるのだろう。
あとはこれを視覚化させ、感覚と連動させていくだけだ。
創造力を働かせて、魔力を作り替えていく。
まあ、現実にある物は作れないのが残念だがそこは諦めよう。
「クロック!」
俺が魔法を使うと、頭の中に正確な時間とアラームを鳴らす時間が情報として入ってくる。
これは、不思議な感覚だなと思いつつ、俺はとりあえずの成果に満足する。
日付 4月の14日
季節 フェル節
現在時刻 9:15.24
アラーム 8:00.00
俺の創造から生まれた魔法なので、俺が見やすい表記になっていて助かる。
突然魔法を唱えた俺に不思議な表情を浮かべたスートが俺に説明を求めてきた。
《リョウ、今のは魔法?、魔力は感じたけど詠唱無かったし聞いたことない魔法だった、どんなもの?》
俺は伝わるかはわからなかったが、今の魔法について説明した。
まあ、詠唱がないのはスキルのおかげって言うと納得したようだった。
ほんとにスキル様々だな。
そして案の定時間の説明をしても伝わらなかったので、どうしようかと思っていると実際に私にかけて欲しいと言ってきた。
まあ、俺の魔力で異物を取り出せたのだから出来るだろうが、俺への信頼の高さがプレッシャーだ。
俺はスートに触れて魔力を同調させていく。
さっきの糸電話もどきを使ったときにわかったが、魔力の同調は対象から離れていると同調できる魔力は減るようで、魔法を発動させるくらいに送る為には、相手に触れなければならないようだ。
同調を終えた俺は、同調させた俺の魔力とスートの魔力を使い再び魔法を構築する。
「クロック!」
俺の構築した魔法がスートへと発動し、スートは驚きながらも、不思議な感覚なのか何ともいえないような顔をしていたが、クロックの魔法の効果には満足したようで楽しそうな声で俺に話しかけてきた。
《この魔法すごい、これで寝坊しないし予定も覚えやすい!》
そう、俺はスートの見やすい表記になるように魔法構築を俺のときと変えた。
スート自身の魔力を使うことで、スート本人の願望を叶えられる状態にしたのだ。
これでクロックの情報がわかり辛いという事態を避ける事ができた。
リナを探す話からかなり脱線したが、便利な魔法を作れたので良しとしよう。
というか、俺リナのクラスも知らないんだよな、完全にやらかしてる。
召還魔法試してみるか。
ただ、召還魔法の知識を図書館で探さないといけないな。
本校舎に行ってもいいが、まずは別校舎の方の図書館に行こう。
「スート、召還魔法について調べる為に図書館に行こう。」
《わかった。》
こうして俺たちは別校舎の図書館に着いた。
思ったよりも広くびっしりと本が並んでいた。
この図書館の事を何も知らないので、俺はジャンルわけが書かれているマップを探すことにした。
入ってすぐの所にあったので、見てみるとおそらく魔法ジャンルの所にあるだろうとあたりをつけ、魔法ジャンルのとこへ向かう。
魔法ジャンルのエリアに着くと、かなりの量があり、骨がおれそうだったが、ようやくそれっぽい本を何冊か見つけた。
俺はそれらを席に持っていき早速読み始める。
スートは何か別の本を探しに行ったようだ。
一冊一冊目を通していくと、召還魔法についてわかってきた。
前に勉強した所は読み飛ばしたので新しく知ったとこだけ纏めよう。
召還魔法は、魔方陣と対価用いて応じたものを呼び出す魔法であり、双方の了承があって初めて成り立つ。
対価が少なければ呼び掛けに応じる事が無かったり、裏切られる事もある。
捧げる対価によって呼び出されるものの傾向は決まってくるが、魔力であれば自分のイメージ通りに呼ぶことができる。
ただし、専用の対価で呼ぶものよりも効率が悪くなる。
だいたいどの本も似たような事が書いてあったので、俺が新しく得た知識はこのくらいだった。
どのくらい時間が過ぎたかわからないが、とりあえず横ではスートが寝ていた。
本を持ってきてから寝るまで早かったなと苦笑しつつ、俺は時間を確認する。
日付 4月の14日
季節 フェル節
現在時刻 12:35:46
アラーム 8:00.00
読んだ本の数と厚さからいえばかなりの読破スピードだ。
俺はそのうち学園にある本を全部読みきろうと密かな目標をたてた。
俺は寝ているスートを起こさないで行こうかとも思ったが、あとで機嫌が悪くなったら困るので起こす事にした。
「スートお待たせ、体育館行くぞ?」
《~んっ、わかった~》
眠そうな目を擦りながらかわいい欠伸をするスート。
整った顔に小柄な身体がリナとは違ったかわいらしさを表現していて何となく癒される。
そんなまだ半分寝ぼけているスートを連れて俺は体育館へ向かった。
まだ昼時だった事もあり、体育館には誰もいなかった。
誰かに見られる事もなくて丁度良い、俺は召還魔法の準備に取りかかる。
俺の捧げられる対価は魔力しかない。
だからこそ、ありったけの魔力を送る。
イメージするのは、隠密能力と情報収集能力に長け、いざというときにはその場をしのげるだけの能力を持った存在。
魔方陣は六芒星。
魔方陣が完成したら、魔力を全力で流し込む。
物凄い勢いで吸いとられていくが、まだ反応がない。
俺は、更に魔力を送り込む。
意識を保つのが辛くなり、そろそろ限界を迎えるだろうというときに魔方陣が広い体育館を光で吹き飛ばすかのような強烈な光が溢れる。
俺は反射的に目を閉じ、光が収まるのを待った。
光が収まり目を開けると、そこには魔人族と似ているが圧倒的な風格を持った男性が立っていた。
目はつり上がっているが、顔を形成するパーツは整っているうえに見事なバランスで配置されている。
細身の肉体だが、限界まで引き締められているのがわかる。
尻尾は先端が尖り、肌は人に近いが纏う衣装と雰囲気が人と違うことを示している。
身長も俺と同じくらいだ。
すると、その人物は俺に話しかけてきた。
『契約者、あなたの魔力はとても美味でした、ではマスターこのわたしに名付けを。』
何かこんなに敬意を払われると、逆に恐い!
それでも、召還したからには契約者としてきちんと責務を果たそう。
「召還に応じてくれてありがとう、今日から君の名前はデミアン=ロペスだ、俺はリョウ=テンジンと言う、これから長い付き合いになるだろうからよろしく頼む!」
俺の自己紹介に満足したようでデミアンは笑いながら俺に忠誠を誓った。
『ククク、予想通りの素晴らしい方で感動しました、本来ならあの程度魔力で呼び掛けに応じるなどあり得ないのですが、極上の魔力と魂をお持ちでしたので、参上させていただきました、最も期待外れでしたら即刻殺していましたがね。』
『さて、前置きは終わらせていただきまして、魔界の騎士が一人デミアン、マスターに忠誠を捧げましょう!』
ちょっとまてい!
魔界の騎士とかどういうこと!?
しかも何かめちゃめちゃ強そうなんだけど!?
俺はマスターとしてやっていけるか不安になってきた。
そして当然こんな半端なさそうな奴に払う報酬って俺払えるかな。
「忠誠を誓ってくれてありがとう、デミアン俺は君に何を報酬として用意すればいい?、命とか俺が強くなるうえで必要になるもの以外なら何とかするよ。」
『マスター、このデミアンの求めるものはただ一つ、主の魔力でございます、それがあればどんな命でも果たしましょう!』
「わかった、ならデミアンひとまず俺の魔力をお前に渡そう。」
俺はデミアンに触れて魔力を流す。
デミアンを呼ぶのに相当な魔力を使ったので、今は余力がほとんどないが、まあ初契約記念ということでささやかなお祝いだ。
俺はデミアンの魔力と同調させてデミアンに魔力を流し込む。
すると、デミアンの表情が歓喜に変わった。
そして不思議な事だが、デミアンの位置を把握できるようになった。
意識を集中させてみると、スートの位置もわかる。
おそらく、俺の魔力同調を使うと俺の魔力がGPSの代わりのような役目を持つのだろう。
これは知り合いに使っておけば見つけやすくて助かるな。
とりあえずデミアンに初仕事をお願いするか。
「デミアン、俺たちは別校舎の図書館いるからリナ=エルフィンというエルフの女性を探して呼んできてくれ、容姿は今見せる、用事の途中だったら終わってからでいい、伝えてくれたらそのあとは自由にしていてくれ、初仕事よろしく頼む!」
そういって俺は(魔力創造)を使い、映像を俺の魔力で見せる。
そうしてリナの容姿を覚えたデミアンが俺の依頼に了承した。
『マスターの命、果たして参ります、先程の魔力のおかげでマスターの魔力を常に感じる事ができ最高の気分でございます、それではマスターリナ様を呼んできます!』
そういってデミアンは体育館を出ていった。
俺がスートに目を向けると、ポカンと口を開けたままだった。
どうやら俺が見ている事にも気づいていないみたいだ。
「おーいスート?、とりあえず用は終わったから図書館行くぞー?」
俺の呼び掛けでようやく我に返ったようで俺に詰め寄ってきた。
おいおい、何で俺の周りの女の子は驚くと俺に詰め寄ってくるんだよ!?
ただ、リナの時とは違い理性が飛びそうというよりも可愛らしくて撫でたくなるという感じだったが。
《リョウ、召還魔法であんなに強力なの呼び出した人を初めて見たすごい!、しかも魔界の騎士って神話とかにしか出てこない!》
何かめちゃめちゃべた褒めされてるんだけど、俺どうしたら良いんだろう。
とりあえず興奮冷めやらずキラキラした目を向けてくるスートが微笑ましかったので自然と頭を撫でていた。
しかも丁度撫でやすい位置に頭があるからついついやってしまう。
「何かめちゃめちゃ褒めてくれるね、ありがとう、とりあえず図書館に行くから離れよっか。」
俺の撫で撫でに気持ち良さそうにしていたスートだったが、距離が近いことに気付いたのか恥ずかしそうに、でも残念そうに離れていく。
そんな顔するなよ!?
何か罪悪感でいっぱいになるだろ!?
俺は間違っていないはずなのになぜか複雑な気持ちになりながら図書館へ向かった。
次回更新は5/2です!
引き続き評価、レビュー、感想、ブックマークをお待ちしております!
今後も「憧れの異世界で」をよろしくお願いします!




