2.依頼達成と友達
リョウ視点です。
依頼が出ていたとはいえ町のすぐ近くにモンスターがいるわけではない。
俺たちは町からしばらく歩いてモンスターを探した。
討伐依頼は大事だが、俺は依頼の為だけにモンスター狩りに出かけた訳ではなく、少しでも強くなるためにモンスター狩りにきた。
広い草原のため、障害物はなく索敵は簡単だった。
その分敵にも見つかりやすいので、囲まれないように注意が必要だ。
なので、今回の索敵は耳よりも目に魔力を集中して視野を広げる。
魔力の操作が更に上手くなったお陰なのか、目に魔力を集中させると魔力の流れが見える。
リナ達は身体強化等はしていないみたいで、身体の中心が淡く光っている。
試しに身体強化をしてから、自分の身体を見てみると魔力の流れる所が光るみたいで全身が淡く光っている。
腕に魔力を集中すると、先程よりも腕の光が強くなった。
すると、無機質な声が頭に聞こえてくる。
【スキル(魔力視覚化)を手に入れました。】
まだまだ色々試してみたい所だったが、前方から5匹のウルフとイノシシに角が生えたのようなモンスターが4匹出てきた。
リナにイノシシのようなモンスターについて聞いてみると、あれはファンゴというモンスターのようで、角が討伐部位らしい。
俺は目の魔力はそのままに、闇を除く6種プラス魔力を流した魔法剣と光の待機魔法を作る。
「我は求める、波動砲、シャイン!」
全身からシャイン9発を出し、魔力で包み自由に操れる状態を作る。
今は魔力が見えるため、いつもよりも動かしやすい。
リナとカリバーンも見てみると、カリバーンは身体強化をしていて、全身が光っていて鉄剣とは別に魔力で剣を作っていた。
あの魔力の剣は無属性で作られているようで白色で、常に魔力を流し続けているようだ。
不思議な事だが、おそらく(魔力視覚化)によって見える魔力の光と無属性の光は微妙に色が違うため見分ける事が出来る。
しかも、(並列思考)のお陰だと思うが、普通に見える景色も認識できる。
リナを見ると、魔法を唱えるのか魔力が緑色に変わって腕へと集中していく。
これはかなりすごい。
これで、相手が何属性の魔法を使ってくるのかが簡単にわかる。
これを利用すれば戦闘がかなり楽になるだろう。
そうしてリナが詠唱を開始する。
《我は求める、吹き荒れる風、ラ.ウインド!》
リナの魔法がモンスターの集団に命中する。
竜巻のような風がモンスター達を包み込み、色んな方向へと吹き飛ばす。
こうしてモンスターの集団はバラバラになったので、俺はシャインをバラバラになったモンスター一匹一匹に当てていく。
シャインに当たったモンスターは動きが鈍り、中にはそのまま動かなくなるモンスターもいた。
残った動けるモンスターは、カリバーンが二本の剣で仕留めて行く。
こうして、モンスターの集団を全滅させたので、早速ウルフの討伐の証拠となる牙を採取する。
そして、ファンゴからは角を取る。
今回は依頼に出ていなかったので使わないと思うが、これから依頼として出ることもあるかもしれないので、俺は新しくもらったリュックに入れておく。
「我は求める、結晶に、クリスタル!」
そして、残った死体は魔法石にしていく。
(並列思考)で同じ魔法なら同時使用できるようになったので、作業が楽になった。
すると、頭の中に無機質な声が聞こえる。
【スキル(詠唱短縮)を手に入れました、スキル(魔力操作)(魔法)(魔力視覚化)(詠唱短縮)が合わさり、スキル(魔力創造)を手に入れました。】
何か確認する前に色々合わさって新しいスキルができた。
さすがに凄そうなスキルだから今回はすぐに確認しておこう。
ステータス
天神 凌 (てんじん りょう)
HP2500/2800
MP1800/2400
装備 (エジマリフ魔導学園制服) (靴) (カリバーン) (リュック)
スキル (並列思考) (浄化) (登り降り) (剣技) (拳技) (精神耐性) (異世界言語理解) (意識共有) (魔力創造)
スキル(魔力創造):魔力を自由自在に変化させることができる。
毎度そうだが、スキルの説明はざっくり過ぎてわからない。
とりあえずは色々と試してみたいのだが、続いてウルフが7匹出てきたので掃討が先だ。
すると、カリバーンが魔力の剣を7つ作り、ウルフに向かって投げる。
かなりの速度で飛んでいったため、ウルフ達は避ける事が出来ずに剣が刺さり動かなくなる。
それを見たリナが、ウルフの牙を回収し魔法石に変えて戻ってくる。
俺の出番がなかったが、二人とも頼りになるので気にしないでおく。
周りを見た限りモンスターの姿は見えないので、俺たちは少し早いがオーノスに戻ることにした。
ここから更に進んでモンスターを探すと門が空いてるうちに帰れなくなる恐れがあるからだ。
帰り道にも3体程のウルフを狩り、オーノスへ到着した。
まずは、北区でこの前お世話になったヒュニさんが経営している道具屋に寄り、魔法石の査定をすることにした。
ヒュニさんは忙しいようで、残念ながら会うことが出来なかったが無事に魔法石は買い取ってもらえた。
全部で大銀貨6枚になったので、1人2枚ずつわけあった。
次にギルドへ行き、今回の依頼の達成の報告をした。
全部で15匹のウルフを倒したので、大銅貨25枚もらった。
均等に分けるのは面倒だったので、今日の食事代ということで大銅貨15枚をリナ、後の10枚を俺とカリバーンで分けた。
リナはもらいすぎだと言って俺たちに分けようとしてきたが、俺とカリバーンが受け取らなかったので、しぶしぶもらうことにしたようだ。
俺たちはもう一度依頼を確認したが、とりあえず今の時間から受けられそうな依頼は見つからなかったので、そのまま学園に帰ることにした。
学園に着き食堂で食事をとる。
学食は値段がかなり安く銅貨3枚程で食べれる。
これで少しの間はお金に困ることはない。
色々試す事が出来たのでしばらくは別校舎横の体育館で訓練しようと思う。
夕飯を食べ終わると、リナと別れ俺は別校舎横の体育館に、カリバーンは金クラスの人達に会いに行ったようだ。
体育館に着くと、先に訓練をしている二人組がいた。
種族は、魔人族と竜族の男の人だった。
魔人族の方は紫の肌はデールと同じだが、角が少し曲がっていて黒く輝いていた。
黒で輝いているのに角からは禍々しさを感じることはなく、とても綺麗でまるで宝石みたいだった。
竜族の方は全身が銀の鱗で覆われていて、とても硬そうで大抵の剣は弾かれてしまいそうだった。
長い尻尾は先が尖っていて、切れ味もありそうであの尻尾事態が武器になりそうだ。
俺は遠くから見ているだけだが、二人がかなりの実力者であることがわかる。
俺の視線に気が付いた二人は俺に話しかけてくる。
「お、この時間に人が来るのは珍しいな、お前どこのクラスだ?」
「初めて見る顔だな。」
昨日の出来事もあるので、クラスを名乗るのに抵抗があるが、ここで名乗らないのは得策じゃなさそうなので、俺は自己紹介する。
「今日から学園に入学した、金クラスのリョウ=テンジンと言います、お二人はどこのクラスなんですか?」
俺が金クラスと言うと、俺に興味が無くなったのかとりあえずと言った感じで自己紹介してきた。
「俺は紫クラスのイルデ=ビーラだ、よろしくな。」
「俺は白クラスのドーラ=リドルだ、俺たちの邪魔はするなよ。」
そういって訓練を再び始めるイルデとドーラ。
魔人族の方がイルデで竜族がドーラというそうだ。
もう少し話をしてみたかったが、邪魔するなと言われたばかりなので俺も訓練を始める事にする。
なるべく彼らから離れ、俺はスキル(魔力創造)で思い付く使い方を試してみる。
とりあえず、(魔力視覚化)が取り込まれたのだから少なくても魔力を見ることは出来るだろう。
俺は自分の目と魔力を合わせて新たな目を作ろうとしてみる。
魔力はカリバーンの身体も作る事が出来た。
ならば、魔力の見える目も作る事は出来るだろう。
やってみると、一瞬視界がブラックアウトする。
目を作り変えるのだから視力が無くなったのが原因だろうし、何となく予測できていたのでそこまで慌てることはなかった。
視界がいつも通りになると、目に魔力を集中していた時よりも更に魔力が見えやすくなり、同時に魔力量も見えるようになった。
改めてイルデとドーラを見ると、訓練で減っているのにも関わらず膨大な魔力を持っていた。
やはり、彼らの強さの予想が間違っていなかったことがわかり、俺は先程判断ミスをしなくて良かったと安堵した。
全身を弄ろうと思ったが鍛えていく事の大切さを忘れてしまいそうだったので今はやめておく。
次に魔法を唱えてみようと思う。
(魔法)と(詠唱短縮)が混ざったのだから詠唱は大分短縮できるのだろう。
俺は魔力の流れを意識する。
すると、魔力の色を自由に変えられる事に気づいた。
俺は魔力を7色に変化させ、それを全身から放出させる。
その時に、それぞれの色に身体から出たときに色に対応した防御魔法になるようにイメージした。
すると、俺の身体の周りに7色の盾が生まれた。
今までは同時に使える魔法は詠唱の関係上一種類だけだった。
だが、スキル(魔力創造)を手に入れた今なら魔力を直接魔法にできるため、全種類同時に発動出来るみたいだ。
しかも、互いに反発しないように作ったので本来共存できないはずの光と闇も同時に作る事ができた。
だが、これは俺の魔力で思い通りに作った魔法なので、おそらく敵から使われた魔法の相性は無視できないだろう。
それでも十分な成果だし、更に戦闘の幅を広げられる。
そして今度は攻撃魔法も同時展開してみた。
すると、全て正常に発動でき、何よりも驚いたのは糸で繋がなくても、俺から離れた魔法を俺の自由に動かす事が出来るようになっていた。
これで魔法が避けられる事はなくなった。
そして、魔法を合成させて威力を上げる事も出来るようで、最大強化の魔法を更に強くする事が出来そうだ。
そして、魔法はイメージだ。
ということは、イメージさえ出来るのなら魔法を新しく作れるのではないか。
まず挑戦するのは雷で、魔力に電流を纏わせるイメージを作り指先から雷を放ってみる。
指先が光った瞬間壁がへこみ、かなりの熱量だったのか煙が上がっていた。
どうやら、俺の世界の雷の劣化版を作れたみたいだ。
これは俺の想像力次第で色々な魔法を作り出せるということだ。
これは色々な知識を集めるために図書館に通う必要が出てくるな。
次は魔力で道具を作り出せるかだ。
これが出来れば俺は新たな金策の手段を得られる。
期待を持ってまずは、カリバーンに渡した鉄剣を作ってみる。
だが、持ってみるとわかる。
これは鉄剣に見える魔力だ。
どうやら新たな道具を無限に作る事はできないようだった。
残念な気持ちになったが、もしそんな事が出来てしまったら、かなりの面倒事に巻き込まれたであろう事は予想できるので出来なくてもいいかと納得できた。
魔法剣も予想通り7属性と魔力を込められるようになり、カリバーンのやっていた魔力剣も全属性同時展開できた。
だが、この魔力剣は常に魔力を補充しなくてはならないため、かなり燃費が悪いのでここぞという時にしか使えないだろう。
とりあえず、今思い付く事を試し終えるとイルデとドーラがものすごい勢いで近づいてきた。
「おい、さっきのはなんだ!?、俺にも教えろ!」
「あれは魔法なのか?、お前の訓練を見ていたが、俺には何をしているのかがまったくわからなかったな、その技術を渡せ。」
とりあえず、どう説明したらいいのかわからない。
だがまずは俺は思ったことを言わせてもらおう。
「二人とも俺が金クラスだから馬鹿にしてるのか?、教えてもいいけど頼み方ってのがあるだろ。」
俺の言葉に二人は謝罪してきた。
「すまない、確かに礼節を無視してしまった、金クラスでここまで出来るやつがいるのを認めたくなかったんだよ、ほんとにすまない、だから俺にもさっきの魔法とか教えてくれ!」
「俺からも謝罪する、竜族はプライドの高い種族でそういった環境で育ってきたからつい高圧的になってしまった、自分勝手なのは理解してるが、どうしてもその技術が知りたい!」
俺はこの二人の態度に驚いた。
てっきり昨日のルームメイト達のようにぶちギレてくると思っていたのだが、そんな心配はいらなかったようだ。
俺はこの二人の姿勢に嬉しくなった。
金クラスと知ってもこうして接してくれる人もいるのだと学園生活に希望が持てた。
「すみませんこちらこそ生意気な事を言いました、教えることは構わないのですが、よろしければ俺と友達になってもらえませんか?、入学したばかりで友達もいないし、他の種族の事もほとんど知らないので教えてほしいです!」
俺の希望を聞いて二人はお互いにポカンとしていたが、ようやく理解が追いついたのか大爆笑された。
「カカカカ、友達になってくださいとか初めて言われたぜ、俺の事をおっかないと思うやつはいても歩み寄るやつはいなかったからな、そういう事なら喜んで了承するぜ、堅苦しいのは無しでこれからよろしくなリョウ!」
「グワハハハ、俺が生きてきた中でも初めて見るタイプの人族だな、よかろう、俺が色々と教えてやる、友になるならこちらに気を回す必要はない、リョウよろしくだ!」
こうして俺は魔人族のイルデと竜族のドーラと友達になった。
遅くなって申し訳ありません。
今日中にもう2話分更新します。
引き続き「憧れの異世界で」をよろしくお願いします!!
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