112.フライケーキと街散策
リョウ視点です。
《お待たせしました、フライケーキとコウティーです。》
出てきたフライケーキという食べ物は、見た目はホールケーキなのだが、クリームなどでデコレーションされている俺の知ってるケーキとは違い、そういったデコレーションはなく、ホントの揚げ物といった感じだった。
どういった味なのか興味がある。
それに、一緒に出てきたコウティー、見た目は完全に紅茶だ。
湯気から漂ってくる匂いも紅茶と同じような物だった。
だがまずは、フライケーキから食べることにした。
フライケーキを切ると、サクッと心地よい音が聞こえ、中からは冷気が漏れる。
その光景に驚きを浮かべる俺とリンダ。
どうやら、特殊な製法は中の温度を冷たいまま保つという効果もあったらしい。
だが、外側が冷たくなっている訳でもないため、かなり手間の掛かる料理なのではないかと思ったのだが、元から料理が得意なわけでもない俺にはそこら辺はわからなかった。
そして、切ったフライケーキを口に運ぶと、先程切った時と同じようにサクッとした感触、それに続きまるでアイスを食べているかのような冷たい感覚、その後にケーキ特有の甘味と風味が広がってくる。
ケーキはオーソドックスなショートケーキと味は似ていて、本来デコレーションされているクリームとかは特殊な製法とやらで中に施されているため、とても美味しい。
リンダもそれは同じようで、とても美味しそうにフライケーキを食べてる。
この光景を見れただけでもドワルゴンに来たかいはあるなと思いながら、次はコウティーに口をつける。
予想通り俺の知ってる紅茶と似たような味がする。
ここであくまで似たようなというのは、普通の紅茶ではなく、どちらかといえば甘くないレモンティーと呼べるような風味があとから広がってきたからだ。
一見このフライケーキとコウティーは合わないような気もするのだが、このレモンの風味が口のなかをさっぱりとさせる事で、フライケーキの美味しさを何度も楽しませてくれる。
そんな絶妙なバランスで作られたフライケーキとコウティーを俺とリンダは無言でひたすらに楽しむ。
それはフライケーキとコウティーが美味しすぎてしゃべる事も忘れていたというのが正しい。
こうしてフライケーキを食べ終えた俺達は再びコヒーをお代わりして余韻を楽しむ。
「いやー、想像以上に美味かったな。」
《ほんとにそうですね! リョウ様と一緒でしたからなおのこと美味しかったです!》
「そりゃどうも、さて次はどうする? このままここでゆっくりするのも悪くないと思うんだが。」
《それも魅力的な提案ですが、やはり新しい街に来たのでリョウ様と散歩したいです!》
「そっか、じゃあ会計して行こうか。」
こうして俺とリンダは会計を済ませて再び街を歩き出す。
オーノスとは違った街並みが広がり、店の雰囲気も少し違ってただ歩くだけでも楽しめる。
手を繋ぎながら嬉しそうにしているリンダを横目に、面白そうなお店を探す俺。
色々反応するお店はあるが、強い反応を示すのはフラワードを除けばまだ見つからない。
まあ、歩くだけでも楽しいから問題はないけどな。
そうしてしばらく歩いていると、少し離れた所で助けを求める声が聞こえた。
強化された耳だから聞こえただろうその声はリンダには聞こえてないようだ。
「リンダ、あっちの方で助けを求める声が聞こえたんだが、一緒に来てくれないか?」
《わかりました! 早く助けてあげましょう!》
こうして俺達は声が聞こえた方に走っていく。
すると、複数の足音が聞こえてくる。
ここまで来ればリンダにも音が聞こえてくるみたいで、俺に視線を向けてくる。
それに頷くだけで答え、声や足音のする方向へと向かう。
俺とリンダのスピードはかなりの物らしく、少し走ったところで助けを求めていた人の姿が見える。
女の人で足運びから戦闘には向かなそうなのは見てわかったのだが、容姿がかなり優れていて、追ってるやつの雰囲気を見ればどんな用件なのかも容易に想像できる。
リンダも気づいているらしく、嫌な顔を浮かべている。
やがて行き止まりに近づいてきて追われている女の人がこちらを向いて絶望した顔を浮かべているのを見たところで、俺達は追っていた男達と女の人の間に飛び降りる。
俺だけなら恐怖を増長させてしまったかもしれないが、リンダもいるため少しは警戒心を解いてくれたようだ。
そっちはリンダに任せることにして、こちらを見て下卑た顔を浮かべている男達に一応声をかける。
「さて、何でお前らはこの女の人を追ってるんだ?」
「そんなの楽しむために決まってるだろ! 横の女も中々上物だし、今なら女を2人置いてけば許してやるぞ?」
「ガキはおとなしく帰りな!」
「ヒーロー気取りも大概にしとけガキ。」
悪役のテンプレみたいな言葉を吐いてくる男達。
俺からしたら、粋がっているだけの可哀想な連中にしか見えない。
リンダも相手の実力は感じられるらしく、そもそも見向きもせずに女の人を励ましている。
そんなわけで俺が相手することになる。
「御託はいいからさっさと来いよ? お前らみたいなしょーもない奴等相手するほど暇じゃないからな。」
俺の言葉に顔を真っ赤にして何かしら叫んでくるが、もはや聞く価値もないとして無視する。
そうして剣を構えて突っ込んでくる男達。
連携もくそもなくただ突っ込んでくるだけでも呆れるしかないのに、速度も遅く、もはや何をもって自信があるのか理解に苦しむ。
動かない俺に着いてこられないと思っているのか、笑みを浮かべながら剣を振り下ろしてくる。
後ろから若干悲鳴も聞こえるが、残念ながらこんなくそみたいな剣で傷など付けられるはずもなく、案の定俺を切りつけた瞬間剣が折れる。
そんな自分の剣に呆気にとられている男達に、俺は軽く腹にパンチを入れとく。
一撃で動けなくなる1人の男、状況がまだ理解できないようで、このごに及んでも動かない2人の男。
それはもはや戦闘では決定的な隙だ。
まあ、これは俺にとって戦闘ではなく作業だが。
そうして残りの男達も軽く潰した所で、ポカンとしている女の人に声をかける。
「大丈夫ですか?」
《え、ええ、助けていただきありがとうございます、それにしてもお強いんですね。》
「まあ、あの程度の雑魚ならどれだけいても余裕でしたね、というかそこにいるリンダでも軽く倒せますよ。」
《えっ! そんなに強いんですか?》
《まあ、リョウ様の言うとおり相手にもなりませんね、なので私は一応あなたの護衛をしてました。》
《リョウ様?》
「あー、そこは気にしないでくれ、俺は今日この街に来たばっかりだからよくわかんないんだが、あーいうのは結構いるのか?」
《はい、ここ最近被害が多くて、私も好奇心で何時もと違う道に入ってしまって、迷っていたら追われてしまったんです。》
「そっか、とりあえずこのままだと危ないだろうから、安全な場所まで送るよ。」
《ありがとうございます! お願いします、あ、自己紹介が遅れましたが、私はピールと言います。》
「俺はエジマリフ魔導学園金クラスのリョウ、そっちはリンダだ、じゃあ少しの間よろしくな。」
こうして俺とリンダにピールを加えた3人は再び大通りに向けて歩き出す。
次回更新は8/16です。
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