111.ドワルゴン
リョウ視点です。
「そんでリンダ、今日はどうする?」
《リョウ様にお任せします!》
「いや、それが1番困るんだが。」
《私はリョウ様といられればそれだけで満足なので問題はありません!》
リンダの好意全開の要望により、たじたじになりながらも、俺は何処へ行くか考える。
オーノスを巡ってもいいのだが、それだと新鮮さが無いのも事実だ。
そんな事を考えていると、俺の分身の1体が新しい街を見つけたみたいだ。
丁度良いタイミングだし、リンダにそこに行こうと誘ってみる。
「リンダ、俺の分身が新しい街を見つけたみたいなんだが、そこに行くか?」
《はい! もちろん! リョウ様と新しい街を歩けるなんて嬉しい限りです!》
何か俺の想像よりも喜んでくれたようなので、俺とリンダは分身のもとへ転移する。
「転移、分身W!」
こうして転移した俺とリンダが見たのは、学園として機能している城が特徴のオーノスとは異なり、高くかなり頑丈そうな壁が見える範囲で広がっていて、普通には見えないがその壁からドーム状に透明なバリアのような物が広がっている。
オーノスも攻撃された場合の防御力はかなり高いのだろうが、ここの街はそれとは比べ物にならないほどの強固さを誇る。
俺がそんな街に見惚れていると、リンダが説明をしてくれた。
《ああ、この街はドワルゴンと言ってドワーフ族が治めている街ですよ、私も来たことはないですけど、物作りが盛んな国なんですが、結構人族もいますよ。》
「へえー、よく知ってるな、どこで知ったんだ?」
《図書館に旅行ガイドと言うものがあって、そこに書いてあった場所です! 結構便利ですよ!》
「そうか、俺も気が向いたら読んでみるよ。」
そうして俺とリンダは些細な話で盛り上がりながら強固な門で守りを固めている鎧を着た兵士達に話しかける。
最も今は周りに人がいないため兵士達も暇そうにしていたので、丁度良いと思いながら街に入る手続きを行う。
「俺達オーノスから来たんだけど、街に入れてもらえないか?」
「わざわざ遠くからご苦労さん、一応学生証だけ見せてくれ、それがあれば普通に入れる。」
こうして俺達は学生証を見せると、門番の兵士達は俺達を街中へと入れてくれた。
俺とリンダは初めて来る街にワクワクしながらゆっくりと歩いていく。
オーノスのように建物がゴチャゴチャしているわけではなく、むしろきちんと道が整備され、どこに何があるのかはっきりしていた。
俺は強化した目で辺りを見渡す。
オーノスでも幾つか良い商品を置いてある店はあったが、このドワルゴンではその数が遥かに多かった。
最も、そういった良い商品の置いてあるお店で多いのは鍛治屋だったが。
いきなり鍛治屋を回るのも風情がないため、朝ごはんは食べたばかりだが、何か軽く食べられる美味しいカフェのような場所を探す。
こういう時に良い物を見分けられる俺の目は便利だと改めて感じる。
ついでに実力者も探してみるが、流石にそう簡単に発見できるはずもなかった。
それどころか、オーノスの方が実力者が多い印象だ。
いくら物作りが盛んとはいえ、俺の中でオーノスの人々の強さはたかが知れている。
そんな人々よりも実力の劣っているドワルゴンの人々に大丈夫なのか不安に思う気持ちを持ったのは俺の当然だったのだろう。
やがて街を少し歩いた所に、一際反応が激しく、良い匂いのするお洒落なお店を見つける。
探せばもっと良いお店もあるのかもしれないが、その時はまた入れば良いと思いながら、お洒落なお店をリンダにも薦める。
「リンダ、このフラワードお店に入らないか? 見た感じ、お洒落だし良い匂いもするから中々のお店だと思うけど。」
《リョウ様のセンスに任せます! 最もリョウ様と食べられるのなら何だって美味しくなりますよ! それこそそこら辺の雑草でも!》
「いや、それはリンダの味覚が壊れてるだけだから、頼むから普通の味覚を持ってくれ。」
相変わらずのぶっとんでるリンダはさておき、俺達はフラワードへと入る。
店内は木で作られていて、それを活かすような店内照明と音楽によりこのお店の雰囲気を作り出している。
このいつまでもいたくなるような雰囲気に癒されていると、店員さんと思わしき女の人が話しかけてくる。
《いらっしゃいませ、お客様、2名様でよろしいですか?》
「ああ、2名だ。」
《では、こちらのお席へどうぞー! オススメはフライケーキです!》
「フライケーキ?」
《ええ、特殊な製法で作ったケーキを揚げた食べ物ですよ、出来立てでも冷めても楽しめる料理です! 注文しますか?》
「ちょっと食べてみたいんだけどリンダはどうだ?」
《私も興味あります!》
「じゃあ、フライケーキをとりあえず2つとそれに合う飲み物を2つ、それとすぐ飲めるオススメの飲み物を2つくれ。」
《かしこまりました、それでは料理前にコヒー、フライケーキと一緒にコウティーをお持ちいたしますね!》
そう言って厨房の方へ向かっていく店員さん。
少しすると、黒いが豊かな香りの広がる飲み物が2つ出される。
何となく名前からそうではないかと思っていたが、案の定俺の世界でいうコーヒーだった。
リンダは初めて見たらしく、コーヒー独特の匂いを嗅いで表情をコロコロと変えていた。
そうして、コヒーを飲むと、広がる苦味と豊かな香り、その中に若干の甘みがある、俺の知ってるコーヒーと少し違うが、これはこれで美味しい。
この甘みが絶妙でコーヒーのような苦味と香りを引き立て、味に飽きさせないように工夫されている。
リンダは残念ながらこの苦さがあまり得意じゃないようで、飲むペースがかなり遅かった。
「リンダはこの苦さが苦手か?」
《はい、私の舌はお子様なのでちょっと合わなそうです、リョウ様は平気なんですか?》
「ああ、俺は結構好きな味だ、じゃあちょっと待っててくれ、店員さん、このコヒーに合わせる飲み物はないか?」
《クーミルというのをコヒーを頼まれたお客様にサービス出来ますが、それで良いですか?》
「ああ、構わない、それと良ければ甘味を足せるものもくれ。」
《かしこまりました、少々お待ち下さい。》
再び厨房へと戻っていった店員さんは、コヒーに注ぎやすいような容器にクーミルを入れ、それと一緒に角砂糖のような物を持ってきてくれた。
「それじゃリンダ、試しにこのクーミルをコヒーに入れてみたらどうだ?」
《リョウ様がいうなら試してみます!》
そう言ってコヒーにクーミルを注ぐリンダ。
黒いコヒーに白のクーミルが合わさり、徐々に茶色へと変化していく。
クーミル自体も温かいようで、コヒーが冷めることもなかった。
そうしてコヒーとクーミルが合わさった物を恐る恐る飲むリンダ。
《わあ! さっきより苦味が無くなって飲みやすくなりました!》
「予想通りでよかったよ、もっと甘さが欲しかったらその四角いのを使えばいい。」
そう言って角砂糖もどきを1つ入れるリンダ。
いきなり幾つも入れないのは流石だと思いながら、再びコヒーを飲むリンダを見る。
《美味しい! さっきより甘くなって、これならいくらでも飲めそうです!》
「そっか、喜んでもらえて良かったよ。」
こうしてコヒーを飲み終えた俺達だったが、どうやらコヒーはお代わり自由なようで、迷うことなく俺達はコヒーをお代わりした。
そうして、コヒーに満足しながら、リンダとの他愛ない会話を楽しむ。
一体どこからそれほどの話題が出てくるのかとこちらが驚くような勢いで話続けるリンダ。
その様子はとても楽しそうで、彼女の魅力をより高めていた。
最も途中で暴走して台無しにするので、残念なのは変わりないのだが。
しばらくすると、今回のメインがやってきた。
次回更新は8/16です。
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