13.2日目の終わり
リョウ視点です。
さて、晴れてカップルになった俺とリナだが、ここはリナの部屋で、ベッドの上、しかも抱き締め合った後だから二人の距離も近い。
今更ながら恥ずかしさが込み上げてきたけど、それ以上に嬉しさと、上手くいった安心感で一杯になったからいいかと思っていると、リナの方からぐぅーという音が聞こえた。
目が合うと、リナはお腹を抑えて照れて俯いてしまった。
なんだ、この可愛い生き物は!?
俺は思わず抱き締めてしまった。
すると、リナの方も抱き締めて来たが、少し困った声で注意された。
《こうやって抱き締められると心地良くて、すごい安心するんだけど、このままでずっといたいと思っちゃって、お腹すいちゃったのに買いに行けないよ。》
それを聞いて、俺は名残惜しいかったがリナから離れて、ベッドを立ち上がった。
リナは今日の狩りの時も持っていたバッグを持って部屋の外へ向かう。
俺も後をついていき、二人で部屋を出ると、キエラさんがリビングにいた。
改めて考えると、キエラさんに俺に任せろとリナの部屋へ向かい、結果リナとカップルになった。
そう考えると、お父さんであるキエラさんに会うのが何となく気まずい。
そんな事を考えていると、リナがキエラさんに話しかける。
《お父さん、心配かけてごめんね、でももう大丈夫、私はリョウの側にいるって決めたから。》
それを聞いたキエラさんは驚愕した様子だったが、リナの笑顔と覚悟を見ると、笑顔になり俺とリナを応援してくれた。
「リナにも、ようやく側にいたい人ができたんだね、リョウくんこれからもリナをよろしく頼むよ。」
俺とリナはキエラさんに頷くと、リナの空腹を満たすため、道具屋に向かった。
そこでリナは、今日の狩りで手に入れた魔法石9個をバッグから取り出して店主さんに渡す。
店主さんは、秤のような物を出すと受け取った魔法石の重さを測り、それに応じた硬貨をくれた。
その硬貨で、リンゴのような果物と梨のような果物を一つずつ買った。
それを持って、訓練所に来た俺達は木で作られたベンチに座って、俺はリンゴのような果物を、リナは梨のような果物をそれぞれ手に取り食べ始める。
ムード等は欠片も無いが、リナと一緒に食べることが出来るだけで幸せな気持ちになるので、些細な事は気にしない事にする。
そうして食べたリンゴのような果物はストリーというらしく、味は意外にもイチゴのようなもので、食感はしっかりしていて食べごたえがあり、強い甘みとほのかな酸味が口の中に広がって、すっきりとした香りが鼻から抜けていく。
俺の食べる様子を見ていたリナが、とても嬉しそうに話す。
《リョウってほんとに美味しそうに食べるよね、見てるこっちも幸せな気持ちになって、美味しく食べられるよ。》
すごく良い笑顔でそんな事を言うものだから、俺は何て返して良いかわからなくなってしまったのだが、ここは素直に思ったことを言うことにした。
「きっとそれは、リナと一緒に食べれるからかな、リナと一緒だと、安心するし幸せな気持ちになるかね。」
そういうと、リナは照れてしまったらしく黙々と梨のような果物を食べ始めた。
それがとても可愛くて見ているだけで幸せな気持ちになる。
俺もストリーを食べて、お互いに食べ終わった所で、俺はさっきの道具屋でのやり取りについて聞いた。
「この世界のお金ってどうなってるの?」
さっき、魔法石と交換に硬貨を貰っていたから、物々交換だけが主流ではないと思い聞いてみると、リナが答えてくれる。
《この世界では、一部の種族を除いて、人族と関わりのある種族のほとんどがこの硬貨を使っていて、硬貨の種類は、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白銀貨の7種類があって、それぞれ10枚で1つ上の硬貨と同じ価値になるの。》
つまり、俺の世界でいう、1、10、100、1000、10000、100000、1000000円と同じだ。
そして、魔法石の相場は魔法石の重さ×銅貨になるらしく、今回渡した魔法石では、銅貨120枚になった。
そこから40枚使って果物を買った。
エフォルでは、大銅貨5枚もあれば過ごしていけるようだが、学園都市オーノス等の大きな町に行くと、物価も高くなるらしいので、これから貯金もしていかないといけないと思い、決意を新たにした。
残った硬貨はリナがバッグに入れていた。
このバッグも魔具のようでリナが教えてくれた。
《このバッグは、ゲートという魔法がかかっていて、この中にはいくらでも荷物を入れられて、出し入れも簡単にできるんだ。》
それを聞いた俺は、このバッグをどこで手に入れられるのか聞いてみると、リナは困った表情で俺に教えてくれた。
《このバッグは、オーノスで作られてる物で、オーダーメイドなので、機能は一緒でも同じものは作れないですし、作るには学園に入学するか、オーノスの鍛冶屋に金貨5枚払うかしかないので、今のリョウには買えないと思う。》
それを聞いた俺は落胆したが、リナが学園に戻るのはもう少しあとになるらしいので、しばらくはリナと一緒に狩りに出れば荷物の心配はいらないだろう。
話しが終わり、俺達がいるのは訓練所だったのを思いだし、リナのスランプ回復のためにも何かしないといけないなと考え、リナに提案してみる。
「リナ、せっかく修練場にいることだし、俺のわかる限りで魔力の操作を教えようか?」
リナは、さっきまでの嫉妬の感情を思い出したようで表情が曇っていたが、俺の全てを受け止めるという言葉を思い出したのか、笑顔に変わり頷いた。
「まず、リナは魔力をどんな物だと思ってる?」
リナが魔力を自由に扱えないのは、俺の考えられる可能性としては、スキルを覚えていないから、もしくは、俺の魔力の流れが特殊だからかのどちらかだろう。
《魔力は、身体の中に魔力を出す何かがあって、そこから詠唱を唱えるとどのくらい魔力を取り出すのかを決めて、取り出した魔力を使って魔法を発動させるものって感じかな。》
それを聞いて俺は疑問に思った。
魔法の発動の仕方は俺が真似たのもあるが、全く同じだ。
俺が(クリスタル)の魔法の質を上げて、大きな魔法石を作ろうとしたのと同じものだ。
ただ、身体の中にある魔力を出す何か、という表現に違和感を感じる。
俺のように魔力流れがあるというような漠然なイメージじゃないと、血液を通じて魔力を流すなんてできないだろう。
だが、リナの言うように魔力を出す何かと言われてしまうと、イメージするのは未知の器官だろう。
魔力を使うにも魔法を使うにも、必要なのはイメージだ。
そのイメージがずれてしまったら、思い通りの結果を導き出せない。
とりあえず、俺の推測が正しいか試してみよう。
「リナ、まず魔力を出す何かというイメージを変えよう、魔力は気体でそれが身体のどこかに集まってるんだ、それを感知できたら血液を通じて魔力を動かして放出する、やってみて?」
リナは俺の話しを聞いて驚いたようだった。
それはそうだろう、今まで教わってきた知識は間違っていると言われたようなものだった。
ただ、俺の事を全面的に信頼してくれているみたいで、突拍子も無いことを言った俺のやり方を試してくれるみたいだ。
目をつぶって改めて魔力の流れを感知するリナ、最初はいつも感じてる魔力と違うようで、少し戸惑っていたみたいだったが、何となくコツを掴んだのだろうか、さっきまでの難しい表情が消えて、集中力が増している。
そうして、手のひらに見えない何かが出現した。
リナも魔力をそのまま出すことに成功したみたいだ。
リナは自分でもまだ理解が追い付かないのか、呆然と自分の手のひらを見ていたが、やっと状況を理解したのか、涙を流しながら喜んでいた。
《リョウ!出来たよ!!私にも魔力を操れたよ!!》
そういって俺に飛びついてきた。
突然の事で驚いたが、本人にとっては明確な自分の成長を感じたのは久々でよっぽど嬉しかったのだろう。
ただ、この体勢は俺の理性を全力で揺さぶって来るので、中々厳しかったが何とか抑えこみリナに声をかける。
「だから言ったろリナ、今までのリナの努力は着実にリナの経験として積み重なっていたし、リナの可能性はまだまだ広がってるんだよ。」
それを聞いたリナは俺の腕の中でまた泣き出していたが、俺はそんなリナの頭を撫でながら泣き止むのを待った。
泣き止んだリナは、ものすごく恥ずかしそうにしていたが、そんな様子も可愛くて自然と笑顔になった。
ここまで上手くいくとは思わなかったが、これでリナも俺を嫉妬する気持ちも減るだろう。
元々スランプ期間に、俺が色んな事をできるようになったのが原因だったのだから、スランプ期間じゃなくなれば、そんな事態にはならないだろう。
こうして、長かったスランプ期間を抜けたリナが憑き物が落ちたように、最高の笑顔で俺に感謝してきた。
《リョウ、本当にありがとう、今日リョウが私を受けとめて、励ましてくれたおかげで成長できたから!》
俺は感謝されるほどの事はしてないけどなと思いつつ、素直にリナの感謝を受けとった。
「リナの力になるって決めたからな、このぐらいはいくらでも頼ってくれよ!」
そういって俺らはお互いに笑い合って、家へと帰る。
そうして、家へと着いた俺達は今日の疲れを癒すため、早めに寝る事にした。
お互いに寝る前の挨拶を済ませて、それぞれの部屋へ向かう。
部屋に着いた所で、俺はジャージ以外の装備を外し、今まで見れなかったステータスを確認することにした。
ステータス
天神 凌
HP 450/450
MP 200/200
装備 (ジャージ上下)
スキル (考察) (浄化) (登り降り) (剣技) (拳技) (精神耐性) (異世界言語理解) (魔力操作) (魔法)
スキル(魔力操作):魔力を自在に操ることができる。
スキル(魔法):詠唱を唱える事で魔力を使い無から有を作り出す。
HPとMPが最後に見たときよりもかなり増えている。
このままいくと、魔力の方が伸びが早くなりいつか体力を追い越しそうだ。
そんな事にならないために、日々身体を鍛え続けようと思った。
それに、新しく手にいれたスキルはどちらも想像通りだったが、魔法に関して言えばかなり自由だなと思った。
無から有を作り出すことが出来るということは、なれれば自分オリジナルの魔法を作ることも夢じゃないかもしれない。
そうして、ステータスの確認を終えた俺は、昨日の詠唱を思いだし唱えてみた。
「我は求める、ケガレを払う力、クリア!」
身体を淡い光が包み、心地良い気分になって、全身綺麗になった。
思ったよりも自然に魔法が発動して驚いたが、使えて不利はないので、これからも寝る前には使おうと決めて、ベッドに入った。
思ったよりも疲れていたようで、すぐに眠くなってきて意識を飛ばした。
リナとカップルになったり、(魔法)を覚えたりと濃い1日だったが、今日も何とか1日を無事に過ごせた。
こうして異世界2日目が終わった。
今日中にもう1回更新します。
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