109.学園散策
リョウ視点です。
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いつものアラーム音により目を覚ますと、部屋には既に誰もいなかった。
珍しい事にマドルもどこかに出掛けているようで、全員の反応を探してみると、エルンとマドルは町に、リナ、ルイ、スート、リンダは図書館に、フラン、サクラ、ソルンは別校舎の体育館にいた。
今日はリンダの自由日なので、図書館を訪ねようかとも思ったが、リンダのいつものテンションなら、図書館で会ってしまうと、周りに人がいた場合は迷惑をかけてしまう可能性が高いため、俺はとりあえず目を覚ましながら、分身達の反応を探る。
分身達は思ったよりも移動しているようで、見たことのない景色が広がっていた。
その景色は様々で、高い山々の並ぶ山脈から荒野、どこまでも広がっていそうな森、グリーンフィールドのような草原とモンスターがいることを除けば、散歩するのも楽しそうだと思える地形だった。
ただ、この辺のモンスターで相手になりそうなものはいなくて、目に入るモンスター達はどれも戦闘の得意ではない分身達ですら容易に仕留められるくらいの力量しかない。
そんなモンスター達は倒しても仕方ないし、その為だけに転移して素材回収するのも面倒なので、襲われない限りは放っておくことにした。
分身達が街を見つけるまではしばらくの間は進展もないなと思い、ようやく目が覚めた俺は今までやろうと思いながらも試していなかった学園内の実力者散策をすることにした。
以前よりも魔力による探知能力が上がっているため、武術大会予選も近づいてきた事もあり、時期的にも丁度良いだろうと思う。
早速部屋から出て、魔力を周囲に撒きながら歩いていく。
とはいえ、外から見るとまるで城のように見えるエジマリフ魔導学園だけあってその中はかなり広いため、意外と重労働のはずなのだが、魔力量に不安は感じないので問題はないだろう。
そんな感じで、本当に散歩のような気分で校内で強そうな人物探しを始める。
だが、探し始めて数分で俺は呆れを通り越して、溜め息が出てしまう。
魔力探知で生徒や先生達の実力を探っていくのだが、金クラスのメンバー達はおろか、アベルやミロールにさえ及ばないような奴等がほとんどだ。
たまにその中でも実力者と思えるような反応を示す人物もいるが、それでも精々クラス内トーナメントで運次第で1勝出来るか出来ないか程度でしかない。
こうなると、武術大会予選は俺達の独壇場、更にいえば金クラスの印象改善の為の試合でしかなくなりそうで、実力者との戦闘を楽しみにしていた俺にとっては残念以外の言葉がでない。
まあ、リナやルイ、イルデやドーラもいることだし、完全に楽しめないという訳ではないのが唯一の救いと思うしかない。
そうして、また数十分俺の魔力を撒きながら歩いて、ほぼ学園全域の探索が終わった結果、イルデやドーラ達以外にめぼしい反応を示した相手はいなかった。
まあ、戦いになれば学べることもあるだろうと自分を慰めつつ、校内散策を続ける。
すると、俺の前からがっちりした身体を持つ2メートルくらいの獣人族と魔人族がやってきて俺の歩く道を遮るようにしてくる。
一応、面倒なので避けようとするが、それに合わせてそいつらも進路を変えてくる。
俺は心底面倒だと思いながらも2人組に話しかける。
「俺に何か用が?」
「はあ? お前が俺達の歩く道を妨害してきたんだろう?」
「大人しく俺達のサンドバッグになるなら、今日だけで許してやるよ。」
「はあ、2人組で並んで歩いてる時点でお前らの方が邪魔だろ、それもわからない頭の奴と会話するだけ無駄か、じゃあ俺は元来た道戻るから、じゃあな、低脳な2人組さん。」
そう言って俺が来た道を引き返していると、後ろから大声をあげながらこちらへやってくる2人組。
「てめえ、金クラスの分際で舐めた口聞いてんじゃねーよ!」
「そんなにボコられたいならやってやるよ!」
そう言って俺に殴りかかろうとしてくる2人組。
そして、それを眺めながら俺は溜め息をつくしかなかった。
まず、殴りかかろうにも動きが遅すぎて話にならないし、これは会った時から解っていたことだが、見せかけだけの身体で魔力、生命力も低く、身体強化もできない。
そんな相手にどうすれば戦おうという気になれというのか。
そんな事を考えながら、俺はどうやってこの場を切り抜けようかと考える。
ここまで頭に血が昇っていると、魔力による脅しもできないだろう。
というか、こんなに魔力を辺りにばらまきながら歩いているのに、それを感じられない時点で俺にとっては面倒なことこの上ない。
とりあえず、俺から手を出しても面倒なことになりそうだし、身体強化して殴られても大丈夫にする。
それに加えて奴等が攻撃を加えてくる部分を予想して魔力と生命力を混ぜて硬質化させる。
そうなると当然
「いてぇーーー!!!」
「何しやがったてめえ!!!」
そう言って腕を抑えながら悶絶している2人組。
いや、予想通りなんだが、弱すぎて憐れに思えてきた。
一応、加減はしておいたのだけど、それでもあれだけダメージが入るのは予想外だった。
「いや、お前らが勝手に殴りかかってきて自滅しただけだろう? あんまり実力差を読めないでいると死ぬぞ? こんな風にな。」
俺は自然と、そうごく自然にこの2人の懐に入り、首に手を軽く添える。
これで俺が力をいれればこの2人は喉を破壊され、少しすれば死ぬことになるだろう。
2人もそれがわかったらしく、動きが止まる。
そしてみるみるうちに表情が青くなり、自分がどんな無謀な事をしていたのか気付いたようだった。
俺はとりあえず満足し、この2人組から離れる。
「まあ、こういうことだ、信じられないのかもしれないが、金クラスはお前ら程度の力量なら俺と同じように瞬殺できる実力者が揃ってる、あんま前評判を信じない事をおすすめする。」
そう言って俺はもうこいつらに興味が無くなったため、視界から消し歩いていく。
ああいう奴らを少しでも減らしてくのも楽しそうだなと考えながら。
次回更新は8/14です。
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