101.訓練のあと
リョウ視点です。
ようやくリナ達から解放された俺は、後日に各自埋め合わせをすることが決定した。
リナとのキスの件もあるし、俺へのハードルがどんどん上がっているのは気のせいではないだろう。
その腹いせではないが、見物に来たアベル達に文句をいう。
「お前ら、俺の事を見捨てただろ!?、覚悟は出来てるんだろうな?、おい、そこの目を反らした王様、俺は容赦しないからな。」
俺の一言で冷や汗を浮かべているアベル達を見ると、ようやく満足してきたので、これ以上弄るのは止めることにした。
多分、これ以上突っ込むと、俺への被害が甚大になるだろうから。
「さて、そう簡単に許す気はないが、特別にアベル達3人で掛かってきて、俺に1度でも攻撃を当てたら許してやる。」
「リョウよ、さすがに儂達を舐めすぎじゃないかのう?、いくらなんでも一撃当てるだけならいつでも出来るぞ?」
「ああ、安心しろ、俺一人で戦うが、俺に触れることすら出来ないのだから心配要らない。」
俺の言い方に文句を言いたそうにしていたが、リナ達はさっきの俺の動きでわかっているのか、特に何も言わずに成り行きを見ていた。
「そこまで挑発されたら受けないわけにはいかないよね、父上?」
「当然じゃ、連携ミスをするでないぞ。」
《任せてください、お父様、それでは私が先陣をきりますね!》
そう言ってミロールはいち早く矢を放つ準備を始める。
今回はコイントスも面倒なので、アベル達に先制を譲ることにした。
そうして突っ込んでくるアベル、バランスを取るロード、後方から支援するミロール、普段ならバランスも良いし、 ロードの実力があれば一撃とは言わず、止めまで刺せただろう。
だが、俺は朝のこの短い間に数年を遥かに超えるくらいの濃密な訓練をこなした。
そんな俺から見ればこの程度は子供同士のチャンバラと大差なかった。
迫ってくるミロールの矢を受け流し、アベルの攻撃をを受け止め、隙をついたロードの攻撃を受け流し、アベルとロードをミロールへと飛ばし、追加攻撃を防ぎながら、1ヶ所に集める。
ここまで流れるようにこなした俺には、次の攻撃に移れる余裕すらあった。
「マスターオブウエポン!」
訓練を経て、最適化されたマスターオブウエポンは、完全とまではいかないが、今までよりも遥かに扱いやすく、俺の思い通りに力を引き出せた。
その結果、1ヶ所に固まっていたアベル達は軽く吹き飛ばされて意識を失った。
あまりにも鮮やかかつ、短時間でアベル達を沈めた俺に再び沈黙と、信じられないと言った様子の視線が送られる。
それは、リナ達も同様であったが、唯一リナ達が違ったのは、俺の強さに尊敬の念を混ぜていたことか。
とはいえ、このまま放置するわけにもいかないため、魔力、生命力をアベル達に補充する。
すると、数秒も経たず3人は目を覚ました。
「さて、あっさりと負けたわけだが言いたい事はあるか?」
「さっきのは本当にごめんなさい、それと僕たちの兵士を鍛えてくれないか?」
「構わないが、良いのかロード?」
「ああ、儂からもよろしく頼む、リョウの実力の上がりかたは尋常ではない、その術の一部でも盗めれば、それは戦争が起きても戦況をひっくり返せる可能性を秘めておる。」
「何となく腑に落ちないが、まあ良いか、兵士達の訓練は任せろ。」
「ありがとう、リョウ!、それと悪いんだけど、1度屋敷まで送ってくれないかな?、急いで用意してきたから、色々やることもあるんだ。」
「ああ、わかった、ついでに訓練もやらせてもらうよ、場所はアベルの屋敷の中庭でいいか?」
「いいけど、大丈夫なの?、訓練で怪我人は出したくないんだけど。」
「それは大丈夫だ、体育館の身体ダメージ軽減のシステムはわかった、だから問題はなく向こうでも出来るよ。」
「それなら良かった、じゃあお願いできるかな?」
「ああ、じゃあリナ達には悪いが、少し顔を出してくる、そんな恐い顔をしないでくれ!?、絶対埋め合わせするから!!」
リナ達から向けられた恐ろしく冷たい視線に耐えられず、慌ててフォローした。
まあ、問題を後回しにしただけなのだが。
「転移、アベル邸!」
結局、渋々納得してくれたリナ達に安心した俺は、アベル達を屋敷へと送っていった。
次回更新は8/6です。
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