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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第2章 エジマリフ魔導学園編
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99.リョウの訓練

リナ視点です。

リョウがエルンと歩いて入ってきたのは見ていた。

訓練の途中で、朝起きた時既に姿が無かった2人だったが、リンクイヤーでいる場所はわかっているし、屋上にあの時間にいたのだから、きっと朝日でも見ていたのだと思う。

今日がエルン以外の誰かの自由日だったら、私も何かしらのアクションを起こしたのかもしれなかったけど、今日の自由日はエルンだったから特に気にしていなかった。


案の定、日の出を少し過ぎた時間くらいにリョウ達は体育館へとやってきて、それぞれ別々に訓練していた。

そう、そこまではいつも通りの光景だった。

けれど、そこからは私がいつも見ている光景とはかけ離れたものだった。

始めは、リョウが今まで使っていた技術の再確認といった具合だったけど、段々とその動きを洗練させていっていた。

それだけなら、割とリョウの戦闘を見ていれば見られる光景だったのだけど、今回のはそれとも大きく違っていた。

上手く表現ができないけど、集中力というか、そういうものがいつもよりも深い所まで沈んでいて、脇目もふらず訓練している感じ。

その影響で動きを洗練させる速度が凄まじくて、それに合わせてどんどん速く速く、どこまでも速くなっていって、遂に目でも追えない速度になっていた。

私はこの目で追えないこの動きをしっかりと目に焼き付ける。

きっと、リョウのように映像でもう一度見ようと思っても、このままでは何をしているのかわからないと思う。

けど、リョウは自分の技術を隠すことをしない。

それよりもむしろ、自分の技術は積極的に教えてくれる。

リョウの全てがわかる訳ではないけど、それはきっと私達に少しでも強くなってほしいからなんだっていうのは、何となくわかる。

だから、このあとに、リョウがやっていた事を聞いて、映像を流して理解するためだ。

ただ、あれはあくまで自分の覚えている物をそのまま写し出す物だし、そこに自分の考えが入ってしまえば、リョウのように記憶力に優れてない私、ううん、私たちじゃ正確に再現できないと思う。

それでも、この動きの少しでも真似ることが出来るなら、今よりも実力は数段上がると思う。

そういう思惑もあって、私達は今までにないくらいの集中力でリョウを見ていた。

それは、他の金クラスのメンバーも同じなようで、誰一人としてリョウを見ていない者はいなかった。

そして、リョウ以外に動いている者もいなかった。

その中で、サクラだけはこの経験を逃したらまずいと察したらしく、すぐにどこかへ転移していった。

まあ、どこに飛んだのかは予想ができたけど。

そうして、数十秒後、変装したアベル、ミロール、ロードを連れてきた。

そして、3人は突然の事態に困惑していたようだったが、リョウを見て、いや、リョウと認識できたかはわからないけれど、リョウの方を見て、動きを止めた。

そして、サクラの連れてきた理由を何となく感じ取ったようで、食い入るようにリョウの動きを見ていた。


こんなに状況が変わっているのに、全くこちらに気づく気配のないリョウというのは、私にとっても初めて見る光景だった。

この世界にやってきたリョウと1番最初に知り合ったのは私だけど、それだけ一緒にいた私でも、リョウがこれほど周りも気にせず何かに没頭しているのは見たことがなかった。

リョウはいつも余裕たっぷりで、それこそ、私達以上に私達の事をわかっているんじゃないかと思うくらいに、常に私達の事を見てくれていた。

そんなリョウが、自分の事だけに集中している。

それこそ、私達の事を考えているいつもの余裕を全て捨てて。

きっと、あの訓練を終えたあとのリョウは今までとは比べ物にならないくらいの実力をつけていると思う。

それは凄く嬉しいことで、多分皆もそんなリョウを見てやる気に満ち溢れていると思う。


それでも、それだけ急に、それこそ私達ですら目に入らないような集中力で周りを引き離してしまったら、リョウが孤独になってしまうんじゃないかという不安が私を襲ってくる。

それは1度考えてしまったら、もう頭から離れる事はなかった。

不安で不安で仕方なくなり、今すぐリョウに駆け寄りたかった。

けれど、リョウのあの訓練に割ってはいるのは、私の実力では不可能だった。

だから、早くこの訓練が終わるようにと祈る。

つい先程までとは全く違った心境に自分でも驚くけど、今はそんな事はどうでもよかった。

ただ、ひたすらリョウの事が心配だった。


そんな私の思いが通じたのかはわからないが、リョウが訓練を終える。

ほんとに何気なくいつも通りにホッと一息ついたという日常の動作の中なのに、私はリョウに近付くのを一瞬躊躇った。

そのくらい、リョウに隙が無さすぎた。

それは一瞬、けれどその一瞬で理解してしまった、リョウとの圧倒的な実力差、今までも実力差はあったけれど、それとは比べ物にならない、まるで道端の石ころと丁寧に磨かれた宝石の価値くらいの差、私は知らない内に泣いていたようで、それに気付いたのは、リョウに抱きついたあとだった。


「お、おい、リナ?、どうしたんだよ?」


リョウに抱き寄せられながらも、さっき感じてしまった不安を拭いきれなくて、泣き続けてしまう私。

そんな私をリョウは励ますように、というか優しく、本当に優しく、それでも優しさの中に強い意思を込めて、私の頭を撫でてくれた。


「リナが何に怯えてるのかはわからないけど、例えどんな状況になっても、俺はリナを、いや、リナ達を置いていったりはしないから、安心しなよ。」


私の欲しい言葉を的確にくれたリョウ。

その一言は私の心にスーッと染み込んできて、さっきまでの不安を全て洗い流していく。

涙は止まらない。

けれど私は構わずに泣き続けた。

だって、その涙はもう、不安からくるものじゃなくなっていたから。


次回更新は8/4です。


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