98.早朝の屋上
リョウ視点です。
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頭の中で鳴り響くアラームを念じることで止め、ゆっくりと起き上がる。
まだ誰も起きていない、いや、エルン以外は誰も起きていない状態で目を覚ました俺は、ボーッとしながらも、リンクイヤーを使ってエルンの居場所を探す。
すると、学園の屋上にいるのがわかった。
何をしているのか気になったので、俺はエルンの魔力を頼りに転移する。
「転移、エルン!」
そうして俺が屋上にいるエルンの元へと転移で向かうと、そこには天使族特有の純白の翼を大きく広げ、まだ太陽が昇っておらず、うっすらと青みがかってきているだけで星が輝く空を眺めているエルンがいた。
その様子は、エルン自身が優れた容姿を持ち、天使族という珍しい種族な事もあり、端から見れば絵画のようだった。
これで、太陽でも差してこようものならそれこそ女神という言葉が相応しいくらい神々しい姿が見れただろう。
そんな感じで俺がエルンに見とれていると、エルンが俺に気づいたようで、こちらを見て微笑んできた。
『マスターか、ちょっと早く目が覚めたから、空を見ていた、天界も人間界も不思議な事に空は同じように青く、同じ星が輝いている、だからこそ天界が懐かしくてな、ついつい見入ってしまった。』
「そ、そうなのか、久々にエルンの翼を見たが、相変わらず綺麗だな。」
『ふふ、そう言ってもらえるのはやはり嬉しいものだな、せっかくだ、私の羽に触ってみるか?』
「いいのか?、じゃあお言葉に甘えさせてもらう。」
そうして、差し出された羽に触ると、その感触はまるで綿のように柔らかく、ふわふわでいつまでも触っていたいほど心地よい感触だった。
しかも、かなり暖かくまだ春半ばぐらいの朝なので、少し肌寒いくらいの気温なのだが、この羽に包まれたら暖かいだろうなと考えてしまうくらいだった。
「凄い良い肌触りだな、これで布団とか作ったら最高に気持ち良さそうだ。」
『そうだろうな、とはいえ羽も無限に生えるわけではないからな、そう易々と渡すわけにもいかないんだ、すまないなマスター。』
「いや、そんな贅沢は言わないさ、こうして触れただけでも幸せな気分になったしな、さて、エルンはこのあとどうするんだ?、もう少しすれば日も昇って来ると思うけど。」
『そうだな、せっかくだ、私は日の出を見て行こうと思う。』
「じゃあ、俺も一緒に見ていくかな、せっかく早起きしたんだし。」
こうして俺とエルンは朝陽が昇るのも2人で眺めてから、体育館へと行くことにした。
想像通り、朝陽に照らされたエルンは本物の女神のように綺麗だった。
何となく綺麗な景色を見たあとだったので、その余韻に浸りたかった俺とエルンは、転移で体育館に向かうのではなく、徒歩で向かう。
もちろん、今のエルンは既に羽をしまっているため、普通の美人になっている。
とはいえ、エルンはその辺にいる美人とは比べ物にならないくらいの美人なのだが。
そんなエルンと普通に歩いていれば、馬鹿な奴等に絡まれるのは目に見えている。
この学園には良い奴もいるのだが、どうしようもないような奴も多いのが問題だ。
まあ、武術大会の予選が始まれば、俺達に絡んでくる馬鹿は減るだろうけどな。
そんな事を考えながら、人避けの魔力をばらまきながら歩いていく。
おかげで、余計なやつに絡まれることもなく別校舎の体育館へと着いた。
体育館では既にリナ達が起きてきて訓練を始めていた。
俺とエルンもその辺は予想できていたため、どうするか迷っていた。
このまま模擬戦を行うか、それとも個人個人で訓練するか。
だが、さっきの景色を楽しんだ後なのもあり、すぐさま模擬戦のような殺伐とした空気にもなれなかったため、結局は別々に訓練することにした。
こうして、落ち着いて訓練するのも久しぶりだなと思いながら、今までの戦いに使ってきた技とも魔法とも言えないような技術の確認をすることにした。
身体強化から始まり、ウエイトマジック、アンリミテッドマジック、マスターオブウエポン。
普段から使ってはいるが、改めて見直してみると以前よりも力を込めやすかったり、以前までのやり方よりも別のやり方の方が色々と使い勝手が良くなっていたりと、細かい所が俺の実力とともに便利になっていた。
それを改めてきちんと見直し、それにともない動きかたも変えていく。
まあ、マスターオブウエポンだけは最近覚えたばかりなので、それほど改良する所もなかったが。
こうした改良はおそらく僅かな変化しかないのだろうけど、この僅かな差が戦いの勝敗を決める場合も十分にある。
その為、改良した技術を1つ1つ試していきながら、今までと使い勝手の違うところを確認していく。
こうやって改めて使ってみると、大分感覚で使っていたのがよくわかる。
明らかにいつもよりも上手く扱える。
これなら、スートやサクラにも遅れをとらないかもしれない。
そう思うと、自然と訓練に没頭していく。
それこそ、(並列思考)を全開に使って、自分の動きを最適化していくように。
今回は、どの武器でも基本の動きとなる武器なしでの動きを重点的に磨くことにした。
改めて見直すことで、どの武器を使ったときでも、動きの質を上げるためだ。
そうしてしばらく訓練していると、いつもよりも身体の動きが良い事に気づく。
それどころか、周囲の時間すらも遅く感じる。
この経験は今までにもあったが、その時よりも明らかに時間の流れが遅い。
だが、それは今の俺には丁度良かった。
ひたすら自分の動きをより良い物に変えていく。
それに全神経を注ぐ。
周りにいるリナ達が俺の動きを見て驚いているのも気づかないほどの集中力で。
更新遅れてすいません。
次回更新は8/3です。
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