95.武器の価値
リョウ視点です。
俺達がアベル邸へと転移してくると、見張りの兵士達が警戒し始める。
そうして、俺の事を覚えていたらしい兵士達が混乱した様子を見せた。
「リョウ殿でしたか、屋敷に何か御用ですか?、アベル王子とミロール王女は学園に行っているので不在ですが。」
俺は兵士達の言葉を聞いて疑問に思い、アベルとミロールを見ると、2人も疑問の表情を浮かべていた。
そこで俺はスタイルチェンジリングを渡していたのを思い出した。
「ああ、悪い、アベルとミロールには問題を起こさないように変装してもらったんだ、2人ともスタイルチェンジリングを外してくれ。」
俺の言葉で思い出したかのように、2人はスタイルチェンジリングを外す。
すると、変装した姿から何時ものアベルとミロールへと姿を変える。
すると、兵士達が驚いて声も出せないでいた。
そんな兵士達を見て、アベルとミロールは笑いながら声をかける。
「ごめんねみんな、あまりにも違和感が無かったから、このリングを着けてるのを忘れていたんだよ、次からは気を付けるよ。」
《私の方も失念していました、でも、これからもリョウに送迎はしてもらうので、ご心配なさらずお願いします。》
アベルとミロールがそう言うと、ようやく兵士達は我に返り、2人の声に反応する。
「お二方ともおかえりなさい、なるほど、リョウ殿の発明でしたか、あれほどの完成度で変装されてしまうとわかりませんね、変装の件と送迎の件は兵達全員に周知させますので。」
そう言って俺たちを屋敷へ通す兵士達。
その後、この前食事をした部屋へと案内され、料理が出来るのを待っていた。
すると、アベル達の帰りに気づいたロードがやってきた。
「おお、アベルにミロール、そしてリョウ達も来たのか、して学園はどうだった?」
「父上ただいま帰りました、今日はリョウ達のクラスメイト達と訓練をして、ミロールと模擬戦をしました、学園の体育館は素晴らしい建物ですね、本気で攻撃をしても身体へのダメージは無いですし。」
「ほう、ミロールと模擬戦をしたのか、どちらが勝ったのだ?」
《残念ながら引き分けでした、けれどお互いほぼ限界まで体力や魔力、生命力を使った全力の戦いでしたので、良い経験ができました。》
「そうかそうか、非常に有意義な時間を過ごせたようだな、しかし、武器は何を使ったのだ?、言ってはなんだが、2人とも戦いはしたことないだろう?、嗜み程度に剣を使ったことはあるだろうが。」
「そうでした、父上、僕とミロールの武器を見てください、これを使って戦ったことで僕達のような者でも模擬戦と呼べるような戦いが出来ました。」
そうして2人は俺が作った剣と弓をロードへと渡す。
初めは興味津々といった様子で見ていたロードだったが、俺の剣と弓を受け取ると、途端に表情を険しい物に変える。
「アベル、ミロール、この武器をどこで手に入れた?、こんな質の武器は見たことがない、だがこんな物が世の中に流れてしまえば、武器の奪い合いが起きて戦争になるかもしれんぞ?」
《ふふふ、お父様、それを作った人物はお父様も知っている方ですよ?、それにその注意は既にお兄様と私が行いました、それをわからない方ではないので、その心配は無いと思います。》
「なに?、儂の知る人物だと?、儂の知り合いにも鍛冶の道に精通している者はいるが、これほどの物を作れはしなかったはずだが、、、いや、待て、もしやこれはリョウが作ったのか?」
俺の方を見ながら尋ねるロードに俺は頷き、作った経緯を話す。
「確かに俺が作った、だがこの剣と弓はアベルとミロールにしか使えないようになっている、それにアベルはいずれ王になり、ミロールも王女として過ごしていくだろう?、その時に自衛が出来るのと出来ないのとでは生存できるかどうかが大きく変わる、それに、今日学園で2人を見ていたが、戦闘のセンスは高い、これから俺達と学園生活を送れば、その実力は大きく上がるはずだ、その手助けの為に俺からプレゼントしたのがこの剣と弓だ、ロードが許可しないならこの剣と弓は俺が処分するが、どうする?」
「ふむ、なるほどのう、確かにアベルもミロールも兵を率いていくこともあるだろう、その時にこの武器があれば、おそらく生き残れるのだろうな、リョウよ、この武器と同等の物を儂にも作れるか?、いざという時には対抗手段も必要だろう?」
「ああ、出来るが大丈夫か?、あくまで俺は一学生でしかない、友達としてアベルやミロールの装備を整えるのは問題ないだろうが、王の装備を整えるには荷が重い気がするが。」
「それこそ問題はないな、リョウの装備の品質は儂でも見たことのないような物だ、それに自国にいる儂の知り合いに見せておきたい。」
「そこまで言ってくれるなら用意する、ちょっと待っててくれ。」
そうして俺はいつも通りに道具生成を行う。
ロードがどんな武器を使うかわからなかったのだが、何となく王=剣というイメージだったのと、この世界でメジャーな武器であるという理由で剣を作ることにした。
込めた魔力は、自動修復のリペア、身体を全盛期と同じくらいに動かすターニング、自己回復能力を上げるケアー、戦う相手を威圧するプレッシャー、戦う味方の能力を底上げするチアリー。
そして、後継を導く意志を込める。
こうして完成した剣はアベルの剣よりも存在感、豪華さ、力強さの全てにおいて上回る質の物が生まれ、王の剣として素晴らしい出来だった。
その剣をロードに渡すと、ロードの表情が驚愕に包まれる。
「これは!?、身体が軽い、いや、全盛期の肉体と同じように動かせるのか、それに悩まされていた全身の痛みが無くなっている、これは凄まじい性能だな、どちらかと言えば支援系統の能力が付いているのか。」
「へえ、付けた能力がわかるのはすごいな、さすが一国の王だな。」
「伊達に長い間いきていないからのう、それにしてもこれで儂ももう一度戦場に立てるわけか、リョウよ、こんな素晴らしい物を用意してくれて感謝する、これは良い土産話が出来た。」
「それはよかった、そんなに戦場に立ちたかったのか?」
「そりゃのう、国の頂点に立つものが戦場に出られないというのは様々な問題を生み出すからのう、もし次に戦いが起こった時には、アベルに手柄を全て譲ろうと思っていたくらいじゃ、だが、これがあればアベルと共に戦果をあげられそうじゃ、そうすればアベルの王位継承も歓迎されるじゃろう。」
「なるほどな、それなら作った甲斐があった、ということは、ロードは相当な実力者なんだろう?、どうだ?、アベルとミロールの実力を見てみたら。」
「ふむ、それも面白そうじゃのう、しかしどこでやる?、怪我はさせたくないしのう。」
「学園の体育館でどうだ?、まだ料理ができるまで時間がかかるだろう?」
「ふむ、儂は構わぬが、どうじゃ?、二人とも。」
「僕は構いません、父上の実力も知りたいですし。」
《私もリョウやリナ達との訓練の成果を見せたいです。》
「じゃあ決まりだな、兵士達に挨拶して向かおう、それとロード、これは変装用の指輪だ、これを使えばイメージ通りの自分になれる、使ってくれ。」
「ほう、これはまた面白い道具じゃのう、リンクイヤーといい、素晴らしい物を用意するのう。」
「流石にグランバニアの王族が勢揃いしたら問題が起こるのは目に見えているからな、それじゃ行くか。」
こうして俺達は屋敷を警護している兵士達へ断りをいれて、再び学園へと向かった。
次回更新は7/31です。
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