93.2人へのプレゼント
リョウ視点です。
「そうか、アベルが剣でミロールが弓だな?、それじゃちょっと待っててくれ、せっかくだから俺が作る。」
「いいのかい!?、楽しみだよ!」
《リョウの作る武器がどういうのになるのか楽しみですね。》
2人から期待の視線を向けられながら俺は新しい武器を作る。
いつものようにイメージを具現化させて、色んな効果の魔力と意思を込める。
アベルの剣には、率いる味方の力を底上げする王の領域、同格以上の相手と戦う際に全能力が強化される王の威厳、劣勢になると全能力が強化される王の誇り、自身の強化を味方にも与える王の器、そして俺の道具生成の慣れによる物なのか、もうひとつ能力をつけられそうだったので、自動修復のリペアをつけ、全ての者を率いる覚悟と意志を込めて完成させる。
見た目にこだわり、王族として身に付けていてもおかしくないほどの装飾された持ち手と刀身、それでいて剣としての力強さ、存在感を感じさせる輝き、鞘に納まっていても尚存在感を感じるこの剣をアベルへ渡す。
今は感動のあまり声もでないようなので、感想は後で聞くことにする。
次はミロールの弓だ。
アベルの剣と同じようにいくつもの魔力と意志を込める。
狙ったところへ寸分の狂いもなく飛ばせる必中、自在に矢を飛ばす調角、気配を隠す隠密、近距離では体内を破壊する崩壊、自動修復のリペア、それに影から支える意志を込めて完成。
煌びやかでありながらも、持ち主の魅力を最大限に活かす作り、それに加えて武器としての格も保っている弓はミロールに渡ると、見事に絵になるくらいの出来だった。
アベルと違って少しだけ早く立ち直ったミロールがそれでも興奮を隠せない様子で俺に弓について聞いてきた。
《リョウ!、この弓凄すぎです!、私は戦闘については素人ですが、グランバニアの王族でもこんな質の物は見たことも聞いたこともありません!、それくらい凄いものだってわかります!》
「そうだよリョウ!、リョウの道具生成を見てきてはいたけど、こんな装備を作れるなんて夢にも思わなかったよ!、ほんとに僕達がもらっていいのかい!?、言い方は悪いがこれを売りに出せば一代、いや下手をすれば二代か三代は遊んで暮らせるよ?」
「そこまで褒めてもらって嬉しいけど、これはいわゆるオーダーメイドの専用装備みたいな物だから、使用者本人と作成者にしか使えないようになってるから、多分売れないと思うぞ?、それにこれは俺の激励というかまあ、そんな感じのものだから2人に使ってもらったほうが嬉しいかな。」
「ああ!、もちろん使わせてもらうよ!、僕の技量が足りないのか含まれてる能力がわからないんだけど、どんな能力がついてるんだい?」
《私も能力があることはわかるのだけど、詳しいことまでわからないわ、私にも教えてちょうだい?》
「ああ構わないよ、アベルの武器には、、、」
こうして俺は2人の武器に込めた魔力についての説明をおこなった。
俺が込めた魔力の能力を聞いて2人はおろか、リナ達まで驚いていた。
まあ、今までよりもかなり力が込めやすくて良い物が出来たことはわかっていたけど。
「リョウ、これからはむやみやたらと武器を作らないでもらえるかい?、リョウの作る武器は強力すぎる、それこそ下手をすれば戦争が起きたら、その戦況を左右してしまいかねない程に、そしてそれを持つのが僕のような戦闘素人だったとしてもだよ、これはかなりまずい、下手にリョウの名前が広まってしまうと、各国でリョウの取り合いになるかもしれない、だから気を付けてほしい。」
《私も同感です、この武器はもはや神話に出てくる一歩手前の武器と言われても納得してしまうくらいの代物です、リョウ自身やリナ達のためにも迂闊な行動は控えてくださいね。》
「2人がそこまで言うなら相当まずいんだな、安心してくれ、俺だって信用してない赤の他人にそんな労力は割かない、ああ勘違いするなよみんな、俺がクラスのみんなを信用してない訳じゃないからな!、下手に俺が武器を渡してしまうとみんなの成長を阻害してしまうと思ったから渡さなかった、だからもし皆が実力をつけたら作るから、その時は言ってくれ!、まあそう甘くはないけどな!」
俺の言葉に安心する体育館内の全員。
俺も少し言葉の使い方が悪かったな、これからは気を付けていこう。
「それならよかったよ、まあリョウなら大丈夫だと思ってるけどね、とりあえず頭の片隅でおぼえていてくれると嬉しいよ。」
《そうですね、リョウもちゃんと考えているようで安心しました、兄さん、せっかく体育館にいますし、私達で模擬戦をしませんか?、リョウからもらった武器がどんな感覚なのか知りたいし。》
「それは面白そうだね!、僕も丁度リョウの武器を試したいと思ってたんだ、じゃあ早速やろうか。」
こうして、アベルとミロールの模擬戦が急遽開催されることになったため、俺が審判をやることになった。
「ルール説明はいるか?」
「一応お願いしようかな、僕達の認識との違いもあるかもしれないし。」
《私もお願いします、これから訓練するにしても他の方と組むこともあると思いますし。》
「わかった、じゃあ説明するぞ?、まず開始はコイントスでやる、勝利条件は相手を戦闘不能、またそうなるであろう攻撃を当てることだ、その判断は俺がする、だから2人は全力で戦え、ここなら怪我をすることもないしな。」
「なるほどね、ルールはわかった、じゃあリョウよろしく頼むよ。」
《私もルールは理解したわ、じゃあ談笑はここまでにしてやりましょ、リョウ審判はお願いね。》
こうして2人は流石王族と言えるくらいのスピードで意識を切り替えたらしく、いつの間にかさっきまでの和やかな雰囲気はなくなり、緊張感がこちらにまで伝わるくらいになっていった。
準備ができたのがわかった俺は早速コインを弾く。
その音に2人は反応し、コインが落ちるのを見ていた。
その動きに色々言いたいことはあったが、気にしても仕方ない、やがて俺のコインの落ちた瞬間にお互いが動き出す。
こうしてアベルとミロールの模擬戦が始まった。
次回更新は7/29です。
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