91.体育館での訓練
リョウ視点です。
学内探検も兼ねて歩きながら別校舎の体育館に向かう俺達。
今は俺の渡した指輪、スタイルチェンジリングでアベルとミロールが姿を変えている。
アベルは高貴な雰囲気を無くし、どこにでもいそうな少年という見た目になった。
最も、顔立ちは整っているし、立ち振舞いが王族のものなので、不思議な印象の少年になっているのだが。
一方ミロールは誰もが振り返る美人から、クラスで2、3番に位置するであろう顔立ちに代わり、王族としての高貴さは、お淑やかさに変換され、とても戦闘が出来るように見えないような女の子へと変わった。
鏡は流石に無いが、廊下の窓に映る自分達を見て、不思議な物を見るように、同時に新たな自分を楽しむように自分の姿を満足そうに見ていた。
そんな俺達が歩いていれば当然注目を集めるはずだが、そんな事はわかりきっているため、人避けの魔力をばらまいて認識阻害している。
そのおかげで余計な騒ぎにならないで済んでいる。
そして、この学園にもグランバニアから来ている生徒もいるらしいので、偽名を使った方がいいんじゃないかと提案してみたのだが、スタイルチェンジリングで姿を変えているから、態々偽名を名乗らなくても問題はないと本人達に言われたため、このままでいくことになった。
体育館へ着くと、俺にとってはいつも通りの訓練風景だったのだが、アベルとミロールには新鮮だったようで、とても楽しそうに見ていた。
「凄いねリョウ!、噂ではリョウ達のいるクラスは落ちこぼれって聞いたけど、これを見てそう思う人がいるなんてちょっと信じられないな、というか、下手をしたら僕たちの護衛と同じくらいかそれ以上の実力を持っていそうだね。」
《ええ、ほんとに凄いですね、皆さん魔力や生命力を使いこなしていますし、もしこのクラスの皆さんが落ちこぼれなら、私達の護衛も同等の実力でしょうから同じ評価になるでしょうね。》
アベルとミロールは学園に来る前に情報を集めていたらしく、俺達が落ちこぼれと言われているのを知っていたようだ。
最も、それが事実でないことはここにいるみんなを見てすぐにわかったらしいが。
これくらい状況判断が出来るような人物が増えてくれれば俺としてもありがたいんだけどな。
俺にいち早く気付いたのはリナで、それに続いて他のメンバーも俺達に気付いたらしい。
リナ達が俺達の元へ笑顔でやって来るが、アベルとミロールはスタイルチェンジリングで見た目を変えているため、誰かわからないらしく俺に聞いてきた。
《リョウおかえり!、ところで、隣の2人は見覚えがないんだけど、どちら様?》
「ああ、アベルとミロールだよ、流石にあのままじゃ問題になりそうだったから俺がこのリングを作って容姿を変えてもらったんだ。」
《ええー!、この2人ほんとにアベルとミロールなの!?、リョウの作る道具は相変わらず凄いね!、でも2人はどうしてここに?、さっき2人が学園に入学することは聞いたけど。》
「ああ、俺の用意したスタイルチェンジリングは自衛用の機能も付けてあるから、その試しとこの前教えていた魔力と生命力の扱いを教えようと思ってさ。」
《なるほどね!、じゃあミロールは私達が教えても良い?、せっかくだから話もしたいし!》
《リョウ、私からもお願いします!》
「まあ、ミロールが良いなら構わないさ、どっちにしろ俺1人で教えるよりは効率も良いだろうし。」
《ありがとう!、じゃあミロール行こう!》
そう言ってリナがミロールを他のハーレムメンバー達の元へと連れていく。
そうして、和気あいあいとする様子はとても華があった。
しかも、全員容姿が整っているため、とても目の保養になる。
アベルも妹であるミロールが楽しそうにしているのを見て、嬉しそうにしていた。
「やっぱり学園に来たのは正解だったね、屋敷にいるだけじゃミロールのあんな顔は見れないからね。」
「2人でいる時はどうなんだ?、そんなに仲が悪い訳じゃないんだろう?」
「そりゃ僕とミロールの仲は良好だけど、やっぱり同性同士とは違うさ、それに屋敷にいる人達は僕たちに仕えているという感じだから、ああいう風に話ができないし。」
「偉いっていうのはやっぱり窮屈なんだな、この前も聞いてはいたけど、いややめるか、ここにいるときまでそんな事考えてたら疲れるだろうしな、それより俺たちも訓練を始めようか。」
「そうだね、せっかくリョウといるんだし、姿も変えてるんだ、いつもより自由にするよ。」
そうして笑顔になったアベルと共に俺たちも訓練を始めた。
この前は魔力の扱いまで出来ていたので、次は生命力の扱いを教える。
とりあえず、生命力は常に身に纏っている物だというのを映像も使って教え、それを感じとる訓練をしてもらう。
体内の魔力と体外の生命力、似ているようで全然違うこの2つを感じ取れて操れればそれだけで実力は大きく変わる。
見たところ、アベルにしろミロールにしろ、魔力も生命力も量はともかく質はかなり良い。
ここら辺は王族の血も関係しているんだろう。
量の方は使っていれば増えるだろうし、質の方は伸びるがセンスもある。
そう考えればアベルもミロールも恵まれているんだろうな。
そんな事を考えながらアベルが生命力を感じようとする様子を観察する。
考えてみれば、こんな風に基礎の全くない人物を教えるのは中々出来ない経験だ。
大体今まで教えてきたのは、学園で戦いの基礎を学んだりしてきた者達だけだ。
だが、アベルやミロールは多少の心得はあるが、それはあくまで嗜み程度の物で、ほとんど初心者と変わらない。
そんな人物達が新しく習得する様子は俺としてもアドバイスする上での指針になる。
基礎が出来ている者との違い、これがわかるのは教える上で大切な要素だ。
それに加えて俺には(並列思考)も(分析)もあるから、より正確にアドバイスが出来る。
この経験は俺にとってもアベルやミロールにとっても貴重な経験になりそうだ。
もちろん、リナ達も教えることでより理解が深まるだろう、そうすればリナ達自身の強さの向上に繋がる。
思わぬ収穫に喜びながら、俺はアベルとの訓練を続けていく。
次回更新は7/27です。
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