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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第一章 ここ、異世界?
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11.リナの悩みとリョウの思い

リナ視点とリョウ視点です。

私は、複雑な思いでリョウと一緒に森を歩いていた。

さっきの戦闘でリョウが剣に魔力を纏わせて、本来切れ味などない剣でコボルドを真っ二つにしていた。

あんな風に魔力を使えるなんて考えた事もなかった。


魔力は魔法を使うために必要なもので、詠唱さえ覚えちゃえば、向き不向きはあるけど魔法を使うことが出来る。

そうやって学園でも教わってきたし、魔力だけの使い道なんて想像すらしなかった。


だから、慌ててリョウに詰め寄ってしまった。

戦闘前に気を付けようと思っていたのに、いざ同じような場面になったら我慢できなかった。


そんな事をしていたから、リョウにも注意されてしまった。

ただ、その内容が今の私を複雑な気分にさせている原因だ。



「リナは美人で可愛いんだから、もうちょっと気をつけて!?他の男にこんなことしてたら襲われちゃうからね!?」


一瞬頭が真っ白になった。

美人とか、可愛いとか言われた事がない訳じゃない。

だけど、そう言ってくる人のほとんどは、下心しかなくて、言われても嬉しくなかったし、こんな人達に好かれるくらいなら、こんな容姿いらないとまで思っていた。


けれど、リョウからは下心は感じられなかった。

むしろ、私の心配までしてくれた。

確かに、さっきみたいな事をしていたらいつか抵抗すら出来ないで好き放題されてしまうかもしれない。

他の男にリョウみたいに接する事はないのだけど、そうした危険があることを教えてくれた。


リョウは気付いてなかったかもしれないけど、私に美人で可愛いと言った時、顔は真っ赤になっていた。

それを見て、私も慌ててリョウから離れた。


こんなに、私の事を気遣ってくれて、私の事をきちんと見てくれた人は今までいただろうか?

今までを振り返ってみたけど、そんな人は両親を除けば誰一人としていなかった。


それがとても嬉しくて、相変わらず心臓はドキドキしっぱなしだし、顔はおそらく真っ赤になってると思う。

この時に、初めてリョウに惹かれている自分に気づいた。


学園で数少ない信用できる友達から聞いた、恋愛の話。

私も女の子だから、恋愛に夢を持ってた事もあったけど、私の周りにそんな風に思える対象はいなかった。

だから、そんな人はいないんだろうなって、諦めていた感情だった。


それが、昨日会ったばっかりの人によって手に入るとは思わなかった。

自覚してしまうと、リョウにどんな顔をしていいかわからなくなってしまいそうだった。

それ以前に、リョウに私はどんな風に思われているかも気になってきた。

美人で可愛いって事は、少なくても悪い印象は持たれていないと思う。


もし、そう思っているなら私にわざわざ美人で可愛いなんて言わないだろうし、顔を真っ赤にする事もないだろう。


そして、一番不安なのはリョウの成長が早すぎる事だ。

今はまだ、私の方が知っている事も多いし、戦闘でも身体能力に差があると思う。

だけど、リョウはまだこの世界に来て2日だ。

それなのに、ゴブリンを倒し、コボルドを倒し、私の魔法を見て瞬時に使える。


いつからか、壁に挫折してしまって伸び悩んでいる私とは違って、リョウは常に成長してる。

そんなリョウに、嫉妬のような暗い感情も持ってしまう。

リョウが羨ましい、思わず口にしてしまった言葉だが、これで嫌われてしまうのは嫌だと思って、すぐに笑顔を作った。


こんな、暗い感情を持ってしまって、伸び悩んでる私がリョウに好意を抱いてもいいのだろうか。

この好意を否定されてしまったら、私はきっと立ち直れない。

リョウの側にはいたいけど、私にリョウの側にいる資格があるのだろうか。


好意に気づいた嬉しさ、好意を持っていいのかという疑問、2つの相反する感情が私の心を複雑にしていく。

それは村に帰っても消えることはなかった。


∨∨∨


日が暮れてきた頃、俺達は村に着いた。

コボルドを相手にした後、森を歩いていたが、出会ったモンスターは、ゴブリン4体と、コボルド4体だけだった。

俺は剣に魔力を流す戦い方をこいつら相手に練習した。


剣から魔力を戻す事も出来るようにもなり、楽にモンスターを倒せるようになった。

魔法の詠唱も慣れたもので、(クリスタル)の魔法では、詠唱中に使う魔力の量を変えられる事に気付き、使う魔力の量を増やすと、最初に取った時よりも大きな魔力石になった。


ただ、リナの魔力石よりは小さかったので、悔しい思いをしたが、近い内にリナより大きな魔力石を作ってやろうと思った。


今回の戦闘で、魔法のイメージが掴めたので、他の魔法も何が使えるのか早く知りたいと思った。

ただ、戦闘中に気になったのは、リナが何か考え事をしていて上の空だったことだ。


リナの戦闘を見ていたが、身体能力が俺より高いのかゴブリンも、コボルドもリナの弓矢に近づくこともできなかった。

どちらも二撃、当たり所が良いと一撃で仕留めていて、苦労することがないからというのもあるのだろうが、リナが上の空になったのは、最初のコボルドとの戦闘を終えた後だ。


心当たりとしては、表情が曇ったあの時なのだが、理由がわからないし、変に蒸し返してリナに嫌な思いをさせたくないという気持ちと、聞いた所で俺に何ができるという自分への自信の無さが原因で結局聞けなかった。


だが、村に着いて家に帰ってからも上の空な状態は続いた。

夕食も作ってくれたのだが、リナは少しだけ食べると、今日はもう休むといって、自室に入ってしまった。


キエラさんも気になっている様子だったので、片付けを終えると、キエラさんに聞いてみた。


「結構こうやって塞ぎこむ事ってあるんですか?」


キエラさんは


「滅多にないですね、普段も悩み事があっても私に見せることはないので、ここまで悩んでいるのは初めてかもしれません。」


そういって、どうしようかと困っているようだった。

俺は部外者の俺が入っていい問題なのかと思い、キエラさんに任せようとしたが、ふいに今日までのリナとの出来事を振り替える。


川で休んでるとこで、声をかけられ、そのあまりの美しさに見惚れてしまい、何とか警戒をといて村への招待を受け、村の案内と森での戦闘、リナは俺の事を知りたいと言ってくれたが、俺はどうだろうか。

リナの事を知ろうとしてきたか。

一緒にいてくれる事に甘えて、この世界の事を知らなきゃいけないと自分に言い訳をして、お世話になったリナは後回しにしていた。


俺はその事実に今気づいた。

そして、笑顔を向けてくれていたリナに申し訳なくなった。

そう思ったらいてもたってもいられず、キエラさんに


「リナの事、任せてもらってもいいですか?」


普段絶対に言わないであろう台詞で許可を求めた。

俺の台詞と雰囲気にキエラさんは驚いたようだったが、すぐに笑顔になると、


「はい、リナの事をよろしくお願いします。」


と任せてくれた。

一言礼をキエラさんに言ってから、俺はリナの部屋をノックした。


すると、中からリナが出てきて、俺を見ると驚いた顔をして、その後にまた表情を曇らせてしまった。

ほらみろ!お前は相手を傷つけるしかできないじゃないか!と弱気な俺が文句を浮かべる。


だが、ここで逃げてしまったらおそらく、一生リナの悩みを聞くことはできないだろう。

俺は覚悟を決めて一歩を踏み出す。

俺はリナに笑顔でいてもらいたい。

この異世界に来て、不安だった俺が今こうして希望を持てるのは、リナが俺に声をかけて村へと連れてきてくれたからだ。


それに異世界にきて、初めてできた話をした人、それもあるが、理由はわからないけど、惹かれてしまう人、それがリナだ。


悩んだリナの顔を見て、今ようやく自分の気持ちに気付くなんて鈍感も良いところだが、今は反省してる場合じゃない。

まずは、リナの悩みを聞かないと、それがどんな悩みであれ力になろう。


決意を新たに、リナへ話しかける。


「少し話しをしたいんだけどいいかな?」


リナは一瞬嬉しそうにしたが、また表情を曇らせてしまった。

ダメかと思って、次はどうしようかと考えていると、リナと何かを決心したようで、


《わかった、中に入って》


といい、自室に案内する。

俺は内心かなり動揺していたが、もうどうとにでもなれ!とリナの部屋へ入った。


リナの部屋はまさに女の子の部屋という感じだった。

置いてある家具こそ俺の部屋と変わらないが、ベッドにはぬいぐるみが置いてあり、布団も薄いピンク色の物になっている。


あんまりキョロキョロしても、失礼かと思っていると、リナはベッドに腰かけて、


《リョウ、ここに座って》


とリナの隣を指してきた。

不謹慎だけど、ドキドキしてしまって頭が真っ白になったが、俺も力になると、覚悟を決めてここまで来たんだから雑念を捨ててベッドに腰かけた。

近くで見ると、相変わらず美人なリナだが今は表情を曇らせている。


どう話を切り出すか悩んでいると、


《リョウは優しいね、私の事心配してくれたんでしょ?

でも大丈夫だよ、ちょっと考え事してただけだから。》


そういって俺に笑顔を向けてくるリナだが、いつものリナの笑顔と違って作られた笑顔だった。

それを見た瞬間、俺は気づいたらリナを抱き締めていた。

やっちまった!?、と後悔したが、リナに抵抗する様子はなかった。

ひとまずホッとすると、そのままリナに話しかける。


「俺には、リナが何に悩んでるかはわからないし、もしかしたらこうやって心配するのもお節介なのかもしれない。

だけど、俺は本気でリナの事が心配だった。」


「俺が今こうして不自由なく生きていけて、この世界の知識を得られたのは、リナがあの時俺に声をかけてくれたからだ。」


「あの時、リナが声をかけてくれなきゃ俺は今頃森で死んでいたかもしれない。だから、リナには感謝してるし、俺が出来ることなら力になってあげたいと思う。」


「それに、こんな事を言われても信じられないかもしれないけど、知らない内に俺はリナの事を好きになってたみたいだ。」


「だから、リナの事をこれからもっと知りたいって思うし、好きな人を守りたいっていう気持ちは、どこの世界でも同じだろ?、だから良ければ俺に悩みを話してくれないかな?」


これが俺の今の気持ちだ。

この世界に来て、まだ2日だし、会ったばっかりなのに何言ってんだよとか、色々言われそうだけど、俺の気持ちに偽りはない。


リナを守りたいっていうのも、リナが心配っていうのも、リナが美人で可愛いっていうのも、一緒にいて楽しい、離れたくないっていうのも、全部ひっくるめてリナが好きだ。


今はまだ、大した力もないけど、この先にどんな障害が出来たとしても、俺はリナを守れるように強くなろうと思う。

だから今は、こうして抱き締めて俺の気持ちを伝える事で少しでもリナの心を軽くして、いつもの笑顔を取り戻したいと思った。


そうして、俺達はしばらくそのまま抱き締め合っていた。




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