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憧れの異世界で:(旧名 異世界来ちゃった)  作者: ソ土ルク、
第一章 ここ、異世界?
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10.リナとのモンスター狩り

リナ視点とリョウ視点です。

村を出て、リョウの隣を歩いてる私は、さっきの修練場での出来事を思い出していた。

村から出て、すぐにモンスターと遭遇したりするわけではないから、警戒をきちんとしていれば別の考え事をするくらいの余裕はある。


リョウは魔法の名前を知らないから、魔法を発動することは出来ないと思っていたし、話を聞いた限りでは魔力がない世界から来たようだった。

だから、私の魔法を見て驚いていたし、すごい嬉しそうで、それを見ると私まで嬉しくなった。


だから、いくら魔法を見たからといってもすぐに魔力を感知して、魔力だけを自由に出し入れ出来るなんて思ってもいなかった。

つい、驚いた勢いでリョウに詰め寄ったんだけど、興奮状態だった私はリョウに言われるまで、どれだけ詰め寄っていたのか気付いてなかった。


リョウにそれを指摘された時、最初は何の事かわからなかったんだけど、冷静になるにつれ私がものすごくリョウに近づいていたことに気づいた。

至近距離で目が合うと、ものすごい恥ずかしくなって、慌てて離れた。


それで終わらせれば良かったのに、急な事でテンパっちゃって、


《あっ、ご、ごめん。で、でもリョウの事が嫌で離れたわけじゃないからね!》


余計な事まで言っちゃってた。

今思い出しても、顔が熱くなってベッドで悶えそう。

その後、お互いに落ち着くまで待って、想像より早く魔法の訓練が終わっちゃったから、このあとどうするか決めて今に至る。


リョウも学園に入りたいみたいだから、私が知ってる事、教えられる事があれば力になりたいと思う。

それに、リョウと一緒に学園に通うのも楽しそう。


リョウには昨日会ったばかりなのに、何でこんなに気になるんだろう。

学園にも、男の子がいないわけじゃないし、私だってエルフとしては子供でも既に100年は生きているから、色んな種族も見てきた。

それでも、これほど興味が引かれ気になる人はいなかった。


リョウが別の世界から来た人だから気になるのかな?

もちろん、それもあるとは思うけど、それだけじゃないと思う。

私の周りに来る人達は、ほとんどが私の地位や、容姿を目当てに近づいてくる。

他にも、腫れ物を触るかのように扱う人、エルフだからと見下す人など、私の事をきちんと見てくれる人は少ない。


友好関係は広いと思うけど、実際に信用出来る人は数える程しかいない。

あとの人達は、うわべだけの付き合いしかない。


そう考えると、リョウは話しもちゃんと聞いてくれるし、私を特別扱いせずに、私として見てくれる。

からかうと面白い反応をくれるし、そこがすごくかわいい。

だからこそ、こんなに楽しくて一緒にいても気負わなくていいし、安心できる。


改めてリョウの事を考えていると、何故かとても恥ずかしくなってきた。

理由は自分でもよくわからない。

心拍数も上がってきて、全身が熱を持っているかのように暑い。

ただ、それに心地よさを感じている自分もいて、余計に混乱した。

この鼓動の音が隣にいるリョウに聞こえませんようにと願いながら、森を歩き続けた。


ようやく落ち着いてきた所で、リョウが質問してきた。


「モンスターって昼間にも出るの?」


質問してきたのが落ち着いてきてからでホントに良かったと安堵しながら、私は質問に答えた。


《昼間もモンスターはでてくるよ。ただ、夜はより凶暴性が増すから、気をつけないといけないの!》


何回か夜にモンスター狩りに行ったことがあるけど、昼間はおとなしいモンスターが襲ってきたり、夜にしか出ないモンスターがいたりと危険が多い。

それだけ稼ぎも増えるが、視界が悪い中で周囲の警戒をしながらの移動はそれだけで、体力と精神を削る。


余程腕に自信があり、警戒することに長けた人達にしかオススメしない。

自信過剰な者はそうやって命を落とす。

リョウがそうならないように、私が近くにいる間は気を付けよう。

私はリョウの隣を歩きながら密かに決意をかためた。




村を出て歩きながら、俺は魔力の出し入れを身体の色々な部位でやっていた。

手のひら、指先、肘、胸、腹、足の指、足の裏。

最初にやった手のひらから出すのは楽で、指先もイメージがしやすいため、簡単にできた。

だが、他の部位から出すのはかなり苦労した。


魔力は血液の流れをイメージするとやりやすいが、胸はそれを意識すると、心臓に魔力を溜めてしまうことになる。

これで暴発などしようものなら、一瞬で俺の命は消える。

そのため、血液の流れていない場所から出さなければならない。


そのイメージが難しかったが、だんだん魔力の扱いに慣れてくると、魔力を集めても大丈夫な場所が分かってきた。

このイメージのおかげで全身のどこからでも魔力を出せるようになった。

ただ、一番イメージしやすいのは手のひらだし、それが一番カッコいいから、他の部位では不意打ちとかにしか使わないだろう。


一通り魔力の練習が終わった頃、リナから警告を受けた。


《近くでモンスターの足音が聞こえるから、いつでも戦闘出来るようにしといてね!》


「わかった!」


お互いに声を掛け合い、俺は剣を構え集中力を高める。

そうすると俺にもモンスターの足音が聞こえてきた。

そいつは徐々に近づいてきて、遂に姿を表した。


ゴブリンよりも小柄で、動物的な面が強く小さな棍棒のような物を持っている。

ちらりと見える歯は人間の物よりも小さいが、一つ一つが尖っている。

それが2体いる。

こちらを見て只でさえ悪い目つきを更に悪くし、口角を上げながら、こちらを威嚇するように声を上げ近づいてくる。


〈キキキキッ!〉


スピードはあまり速くない。

精々ゴブリンより少し速いくらいだ。


「リナ、俺が左の奴をやるから、右の奴は任せるよ!」


《りょーかい!コボルドなんて相手にもならないんだから!》


リナの頼もしい言葉に、俺も負けてられないなと改めて気合いを入れ、コボルドと戦闘を開始した。


ゴブリンの時とは違い、俺も武器を持っているため、左のコボルドへ向かっていく。

このまま行けば俺は2体のコボルドに囲まれるだろうが、右のコボルドに、リナから放たれた矢が刺さり、俺から意識が離れ、リナへと標的を変えたみたいだ。


俺がもっと強ければここで再び俺に標的を戻し、リナを守る事も出来るのだろうが、まだこの世界での戦闘二回目の俺にはそこまでの事はできない。


それが、凄く悔しかったが、強くなればいいと気持ちを切り替え、目の前のコボルドとの戦闘に集中する。


お互いの間合いに入ると、コボルドが棍棒を振り下ろしてきた。

余裕で反応できる程度の速度だったため、剣で跳ね返してやろうかとも思ったが、むやみやたらと剣に負担をかける必要はないため、棍棒は避けて、コボルドの側面に回るとコボルドの頭めがけて剣を振り下ろした。


しかし、ゴブリンよりも反応はいいのか、頭を守るため肩で剣を受けていた。

剣の切れ味は良くないため、腕を切断する事は出来なかったが、ボキッと骨を砕く音が聞こえた。


〈キーーーッ!!〉


金切り声をあげ、蹲りながらも棍棒を振り回してくる。

一端コボルドから離れてどうするか考える。

このまま撲殺も出来るだろうし、ゴブリンの時のように胸に剣を突き刺しても倒せるだろうけど、あの出鱈目な振り回しの中で正確に胸を刺すのは難しいと思う。


何とか切れ味を上げられないかと考え、試しに持っていた剣に魔力を流してみる。

魔力を扱いに慣れてきていたため、剣を腕の延長と考えると比較的楽に出来た。

刀身に見えない魔力を纏った剣からは、先程とは比べ物にならない力強さを感じる。


これなら行けるかもと思い、出鱈目に振り回すコボルドの棍棒を狙って剣を振る。

あっさりとコボルドの棍棒を真っ二つにして、得物を失った事に気付き、硬直したコボルドの頭めがけて剣を振り下ろす。


硬直した隙を狙ったため、避けられることもなく、剣はコボルドの頭へ当たったが、魔力を纏って切れ味が上がっているのか、あっさりとコボルドを縦に真っ二つにした。


(精神耐性)が無ければ発狂するような状態だったが、スキルのおかげで多少の嫌悪感程度で済んだ。


リナの方を見ると、既にゴブリンを倒してこちらを観戦していたようだ。

こちらへ走ってくるリナだが、俺は猛烈に嫌な予感がした。

案の定、リナはキスでもするかのように詰め寄ってきた。


《さっきの何なの!?剣に魔力を流すなんて聞いたことないよ!》


ものすごいデジャブを感じるが、この体勢は色々よろしくない。

いや、ホントは嬉しいことなんだろうけど、このままだと心拍数の上がりすぎで死にそう。

しかも、リナの女性特有の柔らかさで理性を保つのも辛い。

さっきの戦闘よりも、よっぽどこっちの方が疲労具合が高い気がする。


というかリナさん、今朝修練場で同じ状況になったでしょ!?

もうちょい自分の魅力と、男の子の気持ちを考えて!?

と心の中で叫んで、雑念を払うと恥ずかしい気持ちを何とか抑えリナに忠告した。


「リナは美人で可愛いんだから、もうちょっと気をつけて!?他の男にこんなことしてたら襲われちゃうからね!?」


言われて気づいたのか、顔を真っ赤にして慌てて離れるリナ。

それだけじゃなくて、妙にそわそわしてる。


真っ二つのコボルドの横で、最高にかわいいリナ、どんな状況だこれは!?、と心の中でツッコミをいれながら心を落ち着けた。


リナもようやく落ち着いてきたみたいなので、俺はさっきのリナの質問に答えた。


「剣を手の延長って考えて、手のひらに魔力を出した時みたいな感じで、魔力を流しただけだよ!」


これを聞いたリナは、試そうと短剣を持ちながら唸っていた。

人の魔力の流れを見える訳じゃないから、いまいちわからないのだが、リナは相当苦戦してるみたいだ。

何度か挑戦していたが、やはり成功しなかったため、落胆した様子で短剣を戻した。


そんな姿を見ると、何とかしてあげたいと思えるが、俺の今の知識、実力ではリナに教える事はできないため、


「俺がもっと魔力の扱いについての知識を身につけたら教えるよ。」


そうやってリナを励ますと、先程の落ち込んだ様子は嘘のように無くなり、満面の笑顔でこちらに詰め寄ろうとしたが、今度は思いとどまったようで、笑顔を俺に向けたままで、


《ほんと!?嬉しい!楽しみにしてる!!》


そういってリナは倒したコボルドに近づいて行く。

これからもリナと一緒にいれる約束ができて、俺としては満足だった。


リナはコボルドの前でしゃがみこむと、詠唱を始めた。


(わたし)は求める、魂無き身体(うつわ)に冥福を、クリスタル!》


淡い光がコボルドを包み、コボルドの身体が透けていき、やがて小さな光となる。

それが再び集まっていき、小さな赤い石になりコボルドのいた所に落ちた。


リナがそれを拾うと、俺に見せて先程の説明をした。


《これが魔力石で、さっきのが魔力石を精製する魔法だよ!モンスターは放置しておくと、そのうち消えちゃうんだけど、こうして(クリスタル)の魔法を使うと、魔力石になるの。

魔力石は色んな用途があるから、どこでも買い取ってもらえるよ!》


それを聞いて、俺も試してみようと思い、もう1体のコボルドに近づき、先程の光景をイメージしながら詠唱をしてみる。


(おれ)は求める、魂無き身体(うつわ)に冥福を、クリスタル!」


詠唱を始めると、魔力の流れの中からいくらか魔力が切り離され、それが手のひらに集まる。

その後、魔力の質が変わって詠唱を終えると、淡い光がコボルドを包み、先程のリナと同じ現象が起きた。

しかし、リナの物と比べると小さな魔力石だった。

何が違うのかはわからなかったが、何となく悔しかった。


すると、頭の中に無機質な声が聞こえてきた。


【スキルを(魔法)を手に入れました。】


また新しいスキルを覚えたみたいだ。

早く確認したいが、とりあえず村に帰ってからでいいかと思い、後回しにした。


リナがやってきて、魔力石を見ると勝ち誇った顔をしてきた。


《やったー、私の魔力石の方が大きいね!》


わかってはいたが、改めて言われると悔しさ倍増といった感じだったので、次はリナより大きい魔力石を作ってやると意気込んだ。

するとリナが


《それにしてもリョウって成長するの早いね!羨ましいよ。》


と、いつもの表情に少し陰りを見せた。

何か理由があるのかもしれないが、すぐに笑顔に戻って


《この調子でモンスター狩り続けよう!》


と元気よく歩き始めた。

表情が曇った理由を聞きたかったが、せっかく俺に心配させまいと笑顔を見せているのだから、それはまた今度聞こうと思い、リナの隣で再びモンスターを探しに森を歩いていった。


次の更新は4月22日です。


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