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第1話 はじまり

 


 男だか女だかわからない、胡散臭い奴に連れ去られた。

 いや、連れ去られたのともちょっとちがうか。


 友人と山登りをしてたんだ、私は。

 自発的にじゃない。引きこもりというわけじゃないけど、アウトドアよりインドア派なわけなの。……一緒とか言わないで。

 まぁ、それで。

 そんなガラにもないことをやるから、ほら、変なとこに足突っ込んじゃって、友人も一緒に登ってた人たちもいつの間にかどこにもいなくなってしまってた。

 その上、妙に静かなの。風の音も生き物の鳴き声もしなくてなんだか異常な空間。

 これって、もしかして噂に聞く。


「神……隠し?」

「ごめーとー!」

「うわっ」


 びっくりしたー!

 誰!?は!?なんで突然目の前に人が現れたの!?降ってきたの?木の上から?


「やぁやぁ、えーっと、君、名前は?」


 淡い金髪に光でも入ってんじゃないかってくらい明るいこれまた金色の目。高い鼻に身長に中性的で整った顔。

 外国人?いやでも、それにしては日本語うますぎじゃない?


「不審……知らない人に名乗る名前は持ち合わせておりません」

 

 不審者とか、不用意に刺激する必要もないだろう。って、この言い方がすでにまずい──。


「あ、そーなんだ」


 と思いきや、やたらとあっさり引き下がられた。

 自分から聞いてきたくせに!


「ワタシは、まぁ、じゃあ『神様』とでも呼んでよ」


 じゃあってなんだ。つながり見えないんですけど。


「……えーっと、カミサマ? 私、元の場所に帰りたいんですけど」

「戻し方知らないんだ」


 おい、カミサマ。


「そんなことは置いといて、だ」

「重要なことなんですけど。置いとけないんですけど」

「君にひとつ、頼み事があるんだよ」


 聞いちゃいない。

 なんだこのマイペース野郎。あ、女の人か?顔綺麗すぎてわかんないな。


「あなた、男? 女?」

「ん? 一応、分類的には男だよ」


 一応ってなに。分類的にはってなに。

 いや、てか私の話聞いてんじゃん。


「で、頼み事っていうのがさ」

「お断りします」

「ある女の子の運命を、変えて欲しいんだ」


 今まさに、ひとりの女の子の運命が変な方向に変えられようとしてるんですけどね。その辺についてはどうなんでしょう、カミサマ。


「ワタシの大事な子なんだ。その子はなにをしても、どうしたって、死んでしまう運命にある。ワタシにはそんな彼女が可哀想でならない」


 カミサマなんだから、あなたが助けてあげればいいんじゃないの?誰その女の子。私、まったく関係なくない?私にその子を救えるとでもいうわけ?


「人違いじゃないですか?」

「まさか。誰でもよかったんだから、なにをどう間違えればいいというんだい?」


 おいこらどういうことだ。『誰でもよかった』?


「私じゃなくてもよかったと?」

「うん。でも、君がワタシの魔法に引っかかったから、君でいいよ」


 ふざけんな。

 いや、私指名だからいいってわけじゃないけど、これはあまりに酷すぎない?通り魔もいいとこなんだけど。


「そもそも私、医者とかじゃないんだから死んじゃう子なんて助けられない。他当たってよ」


 ばかばかしい。そもそもお前は誰なんだ。

 いや、この際もはやどうでもいいそんなこと。話なんて悠長にしてないで、元来た道を戻ればいい、だ……け。


「どこ、ここ」


  山じゃなかった。木も土も、石もなかった。代わりにあるのは、上下左右まったく変わりのない黒い闇だけ。


「え、」


 どうなって──っていない!

 振り返った先も闇って、ちょ、はぁ!?あいつ、あの男!どこ行った!?


「だって、いつまでたっても了承してくれる気配がなかったし」


 当たり前だよ。なんで逆に了承すると思ったの!?


「だから、ちょこっと強引な手に出させてもらったよ」


 声だけが響く奴が、『テヘペロ』とかやってるイメージが、なぜか頭の中に浮かんだ。かわいくないからやめて。


「傷つくなぁ……。まぁ、うまくやってよ。もし、あの子が生き残ることができたら帰してあげるかもしれない、かも」


 なにその曖昧な約束!?ってか、戻し方しらないんじゃないの!?この取引、成立してる?してないよね!


「それじゃあね」


 いやいやいや、待て待てちょっと。

 だから『あの子』って誰!?


「待ちなさ──!」


 意味もなく伸ばした(と、思われる。暗くて見えない)手の感覚を最後に、突然ぶつりと意識が切れた。

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