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第17話 誘い

 


 今日も今日とて順調にぼっちを極めてます。

 あー悲しい。あー寂しい。そして視線が痛い一体いつまで注目してるつもりですのみなさん!

 結局、あれからミザエラは少っしも近づいてこなくなった。まぁ、恋敵に近づく物好きなんて、いじめっこぐらいだろうけど。ミザエラにいじめられたらどうしよう。


「では、この色を変える魔法だが……。そうだな、グレイフォード。前へ来てやってみなさい」


 うおわっ。当たった!

 えーえ。授業中に考え事してるときに限って見事に当てられるあの法則ですねわかります。

 あぁ、えっと教科書何ページだっけ。

 ガタリと椅子から立ち上がると、私の背後でそれ以上にうるさい物音がした。なに?って振り返れば、慌てて教室の後方へ下がろうとしてた男の子のひとりと目が合った。

 一瞬の沈黙。しかしすぐにハッと我に返ったように逃げていった。おい。


「グレイフォード、早くやりなさい」

「はぁい」


 納得いかない。なんだ、そんなにやばいかやばくないぞ。

 だってただ呪文を唱えるだけ。

 何の色を変えよっかな。これでいっか。壊れてもいいようなお気に入りじゃない羽根ペン。

 いえね?大丈夫よ、大丈夫だけど一応の保険としてね?


「えーっと」


 教科書である魔法書の、複雑な魔法文字を魔法語で唱えるという、恐ろしいほどに難解な技を駆使して、全ての力を羽根ペンへと向けた掌に集中させた。さぁ変われ!虹色に!

 ぱっと光った羽根ペンは、一瞬宙に浮いてそして。


「……」

「……」

「……グレイフォード」

「はい」

「虹色か?」

「…………それ以前に、あたくしの羽根ペンの羽どこですか?」


 戻ってきたのは、羽根ペンの先端だけ。虹色どころか、白い羽すらとこにもない。どゆこと?


「触ってみろ」


 呆れたようなダグラス先生に誘われ、そっと指先を滑らすと、確かに羽があった場所に羽らしき触感を見つけた。え。


「なぜ?」

「色が抜けたのだ」

「色が抜けた」

「私は、色を変えろとは言ったが、無色にしろとは言わなかった」

「……」


 私だってそんなつもりはありませんでした。

 えー。呪文間違ってなかったじゃん!間違ってなかったよね!?

 息をつくのが聞こえて振り返れば、さっきの男の子が明らかに安堵した表情で胸をなでおろしていた。おいこら。

 周囲が私の視線に気づき、焦ったようにその少年へなにかを言っていた。そして再び目が合った。

 綺麗なスカイブルーの目をお持ちね、あなた。覚えておくわという意味を込めてにこりと笑えば青ざめられた。ほんとなぜ。


「去年も同じことをやったはずなのだがな……」


 やりました。やりましたとも。

 一番自分でわかってるんです。どうしてできないのかしらね!!


「この魔法は進級テストに出す。しっかりと復習するように」


 半分以上が私に向けて放たれた言葉と共に、授業終了の鐘が鳴った。

 ……来年、進級できるかなぁ。




 そんな不安しか残らなかった授業終わりに、私に思わぬ来訪者。


「エレナさん」

「えっ、アリスさん!」


 ひらひらと手を振ってらっしゃる可愛いお人。わぁぁなんですかお久しぶりですね!あれからベンジャミンとどうですか!


「エレナさん、来週のお茶会に出席なさるのでしょう」

「お茶会?」


 ご存知ないですなんですかそれ。


「確か、ロベルト王子御主催ですよね。今私たちの間ではそのことで持ちきりなんですよ」


 一気に行きたくなくなるお名前が出てきたんですけど。『第一王子神様呼ばわり事件』は未だ記憶に新しい。


「エレナさんほどの方だと、王家主催のパーティーへの招待状をいただけるのね。素敵です」


 ……まさか、アリスさんも私のこと疎ましく思ってます?嘘でしょ待って、アリスさんの好きな人はベンジャミンでしょ。第一王子じゃないでしょ。いや、ベンジャミンとは仲良くしていただいてるけど、いやでも盗ろうなんて思ってないし、


「あぁ、そうだ。そんなことより、一緒に学院のカフェテリアへ行きませんか? こちらがメインの用事でした」


 え。


「期間限定スイーツ、もう召し上がりました? まだでしたら、お教えしなくてはと思いまして」

「是非行きましょう」


 食い気味な私にちょっと驚いたように動きを止めたアリスさんは、でもすぐに嬉しそうに顔を明るくしてくれた。


「よかった。実は私、甘いもの好きな友人を持っていないんです」


 ほんのりと頬をピンクに染めて、恥ずかしそうに笑うアリスさん、超絶可愛いんだが。なんかお茶会がどうのと大事なこと忘れてる気がするけど、そんなことは吹き飛ぶくらいには可愛い。

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