遭遇。壱
物事を考えながら話すのは得意じゃないが、頭のなかでいろいろ考えるのは好きだ。だから、今目の前に起きていることを冷静にしっかりと考えよう。
現在午後6時半、ここはただの路地裏、路地裏に来た理由は図書館からの帰りの近道として、近くには建物に寄りかかって座っている"なにか"が笑っている。
目の前にいる神のような少女をしっかりと見る。碧色の膝まで伸びている髪。吸い込まれそうな金色の双眸。誰がどう見ようと美少女…いや、美幼女である。
「信者を何人か食べたんだけど、まだ回復が足りないのよ。」
此処で本物の神だということが判明。「神種食人科」で脳内検索する、…ダメだ当たりが多過ぎる。
「そこで街に出て食べ物を探すわけ何だけど…何百年と"御神の席"に住んでおったから、街のことなど何にもわかんないんだよね。」
検索変更。「神種食人科」から、神族の最高議決機関である「御神の席」に変更…数柱に絞られる。
「…ちょっと人間、少しは私と会話をしようよ。」
確かにずっと喋らないのは人が悪いな…そう思い声を出そうと思った瞬間。日が落ちて少し闇が広がっている所から声が聞こえた。
「やぁ、こんばんわ。人間さん、お嬢様。」
唐突に聞こえた声に吃驚してあたりを見回すが誰もいない。
「どこに行ったかと思えばこーんな所にまで行っちまって…さ、帰りましょうか。母様もお怒りですよ。」
さっきまで闇から声が聞こえてきたような感じだったのだが、フードを被った少年がいきなり僕の後ろに現れた。
「…やだ。」
さっきまで饒舌だった彼女は口を閉じて下を向いている。少し声が震えているため、泣いているのかもしれない。
「あそこには何もない…」
「私達は居ますよ?」
「空っぽの君たちと一緒にいたって、何もないじゃないか。」
少年はその言葉で眉間に皺を寄せた。今にも青筋が立ちそうだ。
そして僕のもっている図書館から借りた本を見て言った。
「僕はね、君達なんかよりもその人間が持っている本や図鑑のほうが好きなんだよ世界が広がるからね。
「でも君たちはその世界を狭めようとする。大好きなものを取られそうになる。
「そんなのは嫌だ!私は自由でありたい!あそこで生きるよりここで死んだほうがマシだ!!」
片腕と片脚を失いながらも、それでも彼女は叫ぶ。泣きながら、哭きながら、叫ぶ。
「…仕方がありません、謀反の可能がある輩は"堕天"として処理させてもらいまょう。」
そう言って彼は手を刀の形にして薙ぐ。少女は頭を手で覆い隠していた。
━━━だが、いつまで立っても少女に変化はない。
幼女は目を大きく開き、何が起きたかわからないと言った表情でその場に固まっている。だが、男の方は違っていた。魔法を使った本人だ、わからない訳がないか。
「…何故貴方にコレが止められたんですかね?」
これは彼女ではなく僕に向けられた質問。だから、こう答えることにしよう。
「可愛い女の子が話しかけてくれてる最中、邪魔が入ったので排斥し、また話す為ですよ。」
僕は、彼女のように笑顔で答えた。
適当語録
御神の席・・・作品内に書いた通り種族"神"の最高議決機関。様々な神種だけの条約が決められている。
神種食人科・・・神の中の種類分け、他にもいくつかいる。
堕天・・・神の道から外れた者の名前今回の場合は"堕天として"扱われるだけであり、本来の堕天少し違う。