はっち
王からお詫び状が届いた。
読まずに破り捨てる。
「よ、よろしいので...?」
「ああ。」
部下が心配する。
どうせレティシアのことに対する謝罪文だろう...
レティシアは昔から邪魔な子供だった。
魔力が高い親から生まれておいて、魔力が少ないとは。あれでは俺の魔力まで疑われるではないか!...ダニエル王子の婚約者はレティシアの方でもまあ、いいだろうと思っていたが、やはりマリアンヌの方が相応しい...
用無しになったレティシアに、かけてやる金は1ペラもない!王妃になるための教育に費やした金を返せ!!
まったく...愚かな義姉をもって、ルカも可哀想だ。ルカは優秀で、王子とも懇意にしている。このままの関係を保てば、いずれハイドローザ家の地位をまた上げることになるだろう..........俺がそうしたように...
しかもレティシアは!マリアンヌにまで迷惑をかけたというではないか!
幼い頃から本当に性根の悪いやつだ。あんな悪女とともに過ごしていると思うと、寒気がする。
俺は眉を顰めた。
「ハイドローザ公、こないだの司法院の件はなんだったんですか?」
「お前には関係のないことだ...それより今度の政務費の許可はまだ出んのか?」
「それが、財務部で止まっているみたいで...」
「まだ財務部か。早く演算させて宰相に回すよう言え。」
司法院のことはやはり噂になったか。
あれは流石の俺も驚いたな。あの司法院がわざわざ出てくる事態になるなんて...しかし、王子は堂々と意見陳述していた。マリアンヌの相手としても中々見どころのあるやつだ...
王が婚約破棄することの何が問題なんだ。
もともと、レティシアの親として俺と王で決めたこと。俺が婚約破棄に応じさえすれば、それで終わり...
そんなことも分からぬとは...
あの恐れられる司法院も、もう終いだな。
レティシアへの発言だって大した問題じゃない。王子が本当のことを言ったまでのこと。
王子の隣にはマリアンヌこそ相応しい。
思わず思い出して顔が緩む。
...それにしても、財務部は何をしてるんだ...
速さこそがウリだった財務部が遅れを出すなど、以ての外!演算師にいくら払っていると思っているのだ!
それでなくとも、ダニエル王子が婚約発表パーティーを開くので忙しいときに...
あのマリアンヌとダニエル王子が婚約したんだ。盛大に披露しなければならない。レティシアの時は適当にやったが、今回はそんなわけにはいかない。
俺の晴れ舞台にもなるのだから...
「ルカ!」
「はい!」
「王子の婚約披露パーティーのために服を新調する。一番人気の技術師を呼んでおけ。」
「分かりました。」
ルカには俺の下につかせて、勉強をさせている。要となる地位についている俺を、ルカには越えてもらおう。俺の息子ならできるはずだ。...俺がそうして公爵になったように....
ハイドローザ公爵は、婚約披露パーティーに思いを馳せた。
....まだ、思い通りに行かない未来を知らぬまま.....