ごう
誤字訂正しました 8.31
昨日は散々だった。
王と王妃には、考え直すように何度も言われるし。貴族からは祝福されない。
一体、マリアンヌと婚約することの何が悪いっていうんだ!?
「ダニエル?」
「ああ、マリアンヌ。」
マリアンヌは今日も綺麗だ。昔からこの金髪は変わってない。俺よりも色は暗いが、中々いない美しい色だ。
....そういえば、レティシア。あいつも髪だけは綺麗だったな....
まあ、顔が地味だし、マリアンヌで正解だな。あのままレティシアと結婚してたら、すぐ飽きてただろう。中身もつまらなさそうだしな。
それに比べてマリアンヌ。
いつも俺のために美しく着飾っている。
隣に並んでも、釣り合いが取れていい。
そのうち父上も母上も気づくだろう。マリアンヌの素晴らしさに...
「だ、ダニエル様。王がお呼びです。」
「なんだ、後にしてくれ。」
「い、急ぎだそうで...」
父上の部下が飛び込んできた。
チッ、マリアンヌと過ごそうと思っていたのに。みなの邪魔が入らないよう、わざわざ離宮に移動したというのに...気が利かないやつだ。今はいないとでも伝えておけばよいものを。
「ダニエル?行ってしまうの?」
マリアンヌが切なげな瞳で見上げる。
ダニエルはマリアンヌの金色に輝く髪に手を伸ばした。
「すぐ帰ってくる。そうしたら一緒に街に出かけよう。」
「嬉しい!私、新しいドレスが欲しいの!」
「こないだ王族専用の仕立て屋を呼んだばかりだろ?」
王族専用の仕立て屋は、技術師の内の一人で、王族が呼ぶにも大金がかかる。それも、技術師が王族から独立している証だ。
「街のも新鮮でいいでしょ?ダニエルのために可愛くしたいの。」
「マリアンヌ...分かったよ、楽しみにしていてくれ。」
マリアンヌの頬を撫で、部屋を出た。
「ダニエル様、お急ぎください!」
さっきの兵士が急かす。
どうせまた、マリアンヌとの婚約の話だ。
今日は説得できる自信がある。父上も母上も認めてくれるだろう。
これでようやく、マリアンヌと結婚できる。
...そういや、マリアンヌは王族なのに、なぜ俺の婚約者にならなかったのだろう?一番身分としても釣り合っているのに...
ああ、そうか。マリアンヌの母親が過保護だって聞いたことがあるな。中々人前に出さないとか。それで俺も学園に入るまで会ったことがなかったんだった。
まあ、あの美しさなら過保護になるのも分かるな。今回の婚約も、もしかしたらディオゲネス夫人が反対しているからかもしれない。
「ダニエル様、こちらです。」
「なんだ?この部屋は。父上じゃなかったのか?」
「王もこちらでお待ちです。」
父上に会うときはいつも執務室だ。
こんな仰々しい部屋、初めて来たな。
もしや、婚約発表はこの部屋でしなければならなかったのか!?
だから父上も考え直すように言ってたのか...
なるほどな。
俺は気合いを入れて扉を開けた。
「ダニエル・ディ・ヴォルティーヌ。入れ。」
俺は驚いた。
誰だ、あの男?俺のこと呼び捨てにするやつなんて初めてだな。しかも、父上と母上もいる。珍しい、正装だ。
しかし、これは罰せられるな、あの男。
父上と母上の前で俺のことを呼び捨てにするなんて.....
思わず笑みがこぼれる。
「ここへ。」
男の声で、男の部下らしき人物が動いた。
目の前に知らぬ男が数人。
少し離れたところで、王と王妃、王族たちが座っている。なぜかレティシアの父も。
これだけみな揃っているということは、やっぱり婚約が認められたのか....
俺は安堵した。
「マリアンヌは呼ばないのか?」
婚約者を披露する必要がある。マリアンヌの両親だけいても、仕方ないじゃないか!
レティシアの時だって、両家の親と子が揃ってたぞ。...まあ、ほとんど書類のやり取りでつまらなかったが....
「マリアンヌ・ディオゲネスは、別件がある。長くなるので、本日は貴殿一人だ。」
「「開廷する。」」
「ダニエル・ディ・ヴォルティーヌ、貴殿には婚約破棄と名誉毀損により、レティシア・ハイドローザへの損害賠償責任が生じています。」
「ダニエル・ディ・ヴォルティーヌ。貴殿は、レティシア・ハイドローザと婚約していましたね?なぜ、婚約破棄をしたのですか?」
「ちょ、ちょっと待て!なんだこれは!」
俺は王子だぞ?なぜこんな責めを受けなければならない!そもそも損害賠償とは何だ!
...父上も母上も、みな静かに聞いている。なぜだ...ああ、レティシアの仕業か?いや、レティシアにそんな力は...
そうか、王子としての試練か?マリアンヌと婚約するのにふさわしいか試されてるのか....
「質問にお答え下さい。」
男に睨みつけられる。
俺を睨むだなんて、無礼な。
堂々と言い返してやる!
「それは、マリアンヌのことを愛しているからだ。」
「では、他の女性を愛したため、レティシア・ハイドローザとの婚約を破棄したのですね?」
「ああ、そうだ。」
どうだ、見たか。これが王となる男だ!
「分かりました。先日のパーティーで、観衆を呼び集め、婚約破棄をし、レティシア・ハイドローザに対しての暴言があったと。これについてはいかがです?」
「は?みなを集めて婚約発表をした。暴言?そんなことあったか?」
「分かりました。それでは、後日証人尋問を行います。」
「「閉廷」」
次期王らしく、やり遂げたぞ。
...しかし、一体、なんだったんだ...?
いつも読んで下さりありがとうございます。
unagi