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マリアンヌの母は喚き声を上げていたが、興奮しているせいで何を言っているのかわからなかった。
ーーマリアンヌがハイドローザ公の子供ですらないーー
ダニエルは混乱していた。
マリアンヌは自分にぴったりで血筋も問題ないと思っていたのが、貴族ですらない可能性が出てきたのだ。
どんな衝撃なことがあったのか、ぼんやりしたままのマリアンヌ。
マリアンヌの母はどこかへ連れて行かれ、ハイドローザ公は手のひらを返したようにマリアンヌの母にもマリアンヌにも冷たい言葉をかけた。
このままではマリアンヌの居場所がなくなってしまうと、ダニエルは離宮へと連れ帰ってきた。
「マリアンヌ、マリアンヌ、」
ダニエルが声をかけると、マリアンヌがピクリと反応した。
「ダニエル?あら、なんだか私ーー」
マリアンヌは不思議そうな顔をした。
貴族としてはあり得ない待遇を受けた気がするが、気のせいだったのだろうか、と。
「マリアンヌの髪は、染めているのか?」
ダニエルは自分と同じ金髪でなかったことに衝撃を受けていた。
「そ、染めてないわ。」
さっきの出来事は記憶にないのか、マリアンヌは否定した。
ダニエルはそれ以上どう問い詰めていいか分からず、ユリウスを呼ぶことにした。
「マリアンヌ様、気がついたのですね。」
「ユリウス....?」
マリアンヌはそのユリウスがマリアンヌの母を追い詰めたことを知らない。
「マリアンヌ様、髪のことをお認めになられた方がーー」
庇ってくれるだろうと思っていたユリウスが、同じように問い詰めたことで、マリアンヌのストレスはピークに達した。
「わ、私は公爵家の娘よ!あなたみたいなただの貴族に、指図される覚えはないわ!」
「そうですか。ところでマリアンヌ様、マリアンヌ様は頻繁にお酒をお飲みになるようですが。」
「そ、それがなによ。」
「本当にそのお酒、飲まれているんですか?」
「な、なにを...」
「髪の根元が茶色ですよね?あなたの本当の髪は茶色なんじゃないですか?」
マリアンヌは思わず髪を手で抑えた。
もう二人には十分みられた後だとは気づかずにーー
ダニエルはその仕草にガクッと肩を落とした。
父も反対するはずだ、と。
「ダニエル、ごめんなさい。でも、髪が茶髪だったことくらい、許してくれるわよね?」
マリアンヌがダニエルにしなだれかかる。
「マリアンヌ....君はハイドローザ公の子供じゃないみたいだ。」
ダニエルも正直に伝えることにした。
これでマリアンヌも分かってくれるだろう。
結婚は無理だということをーー
「そうなの?」
だからなに?といった具合の表情に、ダニエルも思わず無言になってしまう。
「ーーだから、君とは婚約できない。」
ダニエルはマリアンヌから視線をそらしたまま言った。
「どうして?!」
マリアンヌはダニエルに掴みかかる。
「身分の問題があるだろ、」
「身分?私はハイドローザ公の娘よ?」
「だから、それは、」
うふふ、とマリアンヌは笑った。
マリアンヌには確信があった。
「真実がどうでも関係ないわ。今の私はハイドローザ公の娘なんだもの。」
自信ありげに笑うマリアンヌの顔は美しく妖しげに輝いていた。
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