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レティシアとマリアンヌの話は、上から下まで駆け回った。
こんな大スキャンダルをどう対処していいのか、みんなが頭を抱えることとなった。
あのレティシアが本物のマリアンヌだった。
王族だった。
今までマリアンヌに媚を売り、レティシアを冷遇していた人々は慌てふためいた。
「ほ、本当なのですか?レティシア様とマリアンヌ様がーーー」
「ああ、本当のようだ。とりあえずレティシア様は王宮で保護されている。」
ユリウスは冷静に答えた。
あのパーティーにも一応参加していたユリウスだったが、まさかあんなことになるとは全く想像していなかった。
レティシアとの婚約破棄が宣言されたからとはいえ、マリアンヌとの婚約が認められたことにはならない。
あんな風に婚約破棄されて、レティシアとの婚約を取り戻すことが難しいとはいえ、他の婚約者をダニエル王子が勝手に決められることには繋がらないのだ。
ユリウスはダニエル王子がこれ以上勝手な行動にでないよう監視する意味もあり、パーティーに参加していたのだ。
それがまさか、マリアンヌの親が暴挙に出るとはーーー
「れ、レティシア様が王族になって、マリアンヌ様がハイドローザ家に?」
一見なんの問題もないような...と不思議な顔をする新人。
確かに、一見こちら側にはなんの変化もないだろう。
そもそもハイドローザ家のご令嬢とダニエル王子の婚約が決まっていたのだ。
結局マリアンヌに変わっても、ハイドローザ家のご令嬢であることに変わりはない。
身分上も問題はなく、王家に影響はないようにも見える。
「いや、それだけの問題じゃない。これは、なにか良くないことがーー」
ユリウスは嫌な予感を感じ、調査の手を入れることを決めた。
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同じく王宮では、王が対応に追われていた。
ハイドローザ公に連絡をしようにも、手紙の返事は全く帰ってこない。
王家に仇なす行為を暴露しておきながら王への報告はないーー
この時点でハイドローザ公の運命が決まったようなものだった。
しかし、ハイドローザ公をも捕らえてしまえば、マリアンヌは罪人の娘となってしまう..
..
レティシアとの婚約が難しくなった今、マリアンヌとの婚約話まで消えてしまうことは、逆に良くないのではと思えていた。
マリアンヌとは正式な婚約をしていないにせよ、あれだけ大勢の前で発言したのだ。
それがまた、立ち消えとなると....
王は考えすぎて頭痛がした。
レティシアがディオゲネス公の子供と分かったとき、レティシアについては諦めざるを得なかった。
ディオゲネス公が許すはずがないーー
それどころか、あのこともバレてしまうのでは、と冷汗を流した。
ディオゲネス公を敵に回すことがあってはならない。
王はレティシアとマリアンヌの二つの問題に頭を悩ませた。




