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[今日]
「レティシア!お前との婚約を破棄する!」
誇らしげに宣誓するダニエル王子。
「新しく、このマリアンヌを我が婚約者とする!」
「ダニエル...」
「マリアンヌ....」
手を取り合う二人。
あー、はいはい。
そろそろだと思ってましたよ?
王子がパーティーを開きました。
当然、私も行かなくちゃいけません。
婚約者ですから。
普通は、家まで迎えに来てくれるんですけどね。王子は来たことありません。
そこは、まあ、諦めて一人で今日も向かいました。
一応パートナーとして、王子の隣に並びます。
顔立ちに差がありすぎて、全然しっくりこない二人です。
キラキラ顏の王子と、平凡顏の私。
まあ、髪の色だけは、同じ金髪なんでセーフでしょう。私の髪は銀髪に近い金髪なので、白髪っぽく見えそうなのが悩みですけど...
そんな王子と私はだいたいパートナーとして隣を歩いてました。
私だって、別に王子と一緒にいたいわけじゃありません。婚約者だから、まあ一緒にいなきゃいけないだけで。
挨拶回りだって、楽じゃないんです。
王子はいつも特定の人に囲まれているので、見つけやすいです。宰相の息子とか、騎士団長の息子とか。学園でも同じメンバーで固まっています。
ドレスの波を縫って、王子の方へ歩きます。
ただ今日は、人に囲まれる王子の元にたどり着く前に、王子が舞台に上がってしまいました。
マリアンヌ様と。
え?マリアンヌ様が誰かって?
あー、じゃあこちらをどうぞ。
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[高等部春]
「お前がレティシアか?」
学園で話しかけた。
突然なに?という顔。
「なんでパーティーに出ないんだ?」
「興味がないので。」
社交界にはまだ顔を出さない。
早くにデビュタントを迎える娘も多いが、伝統的には16歳がデビュタントの時期だ。
王子はレティシアが婚約者候補であると聞いていた。
特に、父である王と、叔父である王の弟は、レティシアを推していた。
「そろそろ決める。自分の目で見ておけ。」と。
レティシアだけは、パーティーで近寄ってきたことのない女だった。
目立たない女。
魔力も地味。
筆記だけで上位にいる。
「いいじゃないか、真面目で。」
「あ〜まあ、そうか?」
王子の周りには、宰相や騎士団長の息子が集まる。
「ダニエル?」
「ああ、マリアンヌか。」
王子の従兄妹のマリアンヌ。
「レティシアって知ってるか?公爵令嬢の。」
「レティシア....?知らないわ。誰なの?」
「ダニエル王子の婚約者らしい。」
「おい、まだ予定だぞ。」
盛り上がる話。
学園中の人目を集めていた。
そして、婚約が決まる。
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...というか、親同士で婚約の取り決めはとうの昔に行われていたんですけどね。
王子はあまり人の話を聞かないタイプなので、忘れていたんでしょう。
「ふーん、お前がレティシアか。地味でパッとしないけど、父親たちがお前にしとけってうるさいから婚約しといてやるよ。」
...って感じが丸わかりでした。
あんな表情に出る方初めてだったので、ちょっと面白かったです。
え?傷つく?なににですか?
この後すぐ、ダニエル王子との取り決めがあって、やっと婚約者らしくなりました。
パーティーでも一応並んで歩き、色々と挨拶して回ったり....
婚約者になったら、色々な方に報告する必要がありますから。王もここぞ!とばかりに、たくさんの人を呼んで....さすがにあれだけたくさん挨拶したら、自分の名前でさえゲシュタルト崩壊しそうになりましたよ....
それが、あんなことを引き起こすとは知らずに、ね。
ゲシュタルト崩壊:姿かたちが壊れ、個々の構成部品に切り離されて認識されてしまう現象のこと。