十八
学園の裏口で、ママをつかまえた。
「ちょっと、ママ!どういうこと!?」
「ええ、明日じゃだめかしら?私、今日はハイドローザ公のお屋敷に泊まりにいくのよ?」
知らないわよ!ママがあのオジさんとどんな関係だろうが、ね!
「それどころじゃないでしょ!私、本当にあのオジさんの娘なの?」
レティシアの父親として認識していた人が、私の父親!?
しかもママが本当のママだったなんて...
ああ、もっと美しくて高貴な人が本当のママだと思ってたのに....
「そうよ。ねえ、もういいかしら?馬車に彼を待たせてるの。」
良くないわよ!
私、王族の血をひいてないってことじゃない!公爵よ?この私が。
そんな貴族ごときじゃ満足できないわ!
「うふふ、マリアンヌ。あなたの考えてることはよーく分かるわ。でもね、考えてみて?
あなたは、王子と結婚するのよ?手に入らないものなんてあるかしら?」
....手に入らないもの?
確かに、王子と結婚すれば王族になる。
いずれ王妃になるんだから、お金も使いたい放題。
パパにお金を使いすぎて怒られることもない。
「うふふ。そうね。」
「でしょう?じゃあ、私当分帰らないから。」
ママはドレスを翻して、馬車まで歩いていった。
暗くてよく見えないけど、馬車から降りてママの手を引く人影がみえる。
なーんだ。そうなの。そういうこと。
今のパパよりいいんじゃない?
ママのことが好きってことは、娘である私のことも可愛がってくれるはず。
まあ、パパの方が顔はかっこいいけど、いいわ、許してあげる。
私は待たせておいた馬車へと向かった。
パーティーの客たちも帰った後で、学園は気味が悪いくらい静かだった。
「あら?」
私の乗ってきた馬車が見当たらない。
ダニエルも....
パーティーには必ず王家の馬車で来て、帰っていたのに...
その日、迎えの馬車は現れなかった。
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どうして...こんなことになってしまったのかしら.....
どうにか自力で王宮へと帰った私は、ダニエルに怒りをぶつける気でいた。
しかし、なぜが門の時点で兵士に止められてしまった。
「マリアンヌよ!ダニエルの婚約者の!」
と言っても、誰も取り合ってくれない。
どうしようもなくなって、ハイドローザ家を探して回った。
ドレスもどろどろになり、靴擦れができて痛い。
やっとハイドローザ家に着いたときには、朝日が昇っていた。
「ママ!私よ!」
ここでも門番に取り合ってもらえなかったので、仕方なく声を張り上げる。
小鳥のさえずりと言われた声も、いつの間にかガラガラになっていた。
ママもハイドローザ公も、私の声に気づいて出てくることはなかった。
私は力尽き、門の前に座り込んだ....
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