少年悩む
「うー……。うー……。…………うがああああ!!!!」
「うるさい陽平」
陽平と涼は陽平の部屋で向かい合って教科書に向かっていた。ちなみに今はテスト期間中である。勉強というものが大嫌いな陽平は開始30分足らずで教科書を投げ出した。そんな陽平には目もくれず、涼教科書に視線を落としてペンを動かす。
「……なあ、ゲームするべ」
「しねえ。おめ、またテストの点落ちたらおばさんに怒られるだけでねぐ、先生さも部活やらせてもらえなくなるってね」
「それはいやだー!!!」
「したら勉強するったな」
床に転がり駄々をこねる陽平に涼が教科書を投げると、それが調度陽平のおでこにクリーンヒットした。今度は痛みに悶絶して床を転がり始めた。
「……忙しい奴だな陽平」
「い、今のはお前のせいだ……」
しばらく床でうずくまったあと、陽平はゆっくりとした動きでテーブルに教科書を置いて眺め始めた。
「……なあ、涼」
「何?」
「何で俺たちって勉強すんの」
「義務教育だから」
「いや、そうだけど……。数学とかいらねと思わね? 足し算と引き算できたら買い物はできるじゃん」
「……変な理由づけしてに逃げようとすんな。いいから問題集でもやれ」
涼は呆れたようにテスト範囲の問題集のページを開いて陽平の前に出してやる。あからさまに嫌な顔をする陽平を無視して問題集をさらに押し付ける。
「お前の点数がさらに悪くなったら、結局俺が教えねばいけねべ。めんどくさいから自分で勉強すること覚えろ。馬鹿に教えるのは疲れるった」
「……涼、ひでえ」
ぶつぶつと文句を言いながらも涼に見捨てられると、親にも教師にも怒られることが目に見えているため、陽平は大人しくいうことを聞いて問題集を解き始める。
「……涼、これどうやって解けばいい?」
「……ノートを見ろ」
「ノートなんてとってるわけねえべ」
「偉そうにするんじゃねえよ」
結局、涼はいちから陽平に勉強を教えなくてはいけなくなる。
陽平は問題集と向き合って頭を悩ませ、涼は陽平が理解できるようにはどのように教えるべきか頭を悩ませることになる。互いにテスト前は毎回このような状態になるのだ。