少年叫ぶ
「なぜだ」
「なにが?」
「なんで、なんでここはこんなに田舎なんだよおおおおお!!!」
見渡す限りののどかな田園風景に向かって一人の少年が叫んでいる。その声に反応したのか電線に止まっていたカラスたちが一斉に飛び立った。肩で息をしている少年の後ろでガードレールに寄りかかりながらもう一人の少年が月曜日発売の漫画雑誌を読んでいる。
「陽平うるさい」
「だってよ、涼! どこを見てもあるのは畑! 田んぼ! 山! 背の高い建物なんて全然ないし、遊ぶ場所もねえじゃねえか!」
「そんなの今さらじゃん。俺らはずっとここで育ってきたんだよ」
「飽きた」
「飽きたって景色は変わらねえよ」
漫画雑誌から顔を上げることをせず、涼は淡々としゃべる。そんな彼とは対称的に陽平は興奮、というかもう怒りに近い感情を大きな声でぶちまける。
「もう、俺は都会にいきてえ!」
「どうやって」
「……大学を県外にする!」
「お前の頭で大学に行けるとか思ってんの?」
「……じゃあ、就職を県外にする」
「お前農家の長男じゃん」
「………道は絶たれた」
「諦めんの早いな」
道路にうずくまる陽平に涼は冷たい視線を送った。
「陽平、いい加減帰るべ。一応、今テスト期間で部活休みなんだから」
「帰ったっておれは勉強しない」
「威張るんじゃねえよ。ほら、帰るぞ」
置いていたスクールバックを持つと涼は陽平を待たずに歩き出す。
「あ、待てよ。置いてくなよ!」
陽平も自分のバックを持って涼の後を追う。
二人は中学二年生。現状不満へのも溜まりやすい時期である。
突発的に書き出したものです。更新の頻度はこちらもまちまちで……。