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即興小説

かつての独裁者の記録

作者: 百賀ゆずは

お題:消えた独裁者 必須要素:チューペット 制限時間:30分

 おまえのものはおれのもの。

 おれのものもおれのもの。


 かの名作漫画のかの名言を地で行く人間を、ひとり、知っている。


 ユキオは僕の幼なじみだが、非常に我の強い人間で、こうと決めたら譲らない。

 いつぞや犬を拾った時もそうだった。

 「元の場所に戻して来なさい」と親に諭され、「わかった」と出て行ったきり家に戻らない。

 心配した親御さんが僕の家に心当たりを尋ねに来たそうだが、何しろ僕もその時家にいなくて、両家はちょっとした騒ぎになった。

 数時間後に、通学路から少し外れたところにある公園の、ドーム状の遊具の中に、犬を抱えたユキオと付き合わされて泣きべそな僕が見出された。

 もちろん叱られたけれど、ユキオは逆ギレして、親御さんに食ってかかった。

 その余りの剣幕に親御さんがやや譲歩して、それでは犬は飼い主を見つけるまで面倒を見ることを許す、と言ったのだが、ユキオは納得しない。

 自分で飼えないなら保健所へ連れて行く、そして自分が抱っこしたまま、注射を打って処分してもらう、とまで言う。

 そのうち、保健所の手など借りない自分でけりをつける、と言い出しかねない勢いに、仕方なく親御さんは折れて、犬は晴れてユキオのものとなった。


 これだけ語ると、何だかいい話に聞こえてしまう懸念もあるが、いやいやいや、付き合わされる身としてはたまったものではない。

 大体、僕としては、生き物を飼うなんてそんなめんどくさいことにはそもそも反対で、なのに保健所だの何だの、ユキオは僕を付き合わせる気満々で、やめてよ夢見が悪いよ、それならまだ飼えるように応援するよ、と、半ば無理矢理言わされた次第。


 案の定、犬の世話や散歩に、僕はかり出された。


 真夏だろうが真冬だろうが、犬とユキオと僕で歩き回る。

 暑い暑い日に、おばさんが「いつも悪いわね、ありがとうね」とチューペットをくれたときがあった。

 あろうことか、ユキオはそれを二つに折った後、二つとも自分の口に突っ込んだ。

 その時は僕も怒って、だったら最初から二つに折るな、意地が悪いにも程がある、と、家に帰ってしまった。

 少しして、ユキオが珍しくしゅんとして訪ねてきたが、手にしたチューペット(新しくもらったらしい)を結局半分しかくれないあたり、独裁者だ。


「何がおかしいのよ」

 あれから数年、チューペットをかじりながら雪緒がふくれる。

 今は、ちゃんと半分こにしてくれる幼なじみ。

 すっかり綺麗な少女になった。

冒頭の文言にとんでもない間違いをしたので、さすがにこちらに転載するときに直しました。


 おまえのものはおれのもの。

 おれのものもおまえのもの。


↑になってまして、全然何の問題もないじゃん! みたいな。


もう少し尺があれば、逆手にとってどうこうも出来るかもしれませんが、ぎりぎりでした。

犬の話に時間を割きすぎた。


独裁者が「消えた」経緯やきっかけをむしろ書くべきか、とか、細かい言い回しとかも何か足りなくて、好きなんだけどもやっとするものになってます。

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