久し振りのデート……まがい
翌日トモハルが地球の服で歩いているのを見つけた、日記に記載してあった休暇だと思ったマビルはすかさず。
「ねぇ!」
上から声をかけたのだ、唐突に。地球へは、城地下一階に設置されている転移装置から行くことが出来る。
見上げたトモハルの表情は不思議そうで、不機嫌だった。
「地球に行くの?」
機嫌が悪い事は見てとれたのだが、それでもマビルは訊いてみた。服装からしたら訊かずとも解る事だったが、それしか言えなかった。
戸惑いがちにトモハルは頷くと、そのまま歩き出したので慌てて引き止める。
「あ、あたしも行ってもいい!? な、何しに行くの?」
「え? ……何って、買い物とか」
「ちょ、ちょっと待ってて! 着替えるから!」
「え? え?」
マビルは有無を言わさず部屋に全力で戻ると、クローゼットを勢いよく開いて中のものを引っ張り出す。着ていた服を豪快に脱ぎ捨て、放り出した衣服を全身鏡であてて確認しながら真剣に選び始めた。
服が決まらない、小物も決まらない。たくさんある衣服なのに、しっくりこない。
一時間半かかってようやく納得できたコーディネートが完成した、慌ててマビルは部屋を飛び出す。
結局以前トモハルが買ってくれた物で全部揃えた、息を切らせて走れば、トモハルは壁にもたれて待っている。横顔は、無表情で少し近寄りがたかったが。機嫌が悪そうだったので、一人で行ってしまったかと思っていた。けれども、優しいトモハルのことだから待っていてくれるのだろうなとも思っていた。
素直に、嬉しかった。
「お、お待たせ!」
「……行こうか」
「う、うん。あ、あのさ、えーっと、彼氏と今度行く旅行の服が欲しいんだよね! 可愛いの、買ってよ」
「……あぁ、そっか」
どんどん声のトーンが低くなるトモハル、二人は無言で歩き出すと地球へ向かう。
昔、買い物といえば二人は手を繋いでいた。しかし、前を歩くトモハルの手は片方はパンツのポケットで、片方はぶらついたままである。歩幅も以前より大きく、ヒールが高いマビルは離れないようについていくのがやっとだった。昔は、マビルのバッグもトモハルが持っていてくれたのだが、今日は声すらかけてこない。
「トモハルは、何買うの?」
「いや、特に目的はないんだ」
懸命に追いついて話しかけたが、どうも声が小さく元気が無いトモハル。迷惑なのだろうか、と不安になったがついてきてしまったので仕方がない。
地球に到着し、トモハルの運転でアパレルメーカーが並ぶ場所へと出向いた二人。以前よく出かけた場所だ。無論その時トモハルは高校生だったので、バスで出向いたが。
マビルは適当に服を見た、昔はトモハルが選んでくれたが今日は店の端でぼーっと座っているだけだ。お気に入りのブランドの店に何軒も入ったが、買う気が起こらなくて結局何も購入しなかった。
「昼、何食べる? あのイタリアンにしようか」
ぶらついていたトモハルは、店先に出ていた黒板を見つける。イタリアンのメニューを見て手招きしたのだが、マビルは別の店を指した。
確かに、興味をそそるランチメニューがそこには書かれていた。しかし、マビルは子供の頃食べたハンバーガーの店を指したのだ。ただのチェーン店でファーストフードである。安くて満腹感を味わうことが出来る、手頃な店だ。学生の頃はお世話になった。
怪訝にそこを見たトモハルだが、マビルが断固として推すので諦めてそちらへ出向く。子供達で賑わっている店内、油の香り、適当に注文品を受け取ると狭い席を確保する。
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