11. サンマを焼く女
「命を狙われているかもしれない状況で昼過ぎまで眠るとは度胸がおありですのね。そういえば昨日も木陰で昼寝してらっしゃいましたわね」
下着で寝ていたのでとりあえずその上にズボンだけを履いて、私はノックに応じ戸を開けた。廊下には昨日と同じように腰に手を当てたジッフェが立っていて、私の裸足と寝癖頭の間で視線を往復させてため息をついた。
「町に潜入して早々動き出しても目立つかと思って。今日はお休みだよ」
「呑気!それもかなり無理のある言い訳ですわね!貴方の敵は貴方が昨日町に入ったなんて誰も知らないから意味無いですわよ。知られていたらそちらの方が問題ですし」
私は欠伸をしながら奥へ引っ込み、ベッドに腰掛けた。特に許可したつもりはないが、ジッフェも私の後に続いて部屋へと入ってきた。
「そうかい。分かったよ。じゃあ今日は何する?」
「そんな、何して遊ぶ?みたいなノリで言わないでくださいまし」
呆れた調子ながら、彼女はそう言って机の上にバスケットを置いた。私がそれに気づいたことを確認してから、上に向けた掌でそれを示して続けた。
「お昼の残りですけれど、差し上げますわ。どうぞお上がり下さいな」
サンドイッチの詰め合わせだ。残り物などと言っているが別に齧りかけではない。それどころか、赤や緑の鮮やかな野菜や食欲をそそる紅色のロースト肉などの具材の色合いまでもが考慮されたであろう、センスの良い配置でぎっしりと並んでいる。売り物でもこんなに上等なものはなかなか見られない。
きっとこれもこの女の戦略だ。誑しこまれてはいけない。
だが、正直言ってかなり嬉しかった。丁度腹が減ったと思った時に、部屋から出ずに食事が出来る。こんなに素晴らしいことはない。
「ありがとう。いただきます」
部屋に一つしかない椅子にジッフェが腰掛けてしまったからというわけでもないが、私はベッドの上でサンドイッチを頬張る。その姿を見ながら彼女は黙ってこくりこくりと小さく何度か頷いた。これにて餌付け完了、とでも思ったか。実際かなり完了しかけているが。
「ここで私に会わなければ、どういう計画で事を運ぶつもりでいらしたんですの?」
私がサンドイッチを一つ食べ切り、二つ目に手を伸ばしたところで痺れを切らした様子で彼女が口を開いた。
私は構わず二つ目も口に詰め込み、もごもごしながら答える。
「昨晩話したように、僕は本当にただの一介の傭兵崩れなんだ。出来ることはそう多くない。とりあえず監視されているという事実を姉妹とハステさんに伝えて、この町から出るように促すつもりだった」
「不用意にただ伝えても、それを見張りに気取られたら藪蛇になりかねませんわよ。今はまだ泳がされていますけれど、いざとなれば彼らは手荒な手段を使ってでも対象をこの町に留めようとするはずです。ニャリキミヒ=エズチカがどういった理由で姉妹を追っているのかについては、昨晩お互い認識を共有しているのを確認しましたわね?」
私が咀嚼と会話を同時に行なう様子に露骨に目を細めて見せながらも、彼女は淡々と言った。たった一晩で私に対する態度の取り方を随分と的確に理解したようだ。さすがである。
「実際、対象を監視するよりもこの町に留めておく方が主な目的だろうな。メセが本調子に戻り次第、自ら乗り込んでくるつもりなんだろう。何もせず泳がせておく理由はそれ以外に思い当たらないし。それまで対象が町にいればよし、しかしもし気付いて脱出しようとするなら…ってところか」
「ええ、そのはず…そのはずですわ。でも何か引っかかるところがありますのよねぇ…。なんだか、ニャリキミヒさんは何かを待っているような、そんな様子に思えますの」
私は一瞬、手と口を止めてジッフェの目を見たが、すぐに三つ目のサンドイッチに視線を移した。
「待ってるって、そりゃメセの治癒をだろ」
「それは既に十分なのではなくって?貴方も彼女が元気そうなのをご覧になったのでしょう?どうもそれ以外の何かにタイミングを合わせようと待っている気がするのですが、ノラッド小隊への調査でははっきりしませんでした。そもそも彼らも知らされていないことなのかもしれませんわ」
ニャキは単に意地が悪いというだけでなく、おそらくはひどく残忍な性格をしているはずだ。メセにサトヤを殺害させた時にも何の葛藤も見られなかったばかりか、それを原因に対立したホルズのことも一度は殺そうとした。何らかの必要に迫られればエジヤ姉妹を殺害することすらも躊躇しないだろう。むしろ超能力を獲得することが目的であれば、サトヤに対してしたように、いっそ殺害したほうが都合がいいかもしれないのだ。彼女が今回の件について小隊にも伝えていない何らかのさらなる陰謀を秘めているのであれば、それが危険なものである可能性は高い。
「ふーん。一応気に留めておくけど、君の思い過ごしだといいな」
不安をかき消すようにそれだけ言った私の顔を、ジッフェが訝しげに覗き込んだ。
「…それだけですの?今、色々考えていらしたようですけれど」
食事にばかり気をやって適当な返事でやり過ごそうとしたのを咎められるかと思いきや、彼女は神妙な面持ちで私の真意を探るようにそう言った。こっちの女も怖いな。
「人の心が読めるのかい」
「貴方は気になることがある時ほど、おざなりな返事だけをして、そのまま黙って一人で考え込むタイプでいらっしゃいますので。頼るべき人が居る時にはもっと相談なさいまし」
たった一晩話しただけなのに、もう性格を断言された。そして実際その通りなところがあるのは否めない。
「負けたよ。お察しの通り、急に不安になってきた。やっぱり今からエジヤ姉妹の所へ行けないかな?仮に敵が何かを待っているのであればそれが来るより先に行動したほうがいいってのもあるし」
私は返事も待たずに食事を中断し、床に放り捨ててあった服を引っ掴んだ。
「たった今お伝えしましたように、直接会って話をすることは難しいですわよ。一方的に様子を見るくらいでしたら…、うわっ!急に着替えないで下さいまし!」
「大丈夫だよ。下は着替えないから」
「デリカシーゼロですわね!」
「ゼロの奴は下も着替えるよ。僕は一か二くらいはあるんじゃないか」
言い終わる前に、彼女は部屋の外へ出て行ってしまった。締まりかけた扉の隙間から怒鳴り声が入ってくる。
「明るい間は目立ち過ぎるから無理ですわよ!夜になったらまた迎えに上がりますので宿から出ないで下さいな!」
話の内容と裏腹になんてでかい声だ。本当に頼って大丈夫なのかこの女。
そして足音がどたどたと私の部屋から遠ざかっていった。足音もうるさい。
私はそのまましばらくぼーっとしていたが、着替えも途中のまま、残ったサンドイッチのほうを優先した。腹ごしらえの後は、夜までゼームの教えてくれた訓練でもするか。初日からいきなりずっとサボっていた。
「いよいよ密偵らしくなってきたな。これ…もしかしなくても余計目立ってないかい。みんな振り返るんだが」
私は先を歩くジッフェの黒いローブの裾を引っ張った。
「女装セットと二者択一で迷ったのですけれど、夜闇に溶けるほうが都合が良かったので、生憎の選択になりましたわ。そっちがお望みでいらして?」
彼女は一応こちらへ振り向いて返事をしたのだが、真っ黒いフードですっぽりと覆った彼女の表情はまったく見えない。同じ格好をしている私の表情も、きっと向こうから見えてはいないだろう。
「いつもこんな格好で仕事してるの?」
「ダタラ修道僧はしばしばテンベナで托鉢をなさいますから、それほど不自然な存在ではありませんわよ。堂々となさいまし」
極度の禁欲主義で知られるダタラ派は山岳地帯の土着信仰と融合したテリ教の一宗派だ。聖職者の人前での肌の露出を一切禁じている彼らは、顔面も含んだ全身を完全に無地の真っ黒のローブとフードで覆い隠している。その特徴ゆえ、帝国中で知名度がある。変装の定番としてだ。
「あからさま過ぎて逆にやばいんじゃないかい。敵も僕らが変装して接近してくるってことくらい予想しているだろうし、真っ先に怪しむだろ」
「目立つのは往来に居る間だけですわ。灯りの無い裏路地に入れば姿そのものが見えなくなりますので。確かヌビクさんが樹海の秘密書庫でお会いしたカナベロとおっしゃる方も黒のローブだそうですわね?彼もダタラ派なのかしら」
修道服は亜麻布だが、よくよく思い出すとカナベロの衣服は見覚えの無い生地で織られていた。それになんかデザインもちょっと洒落た感じだった。あの衣装も例のノンド樹海にある数々の不思議なものの一つなのかもしれない。
「違うはずだ。そもそも彼はテリ教徒じゃないし。それどころか聖テリのことを偽の神だとかなんとかって否定して…あ、言わないほうがいいかいこういうこと。僕の言葉じゃないからね」
見るとジッフェはフードの上から耳を塞いでいた。
「ひい!聞きたくないですわ!!そんなとんでもない方がいらっしゃるものなんですのね!」
自分のような信仰心の薄い人間からするとどこまでが口にして大丈夫な範囲なのか線引きが難しい。書庫でカナベロに出会ったのがジッフェでなく私でよかった。
騒がしい彼女の言った通り、私たちはすぐに路地へ入った。
「本当にほとんど姿が見えなくなった。あんまり早く歩かないでくれよ」
「仕方ないですわね。はぐれないように、手を繋いで進みません?」
「えっ!」
私は驚いて歩みを止めた。赤面しても顔を見られずに済むのは幸いだ。
「や、やめてくれよ。子供じゃあるまいし」
「婦女子と手を繋ぐご自分を子供と形容なさるんですの。恋愛経験の乏しさがバレますわよ」
「うるさいな!禁欲主義の修道僧が手を繋ぎ合って歩いてたらおかしいだろ!君のローブの端をつまんで歩くよ。それでいいかい」
「慎ましいこと!ふん!それでも結構ですわよ」
…当然ながら、手を繋ぐ事は私にとってまんざらでもない。しかしどうもこの女は戦略として私に好意を抱かせようとしているような感じを受ける。これから会いに行く人物が若い女性ばかりであることも関係しているのかもしれない。自分の存在を彼女たちよりも相対的に大きなものとしておくことで、いざと言う時に私を御し易くなると考えているのかもしれない。
「…何か今、ひどく自意識過剰気味なこと考えてらっしゃいませんこと?」
彼女は歩きながら、暗闇の中で多分振り向いた。
「そんなことない。むしろ逆だよ。いや、そうでもないのかな…。なぁ、君って色んな人にこういうことしてるのかい」
「まあ!よくもそんな最低な台詞がスッと出て来るもんですわね!なるほど絶対モテませんわ!」
否定はしないんだな。むしろ勢いよく相手を非難することでやり過ごしたようだ。
路地の出口に差し掛かった頃、ジッフェはローブの長い袖から人差し指を出して正面を示した。一般的な帝国人よりやや濃い肌色の彼女だが、暗闇の中ではその細い指は白く浮かんで見える。
「見張りを回避する最も効果的な手段は至ってシンプルですわ。先にこちらから発見するだけです。予め対象の情報を入手していることが前提ですけれどね。あとは少し観察すれば監視範囲は把握出来ます」
「あの顔は見覚えがあるな。ノラッド小隊の上級隊員だ。名前は…ええと…」
彼女が指した先、通りを隔てた向こう側、閉店後の商店の入り口の戸にもたれ掛かって欠伸している一人の男の姿を認めた。彼の顔は隣で営業中の酒場の明かりでぼんやりと照らされ、何とか見分けることが出来た。その酒場こそが私たちの目的地でもある。
「ヨモラ=ヨル氏ですわね。小隊の中では比較的古参で、一刀流の剣術はあのノラッド隊長からも認められるほどの腕前だそうです。ただ、厭世的な性格の持ち主で意欲に乏しく、そもそも女性の監視という任務には否定的な立場です。建物の裏手に回ればそこまで確認なさることはないでしょう。彼が当番で幸運でしたわ」
今更別に驚くことでもないが、小隊に実際に所属していた私よりもはるかに詳しかった。
私とジッフェ、二つの黒い影は素早く通りを横切り、酒場の側面に回る。内部を覗ける高さの窓は無いが、一階天井付近の位置にある窓から明かりと声、そして食事の匂いが漏れている。不自然に身を屈めずとも内側からこちらの姿を見られることがないのはむしろ都合がいいかもしれない。
「彼女たちはここで間借りしているのかい。とすれば居室は二階になるんだろうか」
「間借りもしてらっしゃいますけど、この時間帯なら一階にいらっしゃるはずですわよ」
「一階って酒場だろ?既に営業中のようだが…」
既に陽が落ちているとはいえ、まださほど遅い時間ではないためか内部の客はまばらなようだ。一般的な酒場はもうしばらく経ってから忙しくなるものなのだろう。
窓の真下、建物からの明かりを頭上に浴びながら、ジッフェが手招きした。彼女は人差し指を顔の前で立てると、――ようやく――声を落として囁いた。
「…丁度この裏が厨房です。聞き覚えのある声が聞けますわよ。さあ、どうぞ、耳を澄ませて…」
厨房は客席のある広間から壁を一枚隔てているらしく、その窓からは従業員の話し声だけをはっきり聞き取ることが出来た。
「おい、聞いたぞ。昼間俺が居ない時にまた客と喧嘩したそうだな」
中年男の声に聞き覚えは無い。私の知り合いはその話し相手の方だった。
「はあ、店長の指示通りに行動したまでですが。セクハラ客はその場で蹴り出せって、こないだ言ってたでしょう」
「あれはお嬢に向けて言ったんだ。たとえ真昼間っから酔っ払ってたっておめえみたいなガキにセクハラする客なんか居ねえだろうが」
「その発言もセクハラですね。店長も私にお尻を蹴っ飛ばして欲しいんですか?」
アイリスの声だ…。
え…?まさかここで働いているのか?
アイリスが労働をしている?あのどうしようもないろくでなしの引き篭もりが?
「あぁ、クソッ…。お嬢がおまえとセットじゃなきゃ働かないって言うから仕方なく使ってやってるのを忘れるなよ。そのお嬢はまだ上か?もう帰って来てんだろ?」
「上で支度してます。すぐ降りてきますよ」
ジッフェも宿屋の老夫婦からお嬢と呼ばれていたが、こちらの酒場の店主の言うお嬢とは別人を指しているのだろう。そんなあだ名で呼ばれそうな人物は恐らくオーリスのほうではなさそうだ。
「ほら、また客が来たみてえだ。今日もすぐ忙しくなるな。あの子のお陰で繁盛してしょうがねえ!もっと人を雇わねえと…。なあ、おまえの姉貴はその気は無いのか?」
「無いですね」
「あの調子じゃ使えねえか。見栄えについてはおまえよりよっぽどマシなんだがなあ…。まあしょうがねえ。アイリス!お嬢が来るまで俺が給仕するから、おめえはサンマでも焼いてろ!」
「はぁい」
男の足音が遠ざかり、厨房にはアイリス一人が残されたようだった。
窓に背を向けたジッフェが見返りながら手招きして囁く。
「彼女が働いていることが意外でして?…えっ、そんなに!?震えるほど!?」
「ああ…意外だった…。まさかあのアイリスが…信じられない」
あのアイリスが人の店で従業員として雇われている。なんだろう、この途方もない置いてけぼりを食らったような感覚は。
「ちょっと…しっかりなさいませ。これじゃ話が続きませんわよ。もっと気になることもありましたでしょ」
「どうやらハステさんも同じように働いてるみたいだな。でも、オーリスさんは違うのか」
確かに気になる。何らかの必要に迫られて労働せざるを得ないのであれば、立場や性格上、引き篭もりで対人能力ゼロの妹のアイリスより、世話焼きで真面目な姉のオーリスが率先してそれを行なうのが自然な成り行きのはずだ。
「まさか体調を崩したりしているんだろうか。君は知ってるんだろ。こんな事をもったいぶらないでくれよ」
「後で、もっと落ち着いた状況できちんとお話し致しますわ。あるいは…直接貴方の目で確かめられる機会があればいいのですけれど、ちょっと難しいかしら」
「オーリスさんが上に居るのなら、例の能力で僕の存在に気が付いているかもしれないな。裏口からでも出てきてくれればいいんだけど。あれ?でもそれなら自分たちに見張りが付いていることにも気が付きそうなものだな…」
彼女が私たちにその能力を見せたノンドバド村は、周辺のかなり広い範囲までほんの数十人程度の人間しか居ない環境だった。探知範囲内に何百、あるいは何千という人間が存在する都市においては入ってくる情報量が多過ぎて能力に何らかの制約が付くのかもしれない。
「…もう少し様子を見ましょう。中から微かに足音が聞こえますわ…。ハスタリメノ様が降りていらしたようですわね」
魚の焼ける匂いと一緒に、窓から声が届いた。
「またサンマだ!アイリス=エジヤ!サンマを焼く姿がだいぶ板についてきたな!」
「まあ、きっと褒めてるんでしょうね。そんなに嬉しくないですけど」
「サンマの焼ける匂いは帝都を思い出すなあ。この辺で食べられるようになったのは最近らしいぞ。例のリベイマ商会の開拓した海路のお陰だとか」
「ふん、リベイマ!初めて聞く名前ですね」
「今度ししゃもも焼いてくれ」
「ハステさんに焼いてるんじゃないですよ。はい、これ盛り付けたら運んで。食べないで下さいよ」
「了解!」
大して意味のある会話は聞けなかったが、やはりハステもここで働いていること、そして彼女は元気であることは分かった。また、元気であるということはオーリスの身に起きていると思われる何らかの問題もそこまで深刻なものではないようだ。私はとりあえずは胸を撫で下ろした。
少しの後、客席からわっと歓声が上がるのが聞こえた。
「おー、来た来た。皆さんお待ちかねはこいつだろ?じゃあ給仕は交代だ。目障りなおっさんは厨房へ引っ込むとするぜ」
ハステが給仕を始めた途端に店内が突如として賑やかになった。主役の登場によってこんなにも場の空気が変わってしまうなんてまるで劇場か何かのようだ。あの器量と性格なら人気者になることに不思議は無いが、絶対間違いなく何が何でもありえないことだが、給仕以外の仕事とかしてたりなんかはしないんだろうか。天地がひっくり返っても絶対そんなことはしていないはずだが、男どものこの盛り上がりようは不安になる。さっきセクハラ客は蹴り出せと話していたから大丈夫なのは間違いないが。ああ、どんな服着て仕事してんだろ。まさか無駄に肌の見える格好とかじゃないだろうな。うーん…中を見たいな。
「中の様子を見たいんですの?」
隣のジッフェがどことなく呆れたような口調でそう囁いた。
「出来るのかい」
「無理ですわよ」
こいつ。




