今年と来年を思って、祈って。
「もう少しだね」
突然彼女が言い出した。
彼女は窓から空を見ていた。
空は晴れているのに、雪が降っていた。
「何が?」
俺がそう聞き返すと、彼女は俺の顔を見て答えた。
「もう年越しだってこと。クリスマスが終わったばっかりなのにさ」
「そうだね」
「明日で1月1日だよ。本当、早いよね…」
「ああ」
彼女はまた空を見つめる。
そんな彼女に俺は尋ねた。
「今年、何かやり残したことでもあるの?」
「え…?」
空を見つめていた彼女を見て俺はそう思った。
彼女は答えた。
「……うん。やり残したことは、今すぐには思い出せないや。今年もいろんな事があったからね。でも、後悔したこととか、やり直したいって思ったことはあったよ。でも時間は進んでいく一方で止まってはくれない」
「ああ」
あの時、こうしていれば良かった。あんな風にていれば良かった。
きっとそう思うときがあったと思う。
「けれど、後悔していただけじゃなかったから。嬉しかったり楽しかったりしたこともあった。だから幸せを感じられる。だから、今のままでいい。そう思うんだよね」
「そっか」
彼女は空に微笑んだと思うと、不意に俺を見て問う。
「来年、何かしたいことはあるの?」
「来年…か」
あと数時間もすればこの年の数字が変わる。
来年。その響きは遠いものに感じで、実感がないのは気のせいだろうか?
「そうだな…チャレンジしたいことはたくさんある。でもいっぺんに出来る訳じゃないからさ。一年もあるんだ。いや、一年しかないって言う人もいるかもしれない。まぁとりあえずしっかり生きること……かな?」
「“生きること”なんて、普通だけど、結構大変なことかもよ?」
彼女はくすくすと笑う。
俺は言葉を選んで答える。
「俺が言いたいのは、後悔する事が無いような毎日を過ごす。そのためにしっかり生きるって事」
「やっぱり大変そうだね…」
後悔しないようにかぁ、と彼女は言いながら空を見上げた。
「苦しいことや、悲しいことがあるかもしれない。けど、嬉しいことや楽しいことがあるかもしれない。幸せだといいな。しっかりとその時間を過ごしていった未来の自分がさ」
俺がそう答えると彼女は、俺を見て微笑む。
「そうね。あ、そうだ。初詣、行かなくちゃね。幸せになりますようにって」
「ああ。そうだな」
「何をお願いしよっかなぁ」
あなたは今年、やり残したことはありませんか?
そして、来年何かしたいことはありますか?
やり残したことはもう時間は戻れないけれど、
今年最後に、思い出してみるのも良いと思います。
今年に“お疲れさま”を告げて
来年も 未来も 誰もが
幸せな年になりますように―――――…
そう祈ります。
ありがとうございました!