プロローグ
今、付き合っているこの女性を幸せにする自身がある。
でも、僕はたぶん幸せになれないとおもう。
それでも、いい。ただ彼女が幸せであれば。
拓馬とナナは幼馴染で二人とも小さいころから、仲良く腐れ縁みたいなものの延長せんで、付き合うことになった。
小さいころから、お互い知っているからか、付き合い始めはとてもきこちなく、どうも変な気分におそわれたことを覚えている。
しかし、やはり長年の付き合いだけあって相性はとてもよく、お互いがお互いの感情のコントロールが十分にでき、どこで怒ったり、悲しんだりするのかという瀬戸際を見極めていた。
なので、ふたりはほとんど喧嘩することは無かった。
ふたりが男と女の関係になったのは、大学を卒業してからだった。拓馬とナナは高校から複数の人と付き合ってきたけど、だれを一番愛しているのか、一緒にいたいのか。それを知っていた。
大学を卒業して、地元でたまたま会うことがあった二人は、当時どちらも彼女、彼氏はいたけれど、さしぶりに顔を合わせた男と女は、男はより男に、女はより女になっていることにすぎに気づいた。そして、男と女は、自らの野生の感情に気づいた。
関係をもってはいけないと思っていた二人にとっては、より熱く燃え、愛し合った。
しかし、拓馬はこのとき、ナナを愛していたことを悟っていたと同時に、彼のもつもう一つ感情も悟っていたのだ。
そしてその感情は、彼を決して幸せにさせない感情であると彼は大人になってからずっと思っていた。