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呼ばれた声の向こう  作者: サク


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2/7

2 二人でひとつだったから

まだ二人とも、社交の意味をよく知らなかったころのことだ。


春の終わりの午後で、庭の芝は明るく、花壇の縁だけが少し濃い影を落としていた。エリンが裾を持って歩く少し先を、クラリスはほとんど駆けるように進んでいく。目についたものへまっすぐ寄っていくところは、そのころから変わらなかった。


「見て、エリン」


花壇の脇でしゃがみ込んだクラリスが、手の中の白い花を差し出す。小さくて、薄くて、触れればすぐ形を失いそうな花だった。


「きれいでしょう」


エリンもその隣にしゃがむ。花だけではなく、まわりの色も見る。少し離れたところに薄紫があり、奥には黄を含んだ白がまとまっていた。その中で見ると、クラリスの摘んだ白はたしかにきれいだったが、一本だけでは少し心もとない気がした。


「きれいよ」


「でしょう?」


「でも、それだけだと少しさみしいかもしれないわ」


クラリスは目を丸くした。


「さみしい?」


エリンはすぐそばの花へ手を伸ばした。


「こっちを一緒にすると、もっときれいに見えると思うの」


「どうして?」


「どうしてかは、まだうまく言えないけれど」


そう言って、二本を並べてみせる。


「一つだけだと、そこだけで終わってしまうでしょう。でも、少し違う形のものが隣にあると、白いところがちゃんと見えるの」


クラリスはしばらくそれを眺めて、それから笑った。


「面白いの」


そのあとも二人は庭を歩いた。クラリスは目についた花を摘みたがり、エリンは、そのたびに合うものを選んだ。やがてクラリスは、エリンが手を伸ばした花のほうを先に籠へ入れるようになった。


「それでいいの?」とエリンが聞くと、クラリスは不思議そうにした。


「いいわよ」


「だって、最初に見つけたのはクラリスでしょう」


「でも、咲かせるのはエリンのほうが上手だもの」


花を摘み終えて、東屋の石段に並んで座る。籠の中には白、薄紫、青みを帯びた小さな花、それからやわらかい葉が少しずつ重なっていた。クラリスはそれをのぞき込み、うれしそうに息をつく。


「きれい」


「ええ」


「最初にわたしが摘んだ白だけだったら、こうはならなかったわね」


「ならなかったかもしれないわ」


「エリンがいてよかった」


あまりにまっすぐに言われて、エリンは少し笑った。

そう言われるのは、たぶん初めてではなかった。


やがて侍女が二人を呼びに来て、そろそろ戻りましょうと声をかけた。クラリスは立ち上がると、当然のようにエリンの手を取った。


そのまま屋敷へ戻ると、応接間には母と、訪ねてきていた夫人が二人いた。窓は開けられていて、卓の上には茶器が並んでいる。


「まあ」


最初に気づいたのは客の夫人のほうだった。

二人の手元の籠を見て、それから並んで立つ姿を見て、目を細める。


「なんて愛らしいこと。お二人で摘んでいらしたの」


クラリスがすぐにうなずいた。


「ええ。でも、きれいにしたのはエリンです」


「クラリスが見つけたのよ」とエリンは言う。


夫人たちは顔を見合わせて笑った。


「まあ、本当にいつもご一緒なのね。並んでいらっしゃると、それだけで綺麗ですこと」


もう一人の夫人が籠をのぞき込む。


「この白をお選びになったのはどちら?」


「わたしです」とクラリスが胸を張った。

「でも、薄紫を入れたのはエリンなの」


「なるほど」


夫人は感心したようにうなずいた。


「白だけでは少し儚すぎますのに、こちらが添うと急に品が出ますわね。お二人でなさると、こんなふうに綺麗になるのだわ」


母もそのときはやわらかく笑っていた。


「クラリスさんは、昔から見つけるのがお上手なの」


すると夫人が、すぐに言った。


「そしてエリンさんは、どこへ置けばいちばん美しいかをご存じなのね」


クラリスはそれがうれしくてたまらないように、エリンの手をもう一度握った。


「ほらね」


「何が?」


「二人でやったほうが、ちゃんときれいになるの」


その言い方が、いかにもクラリスらしかった。

見たままをそのまま口にする、そのまっすぐさに、エリンは何度も救われていた。


結局、その花はその場で小さな花器に移されることになった。白がいちばん高いところに置かれ、その脇へ薄紫が添えられる。夫人たちはまた「まあ、なんて綺麗」と声を上げ、母も満足そうにうなずいた。


そのころにはもう、周囲も二人を一緒に見るのが当たり前になっていた。どちらか一人を褒めるというより、二人並んでいる姿に目を留める。片方が前へ出れば、もう片方はその隣にいるものとして扱われる。それを窮屈だと思ったことはなかった。むしろ、そういうものなのだと信じていた。


花器の中で、白と薄紫はよく馴染んで見えた。

夫人たちは笑いながら二人を見比べ、母もやわらかくうなずいていた。


あのころのエリンには、それがなくなる日のことなど、思い浮かびもしなかった。


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