第六章【暗雪への軌跡】
「そういえば、昨日スマホになんか来てたな、なんだろう。」
雪愛は、スマホをに手を伸ばす。
スマホに手を伸ばしているはずなのに、どんどんと遠ざかっていくように感じる。
でも諦めずに手を伸ばした。そしてスマホを手に取った。
そこには何も、何の通知も来ていなかった。
「あれ?ただの……勘違い……か、まぁいっか仕事に行こう」
疲れ果てた背中を尻目に、雪愛は会社へと歩みを始めた。
会社に着いたとき目に入ったのが、前浦野が座っていた机だった。
会社は、優れた社員がいなくなったということで大慌てだった。苦情なども来ているようだった。
同僚の中で1番仲の良い絢も仕事に追われていた。
「雪愛!来てすぐで申し訳ないんだけど、早く机に座って手を動かしてもらってもいい?」
と絢がパソコンと睨み合いながら、私に言ってきた。
「わ、わかった!今すぐ行く!」
来て早々雪愛は仕事に手をつけた。待っていた仕事は、浦野がなぜあのような事をしたのかという内容の記事を作成するというものだった。
「浦野の事、会社的にはあんま大ごとにしない方がいいんじゃないの?」と絢に聞いた。
「なんかうちの会社は、それを逆に記事にした方が、炎上もしないし儲かるんじゃないかって考えてるみたいだよ。」
「ふーん、そうなんだ。」
辺りを見回すと、会社にいる人は全員困った顔をしていた。そんな顔を見ていると私も早く手を動かさないと、と思ってしまった。
そして時を忘れて仕事をしているともう空は藍色に染まっていた。屋上に行き、夜空を見上げると星が藍色の空を駆け巡っていた。
そんな星もすぐ白露のように儚く散ってゆく、とまるで詩人のような言葉を思い付いてしまった。今でもあの波佐谷の言葉が忘れられない。
「……雪那は、死んだ可能性が高い……か……」
そんな訳ない!私は胸の奥底で叫ぶ、雪那は……まだ!……生きている!私は!……そう、信じたい。いつの間にか「ポタポタ」と、透き通った水色の涙が頬を伝い、流れ落ちていた。
「はぁーあ、はやく、家に……戻らないと……」
雪愛は、泣くのを堪えながら、情けない声でそう言った。
「ただいま!……」
雪愛の「ただいま」という声が誰もいないこの部屋の中に響いた。
「そうだった……誰もいないんだ……この部屋には……」
「もう遅いから寝ないと……」
そう言ってベットにもたれかかるその時、一瞬机の上に「招待状」という文字が書かれた紙があったように見えた。
「な、なにこれ」
そこには、
「招待状
こんにちは、雪愛様。私は、暗雪のものです。こんな形で招待してしまってすみません。用件は、手短に話すとしましょう。雪那さんに会えますよ。これだけです。
もし信じてくださるのなら、明日雪禍岳で待ってますよ。それともう一つルールがあります。
あなた一人で来て下さいね。これで以上です。
浜沢鷹也より」
明日……雪那が生きていることが確かめられる!
でも……罠かも……しれない。
これは賭けだ!私は最初の直感に従うことにする。これは、自分で決めた道……もう何が起ころうとも!後悔はない!
私は、心の中で誓った。
この出来事によって世界の歯車がまた回り始めた。私はそう感じた。




