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異世界の嘘  作者: 響飴


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2/2

美徳



朝食を終えたルネは、屋敷の庭へと足を向けた。風が柔らかく頬を撫で、木々の葉がさらりと揺れる。

ルネはふと、前世の記憶が霞のように浮かぶのを感じた。

けれど、それはすぐに風に溶けて消えていった。


庭の奥では母と父がすでに紅茶を楽しんでいた。

イザベルがルネの到着を告げると、母は微笑みながら手を振った。


「おはよう、ルネ。今日は舞踏会ね」

「おはよう、お父様お母様…ええ……そうですね」

ルネが椅子に腰を下ろすと、父が静かにカップを置いた。


「そろそろ“お相手”を探す時期だ。社交界に出るのも、意味があることだぞ」

「……」

ルネは紅茶に口をつけながら、言葉を詰まらせた。





母は優雅に笑みを浮かべながら、ドレスの色や髪飾りの話を始めた。

ルネはその声を聞きながら、心の奥に小さな波紋が広がるのを感じていた。

“お相手”――その言葉が、なぜか遠く感じられた。




部屋に戻ると、イザベルがすでに支度を始めていた。

鏡の前に座ったルネは、髪を整えられながら、窓の外に広がる庭をもう一度見つめた。

さっきまで歩いていた場所が、少しだけ遠くに感じられる。


「社交界ではね、嘘も美徳なのよ」

母の言葉が、ふと胸の奥に響いた。


ルネは鏡の中の自分を見つめる。

湖のような瞳。

でも、その奥にあるものは――誰のもの?




“嘘が美徳”――ね。

ルネはふっと笑った。

前世の記憶が、皮肉のように蘇る。

あの世界では、嘘が蔓延していた。

それを見抜くことが、生きる術だった。


この世界も、変わらない。

けれど――その美しさが、どこか悲しいと思うのは、私だけなのだろうか。

紅茶の香りが薄れていく中、鏡の中の私は、静かに笑っていた。




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