第9話:オークション
「……っ、レオナ!」
クロハは目を覚まし、レオナを探す。
「っ」
しかし辺りにレオナは見つからず、目に入ってきたのは見慣れた檻だった。
「金髪の子なら私が殺したぞ」
するとダロンが現れ、クロハにそう告げる。
「え?」
「お前は死ぬ瞬間を見てはいなかっただろうが、腹を大胆に貫かれたのは見ただろう、あの時点で生き残るのはほぼ無理、子供なら尚更だ」
「あ、え……」
クロハは現実を受け入れられない、いや受け入れたくなかった。
「ふっ、逃げようと考えるからこんなことになるんだよ……さて、私はやることが山積みなのでね、ここで失礼するよ。そんな気はもう無いだろうが、くれぐれも逃げるなよ」
ダロンはそう言い残し、檻に鍵をして去っていった。
「……」
◇
時はあっという間流れ、数日後、クロハが売られる日が訪れた。
ダロンはクロハだけのオークションでは退屈になると考え、複数の闇商人と大規模なオークションを開くことにし、クロハ以外にも数人の奴隷を連れて行くことにしていた。
そしてその結果オークションは大きく話題となり、当日会場には三百人以上の客が訪れていた。
オークションではさまざまな商品が出品されており、大規模ということで出品者も客も皆気合いが入っているようだ。
そうしてオークションは始まった。オークションはダロンの想像以上の盛り上がりを見せていた。
「次だな、いくらになるか楽しみだ」
オークションは何事もなく進み、クロハの番が来る。
ダロンは彼女に付けている、腕輪の鎖を持ち、彼女を壇上へ連れていく。
『さぁ! やって参りました、本日の醍醐味! 黒髪の少女! 貴重な闇属性、そして天賦を二つも持っている! その天賦も超再生、精神保護、と超ドM天賦の壊れにくい奴隷!』
司会がそういったクロハの説明を簡単にした後、入札が開始されようとした、その時。
「おい、そんな天賦本当に持ってるのか? 証明してくれよ」
客の一人がそんなことを言い出した。
「確かに、もしかしたらこれが嘘だなんてことも……」
「ありえるな……」
「いやいや、あのダロン様が嘘をつくわけないだろう」
その言葉で会場は騒々しくなっていく。
「皆様、静粛に」
ところがその声はダロンの言葉によって収まる。
「確かに、実際に目にしないと分かりませんよね、では私が今ここでこの娘に刃物で傷をつけましょう、そして傷が治る瞬間を皆様にはご覧いただきたいと思います」
そう告げてナイフを取り出すダロン。
「ではいきます、よく目を凝らしてくださいね」
「っ……」
クロハはダロンに右腕を切りつけられ少々顔をこわばらせる。彼女の腕からは血が流れており、その傷口を全員が注目する。
「お、おお……! 傷が塞がってきている!」
腕を切りつけられたことによって天賦が発動し、クロハの腕にできた傷が塞がっていく。その様子を見て、会場はどよめきに包まれる。
「どうですか? これで証明されたでしょう。精神保護の天賦についてはここで検証するのは難しいので、証明はできませんが」
『これだけでも、信頼は勝ち取れたことでしょう……では皆さんが納得したところで~! 入札開始ぃ!』
「銀貨一枚!」
「銀貨五枚!」
「金貨一枚!」
再生の天賦を見たことで、反論するものは居なくなり、司会の言葉によって入札が開始された。超再生のインパクトが強かったのか、次々と額が上がっていく。
この世界の通貨について説明しよう。
通貨は銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨とある。
銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚、そして金貨百枚で白金貨一枚と換算することできる。
「金貨七十枚!」
「金貨八十枚!」
「金貨八十五枚!」
クロハを巡って白熱した競り合いが繰り広げられていたが、金貨七十枚を越えた辺りから競り合う声が少なくなってきていた。
そろそろ落ち着くか、と誰もが思った時。
「白金貨五枚」
突如としてそんな大金を挙げた者が居た。
「なんだと……?」
「白金貨五枚……?」
「いかれてやがる」
白金貨五枚という言葉を聞いて会場は騒然とする。それもそうだろう、白金貨は平民なら一枚で五年は生活できると言われているほどの金額だ。それを五枚となると相当の額なのである。
『は、白金貨五枚! これを越える者は!?』
司会のその問いに答える者は居なかった。
『いない! では白金貨五枚にて落札ぅぅ! 奴隷史上最高額だ! 落札者は壇上へ!』
司会がそう言うと眼鏡を掛けている白衣を来た白髪の男が壇上へ上がった。
「ではお客様、この場で隷属の契約をしていただきます」
ダロンはしばらく落札額に驚いていたが、白衣の男が壇上に上がるとすぐに笑顔になり、そう告げて右手に持っているトランクから一つの首輪を取り出した。
「契約と言いますが作業は簡単ですよ、こちらの隷属の首輪と呼ばれる物をこの奴隷に付け、主となるお客様が、その首輪に魔力を込めるだけです」
ダロンは首輪を男に見せながらそう説明をする。
「ふむ、なるほど」
「フフッ、では続いて首輪の説明を致しましょう」
この首輪は主人がレベルを設定でき、全てで五段階のレベルがある、レベルごとに首輪の装着者への拘束力が変わる。
まずレベル一は基本的に自由、特に縛りが無い。
そしてレベル二は主人を害すことができなくなる程度だ。
レベル三はレベル二の効果に加えて、主人は首輪の装着者の居場所をいつでも知ることができるようになり、主人の命令を聞かなかった場合には首に少しの痛みが走るようになる。
レベル四はレベル三の痛みが増し、命令を聞かなかった場合想像を絶する激痛が全身に走るようになる。
そしてレベル五は主人の意思で首輪の装着者の体を自在に操ることができる、主人に命令されると装着者の体は勝手に動き、命令を執行しようとする。そしてそれに抵抗しようとした場合は全身が激痛に襲われることとなる。
「以上が首輪の内容でございます、どうぞ」
首輪の説明をしたダロンはそう言い、白衣の男へ首輪を渡す。
「ありがとうございます、では」
首輪を受け取った白衣の男は、先程ダロンに言われた通りに首輪をクロハの首に付け、魔力を込める。
「……」
その際、クロハは抵抗せず、ただじっとするだけであった。
「はい、隷属化は完了しました、もう魔力を込める必要はありませんよ」
首輪に魔力を込めている白衣の男にダロンがそう告げると男は魔力を込めるのを止めた。
「レベルは主が首輪に触れて変更したいレベルをイメージすることで変更ができます、現在はレベル四に設定されております、これで説明は以上となります」
「詳しい説明を感謝します、レベル云々は帰ってからにしましょう、では私はこれで」
ダロンの説明が終わると、白衣の男はクロハを連れて会場を出ていく。
その際も、クロハは抵抗すること無く、白衣の男に付いていった。
【あとがき】
黒葉
「超ドM天賦ってなに? あとそんなに私を苦しめたいの?」
空葉
「あはは……ごめんごめん,。それと私はあなたの人生を描いてるだけだから!」
黒葉
「……」
これからクロハはどうなるんでしょうね~、白衣の男とかもう大方予想が付いちゃいますが(;^∀^)
次回もお楽しみ!