番外編:理不尽
これはアストラ大陸とは違う別の大陸、リンカという大陸で起きた話である。
「これ貰うね~!」
「あ、こら泥棒――」
「殺されたくなかったら黙っとくんだよ?」
朱殷はラードルによって、リンカ大陸へと強制転移させられた後、すぐさま憂さ晴らしのために近くの一国を滅ぼした。そのお陰か、彼女の高ぶった気分は落ち着き始め、現在ではまた別の国で、服の調達を行っていた。彼女が今着ている服は、ラードルとの戦闘でボロボロになっており、服としての役割を果たせていないとまで言える程であった。
流石の朱殷も、ちゃんとした服は欲しかったようで、彼女はとある店の服を少し眺めた後、一番気に入ったものを持ち、そのまま店を出ようとした。
勿論店主はそれを許さず、止めようとする。しかし呆気なく朱殷に首を切断され、その命を落とすこととなった。
「キャァァッ!」
「し、死んでる……!?」
勿論、首を切断された店主の姿は他の客の目にも映り、店は騒がしくなる。
「もー、煩いってば!」
「――」
朱殷はその騒がしさに気分が悪くなり、騒いでいる客たちの首を素早く切断していく。
「うん♪ これで静かだね!」
「ひ、人殺しだぁぁ!」
静かになってすっきり、と思っていた朱殷であったが。その時店の外から全てを見ていた者に人殺しだと騒がれてしまう。
「え、何々?」
「人殺し?」
その結果街の人々に騒動は知れ渡り、どんどん街中が騒がしくなっていく。
「むぅー」
朱殷は不満そうだ。
余談であるが、朱殷は既にこの大陸の言葉をある程度分かるようになっていた。ラードルとの戦闘の際、彼の防御魔術を僅か数分で破れるようになったことからも分かる通り、彼女は適応能力も常人の域を超えているのだ。
「服着替えて行こー」
騒動なんて気にしないっといった様子で彼女はその場で服を着替え始めた。
「うんうん♪ ちょっと血で汚れてるけど着心地が良い!」
着替え終わった朱殷は店の外へ出る。
「そこのお前、動くな!」
「うーん?」
そこで騒動を聞き付けた自警団と遭遇、血を被った朱殷を見て、自警団は彼女が騒動の元凶だと考え、彼女に動かないよう命令する。
「いやーだ!」
「おい、動くな! さもないと痛い目を見るぞ!」
命令されるもお構い無しに動く朱殷、それを見て自警団の一人は更に声を上げる。
「痛い目ー?」
「そうだ、この銃で撃つぞ!」
銃、アストラ大陸では使われていないこの大陸独自の武器。魔力は使われておらず、弾丸を火薬で飛ばす仕組みである。
「ふーん、じゃあ撃ってみてよ!」
「なに?」
朱殷が見たことのない武器、銃。そこで彼女は好奇心に駆られ、銃の痛い目というものを味わってみようと考えた。
「本当に痛かったら、大人しくここから帰る、痛くなかったらあなたたちには死んでもらうね!」
「ふざけたこと言わないで投降しろ! これが最後の警告だ!」
朱殷は賭けのようなものを自警団へ提案したが、自警団はそれを一蹴した。
「ふーん、つまんないの。あ……最後の警告ってことはこっちが動けば良いんだね」
朱殷は自警団の反応が面白くなかったようだが、彼らから最後の警告と聞いて、動けば痛い目を試せると考えた、そのため自警団へと自ら近づいていていく。
「撃つぞ!」
「撃ってみてって!」
「っ……撃て!」
朱殷に脅しが効かないと判断し、遂に自警団は銃を撃つ。
「っ……ん、ちょっと痛い」
弾丸は数発朱殷に命中した。威力はあるようで、弾丸は彼女の体を突き抜けていく。
「効いてない?」
「いや、血は出てる!」
弾丸が数発命中しているのにも関わらず倒れない朱殷を見て、そこで初めて自警団は底知れない不安を感じ始めていた。
「んぅ~、そろそろうざったいよ? それに、折角可愛い服だったのにさ、どうしてくれるの?」
自分から仕掛けたはずだが逆ギレし始める朱殷。理不尽である。
「もっと撃て!」
「もう分かったから、死んで」
そうしていい加減自警団のことを鬱陶しく思った朱殷は炎の剣を生み出し、彼らへ振るった。
「もう一着もらうねー! あ、もう居ないんだっけ?」
そうして翌日。
「あーあ、つまんないの」
焼け野原を見下ろしてそう呟く朱殷。
あの後彼女は服を調達した国を滅ぼしていた。
国は必死に抗おうとしたが、彼女を止めることはできず、彼女の巨大な炎の剣によって一瞬で跡形もなく消え去った。
「もー、どこかに私を満足させてくれる相手はいないのー?」
そうしてまたどこかへ飛び立つ朱殷。
彼女は今日もこの大陸に理不尽を振り撒くのであった。
【あとがき】
読んでくださりありがとうございます。
次の更新は未定です。
それとこの物語、人の首飛びすぎですね。




