エピローグ:残ったもの
「そこのお嬢ちゃん、ちょいとワシと話をしないか?」
「……誰?」
「なに、通りすがりのただの老人じゃ」
「そう、話?……良いよ」
クロハはタルタ小王国とサーズ王国の国境付近の森へと足を運んでいた。
森の中でなら少し、息抜きができると思ったのだ。
そうして訪れた森の中で、彼女は一人の老人に声を掛けられた。本当にただの老人の様だ。
話をしようと言われ、クロハは頷いていた。
◇
「それでのう、ワシの妻ときたら……おっとすまんのう、ワシの話ばっかりじゃの」
「別に良い、幸せそうで良いね」
しばらくクロハと老人は、倒木に座って雑談をしていた。雑談と言っても一方的に老人が話すばかりであったが。
「そうじゃ、お嬢ちゃんの話も聞かせてくれんかのう」
「……」
「何やら思い詰めているようじゃし、ワシに話してみるのはどうかの?」
「……そうだ、ね。ちょっと吐き出してみようかな」
老人に促され、クロハも自身の話を、ため込んでいたものを吐き出すことにした。
彼女は話した。
村で幸せに暮らしていたことを、自分のせいで村が襲われ両親が死んだことを、奴隷となったこと、そこで友達ができたこと。友達が死んだこと、研究所に売りに出されたこと、そこで苦しい思いをしたこと。
そこから救ってくれた人たちがいたこと。彼らを守ろうと決心したこと。四年程彼らと共に幸せに暮らしたこと。
そして彼らを守れず失ったこと。隣国の知り合いも死んだこと。自身の師匠がいつまで経っても帰ってこないこと。大切な人の仇を殺したこと。
仇を殺しても、あまり気持ちが晴れなかったこと。
「もう、私には生きる理由が無い。そう、疲れたんだ」
全てを吐き出し、彼女は自身の曇った心の底にあるものを、見つけることができた。
生きる理由が無く。もう、疲れた。
それが今の彼女の心境であった。
「だけど、多分もう私は死ねない」
それは超再生があるから。その再生速度ではもはや死ぬのすら簡単ではない。
彼女はそう自分でも分かっていた。
「この世が、地獄に感じるよ」
「……」
老人はクロハが話し終えるまで、ただただ黙って聞いていた。
そして話し終わったのを確認し、老人はやがて口を開く。
「……何か残っているものは無いのかの? 失ったものばかり数えても仕方が無い、今あるものを数えるのじゃ」
「……今ある、もの」
クロハは考える、今残っているもの。
――無い
いや、ある。
彼女はリリアから貰った短剣を取り出した。
「あぁ、これがある」
リリアから貰ってから、ずっと一緒に死地を潜り抜けてきた大切な形見。
彼女の瞳から水滴が流れる。
「これが、あるよぉ……!」
そう言って、クロハは咽び泣く。
「……」
そんな様子の彼女を見て老人は、形容しがたいやるせなさに包まれ、それと同時にこう思った。
ああ、彼女には、もうそれしか無いのか、と。
【あとがき】
ぬい葉です。
『その先は朱か黒か……』これにて完結です!
まずはここまで読んでくださりありがとうございました!
初めての作品、それも長編作品なので無事に終わるか不安でしたがなんとか完結することができました!
私、この作品で伝えたいことが一応あるんですよね、ズバリ、『どんなに苦しく辛い人生を送っていても、いつか報われる、なんてことは必ずしもあるわけではないということ』です。国語の授業かよって感じですけど。
クロハは四年間リリアたちと幸せな生活を送れていたから報われていた、なんて意見もありそうですがね(;^∀^)
夢も希望も無く、絶望に叩き落とすような言葉で悪いのですが、これは私自身に向けたメッセージでもあるので、大目に見てください!
※追記。これだけだとなんか酷いなと思ったので。
夢も希望も無くても、たとえあったとしても。人生はなるようにしかなりません、なのであまり人生を悲観せずにいきましょう!
え……? まだ回収されていない伏線があるって?
すみません、その通りなんです。
実を言うと続編……という感じではないのですが、朱黒に繋がる物語がありましてですね、本日そちらも公開させていただたきました。『白紙物語』というものです。
私の本命(?)はそちらになります。
始めの二話だけである程度朱黒の伏線は回収されると思うので、是非二話だけでも読んでいただけたらなと!
ですが雰囲気は朱黒と真逆です。
『その先は朱か黒か……』と関連する物語↓↓
『白紙物語』URL→https://ncode.syosetu.com/n6364lb/
そして次に『その先は朱か黒か……』のメインテーマ曲について!
YouTubeにて朱黒のメインテーマ曲『朱と黒』を投稿しました、是非聴いてください!
『その先は朱か黒か……』メインテーマ曲↓↓
『朱と黒』URL→https://youtu.be/I4pyCcI4NME?si=lzRZ8QtmxXiZ5Jow
また文章や文字の修正、番外編などで朱黒を更新するかもしれませんが、本編はちゃんと完結です。
これにて伝えたいことは以上です。
改めてここまで読んでくださりありがとうございました!




