第46話:命運
「服貰おう」
しばらくし、走れるほどにまで回復したクロハ。そんな彼女は道中魔導士の死体を見つけた。
自身の服がボロボロであったため、彼女はそこでその魔導士のローブを着る。
そして再度、リリアたちを追って走り出した。
◇
(戦闘の跡、数匹の魔物の死骸、帝国兵たちが数人死んでる…………あれは、アズラ王国近衛騎士の隊服……!)
またしばらく走っていると、クロハは戦闘をした跡のようなものを見つけた。そして続け様に魔物の死骸に帝国兵の死体、更にはアズラ王国の近衛騎士の隊服を着た者の死体があることに気が付いた。
彼女の胸の鼓動が早くなる。
(近衛騎士の皆、ありがとうございました……大丈夫、皆が守ってくれてるはず――)
彼女は息の無い近衛騎士数人に心の中でお礼を言い、近くを見渡した。
しかしそこで彼女は見た。
「??」
"それ"に困惑を隠せないクロハ。
彼女は"それ"に近づいていく。
「なんだ、ハンズ様とリコット様かと思ったけど、首がないから違う、ね」
"それ"はまるでハンズとリコットの体のようであった。しかし首がない。
四年程前、似た光景をクロハは見た。
「服が同じだけ……そうだよ……あれ、前にもこんなことあったっけ?」
彼女も心の奥底では分かっていた、しかしもし断じて認めることなどできなかった。
「……そ、そうだ。早く、早くリリア様の所へ行かなくちゃ!」
そうして彼女はまた走り出す。嫌な現実から目を背けるように。
何かは壊れる寸前である。
◇
「はぁ、ここまでだね」
「ああ、貴様らのその首、貰うぞ」
これはクロハが来る少し前の出来事である。
近衛騎士は全滅し、残るはハンズとリコットのみ。二人も重傷を負い、もはや勝ち目などなく、あとは帝国兵に首を斬られるのを待つのみであった。
「すまない、リコット」
「何を謝るのよ、これは私も望んだことよ、最後にあなたと共に死ねるならまだ良いわ、それと約束を守ってくれてありがとう」
「そう、か。ちゃんと約束は守れたようで良かった」
そんな会話をしてる二人に刃が迫る。
もはや抵抗などできない。
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「よく頑張ってくれた! リコット!」
その日はアサークが生まれた日であった。
「この子を私たちで大切に育てていきましょうね」
「ああ」
その時の誓いはリリアの時も同じくしていた。
「大丈夫よ、私がずっと居るわ」
数年前に母を病で亡くしていたハンズ。この日は母に続き、父も病で亡くなった日であった。
「……ありがとう」
慰めてくれるリコットにハンズはそう感謝する。
いついかなる時も、二人はお互いを支え合い、大変なことが多くあっても日々に幸せを感じていた。
「この子たちは将来どんな人になるのかしら」
眠るアサークとリリアを見て、そう言うリコット。
「きっとお人好しで優しい子になるんだろうね、君みたいに」
「そうなったらあなたに似たことになるわよ」
「そうかな?」
「そうよ」
「……どんなことになっても、私はこの子たちを優先して守るわ」
「それは頼もしいね、僕もそうするさ」
「……でも、そんなことが起きないのが一番よね」
「そうだね、いつまでも平和であることを願うよ」
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共に過ごした日々、記憶が二人の中で蘇る。
「国王としては失格だったけど、親としての務めは果たせたかな」
「果たせたわよ」
「なら、良かった」
二人が最後にそう言葉を交わしたところで、リコットの首が落とされた。
(あとは頼んだよ、クロハ――)
続けてハンズの首も落とされる。
「アズラ国王と王妃を討ったぞ!」
ハンズとリコットを殺したという事実に、十数人の帝国兵たちが歓声を上げる。
「そこの二人、貴様らで帝国までこの首を持っていけ、その他は王子と王女を追いに行くぞ! あれから数十分しか経っていない、まだ近くに居るはずだ!」
「はっ!」
部隊長に指名された二人の帝国兵によって、ハンズとリコットの首はラストリア帝国まで運ばれることになり、その他の帝国兵はリリアたちを追うことにした。
ハンズたちができた時間稼ぎは数十分程である、それでも体を鍛えている帝国兵たちであればすぐにリリアたちに追いつけてしまう。
しかし丁度その頃、クロハが追い始めており、更にハンズたちを迎えに行くために動いていたサンクラット王国の軍が、魔の森に蔓延る帝国の軍と衝突をし始めたりと、事態は複雑に変化し始めていた。
リリアたちの命運は、もはや誰にも分からない。




