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その先は朱か黒か……  作者: ぬい葉
二章:鎮静
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第34話:ラストリア帝国

「ソラーヌ、元気でね」

「お前達もな」


 サンクラット王国で数日過ごしたクロハ達はその日、アズラ王国へと帰ることになっていた。


「アンジェロ、また遊びに行きますわ!」

「おう、私も次はそっちに行く」


 クロハ達はこの数日でサンクラット王都内を回ったり、ラードルの魔法授業を皆で受けたり、また冒険者の依頼を受けたりと、まるで旅行かの様に楽しんでいた。

 この数日間でアズラとサンクラットの仲は十分に深まったと言って良いだろう。


「それと、ハンズ、帝国には気を付けろよ」


 ハンズへ耳打ちをし、そう告げるソラーヌ。

 彼女がそう告げる理由は以前サンクラット王国内で多発していた行方不明事件が関わっている。

 この数日で、行方不明事件の真相が暴かれていた。

 元々、アズラ一同がサンクラット王国へと訪れる前にその犯人を捕らえて行方不明自体は収まっていたが、動機や行方不明者の居場所などを尋ねても犯人は何も言わず、何のために事件を起こしていたのかすら分かっていなかった。

 しかし度重なる尋問の末、この数日で遂に観念したのか、動機と行方不明者の居場所を吐いたという。

 結果、行方不明者はラストリア帝国内に居ると分かり、更に犯人も帝国から指示を受けた、と言ったことで今回帝国の関与が発覚したのだ。


 故に彼女はハンズへ警告していた。


「うん、分かっているよ」


 ハンズもその話を共有されており、分かっていると返す。


「私はできる限り戦争はしたくはないが、対話で駄目なら戦争も視野に入れている」


 ソラーヌは戦闘を好む者であるが、仲間が傷つくのは酷く恐れる者であった。ゆえに、武力で強大な力を持つラストリア帝国とは特に戦争をしたくなかった。だが、今回自国の民が攫われているため、戦争を起こすことも頭の片隅には考えていた。


「……そうか、いつでも言ってくれ、支援するよ」

「ありがとう」


 最後にそう話をして、ハンズは馬車へと乗り込んだ。


「また余裕があればそちらに伺う」

「無理しないでね、でもいつでも待ってるよ」


 そうしてアズラ一同乗せた馬車は、アズラ王国へと向かって動き出した。



    ◇



「ほう、サンクラットにバレたか」


 王座に居座りそう呟く黒髪でガタイの良い大柄な男は、ラストリア帝国皇帝、ゴルム・ラストリア。


「は、はい。そのようです……」


 ゴルムは、宰相から、サンクラット王国での企み――サンクラット王国の行方不明事件――がソラーヌにバレ、実行役が捕まったと報告を受けていた。


「やはりな。さあ、あの者はどう動くか……私の予想ではまずは対話、といったところか」


 ゴルムは観察眼に優れており、一度見た者の癖などからその次の行動を予測することが得意である。

 ソラーヌとゴルムは一度外交で相まみえており、彼は今回その際のソラーヌの言動から思考を予測しているのだ。

 そして奇しくも、それは当たっていた。


「下がれ」

「は、はい……ですが一つよろしいですか?」

「下がれと言ったはずだ、死にたいか?」

「い、いえ! 失礼しました!」


 宰相は、なぜサンクラット王国までも敵に回すのか気になり、ゴルムに聞こうとしたが、彼から殺気を向けられ怯えた宰相は、大人しく聞くことはせず、逃げるように城を出ていった。


 ゴルムがサンクラット王国とも敵対するのは理由など簡単である。彼はアズラ王国と良好関係を築いている全ての国が嫌いなのである。そしてサンクラット王国はアズラ王国の盟友とも言える国である、そのためゴルムは敵対するのだ。

 なぜそこまでアズラ王国を嫌っているのか、それはゴルムのみぞ知ることであり、そう遠くないうちに分かることだろう。碌な理由はではないかもしれないが。


「さて、ストラ、オダロン、それとエルディアに連絡しておくか」


 宰相が出ていくのを確認したゴルムは、そう呟いて玉座から立ち上がり、その場から去っていた。



    ◇



「無事に帰ってこられて安心しましたわ!」

「長かった」


 数日後、道中魔物に襲われ危険なこともあった帰り道であったが、クロハ達は無事にアズラ王国へ帰ってきていた。


「護衛の方々には感謝ですわね」

「御者の人にもね」


 負傷者は居るものの軽傷であり、誰一人として死ぬことがなかったのは、実力ある護衛と、安全な馬車の操縦を行った御者のお陰である。




「さて、しばらくは社交界以外の予定は無いね。みんな疲れただろう今日はゆっくり休もう」

「そうですね」

「社交界……王族って面倒ですわね」

「こら、王族に生まれた以上他の貴族と関わりを持つことは宿命よ、それに社交界は王族だけじゃなく貴族も行うのよ」

「む~、分かっていますわ!」

「なら良いわ」

「こうして私達が豊かに暮らしていけるのも民のお陰だからね、しっかりその民を導くものとしての役割を果たさなければいけない……さ、今日はもう休もう」

「はい、お父様」


 こうしてクロハ達の平穏な一日は、この日も変わらず終わりを向かえた。

【あとがき】


 これにて一先ずクロハの九歳時代は終わりです。

 幕間と人物紹介を挟んだら早いですが最終章に突入!

 始めは学院に通い始めますが、そこはパパっと駆け上がります。


 では幕間!

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