第33話:依頼完了
「死んだか」
ソラーヌの魔法による土埃が晴れ、絶命している変異オーガを目にしたソラーヌはそう呟く。
「ソラーヌ様! 残りを!」
「そうだな」
統率者を失った魔物達はバラバラに動き始める。
ある魔物は魔の森へ戻り、またある魔物は変わらず進む。
「チッ、あのオーガに構っていたせいで、クロハ達のほうに少し多く押し寄せているな」
「あいつらを信じろ、まずはここの魔物を一掃することが先だ」
「……分かっています」
一部が森へ帰っていくとは言え、まだまだ魔物は大量におり、戦いはまだ続くようである。
◇
「おっ!いっぱい来てる!」
「これ、捌ける、かな……?」
一方その頃、ソラーヌ達が変異オーガと相対し始めた辺り、クロハ達の元へ先程よりも多くの魔物達が押し寄せていた。
「捌くんだよー!」
そう言って嬉しそうに突撃するアンジェロ。
「わかってる!」
先程の二、三倍程の量の魔物達に少々怖じ気づきながらも、クロハも魔物へと武器を振るう。
◇
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です……」
「母さん、楽しかったけど疲れたよ」
あれから数十分。
魔物は無事掃討され、クロハとアンジェロはくたびれていた。
クロハは天賦によって傷が塞がっているが、戦闘中多少なりとも傷を受けていた。アンジェロも同様に、所々掠り傷が見られる。そのため二人は長時間戦闘しっぱなしだったのもあり、想像以上に体力が削られていた。
「無事で何よりだ……しかしあそこまで体を動かしたのは久しぶりだ、楽しかったな」
「あなた様は緊張感が無いのですね……」
悦に入っている様子のソラーヌに、クラゲーヌがそう言う。
「にしても……この魔物の死骸はどうするのですか?」
辺りを見渡してソラーヌにそう聞くクロハ。辺りには大量の魔物の死骸があり、悲惨な光景となっていた。
「魔物の死骸は放置していると魔力に分解される。だからそのうち消えてなくなるさ」
「そうなんですね……え、でもだとするのなら、冒険者ギルドの説明であった、魔物の素材の換金ってできませんよね?」
ソラーヌの言葉を聞いて、魔物の素材の換金はどうするのかとクロハは気になり聞く。
「ああ、このまま放置していたら消えてなくなるが、死骸から切り取った箇所は消えない、まあ体の半分以上を切り取ろうとすると消えるが……換金や鍛冶などで使いたい時はそうして体の一部を切り取って持っていくんだ。なぜ消えなくなるのか理屈は分からんがな」
クロハの問いにソラーヌはそう答える。
「それよりも、ハンズ達のところへ戻るか」
「そうでした」
「早く戻ろう」
◇
「本当にみんな無事で良かったです……」
「もう、クロハったら、心配しすぎですわ!」
「だって、魔物の死骸が三匹ある、ので」
「このぐらいの魔物が三匹程なら私達でも倒せるさ」
ハンズ達のところへ戻ったクロハ達であったが、そこで彼女らは魔物の死骸を見た。どうやらクロハ達に気付かれずに抜けた魔物が居たようだ。ただ、その魔物はハンズ達が倒していた。
それを聞いたクロハは一気に顔が青ざめ、彼らの怪我の確認をした。結果怪我はなく、そのことにクロハは酷く安堵していた。
「でも、久しぶりに実践だったから緊張はしたね、子供達も居たことだし」
「……今更だが、すまなかった」
「ん? 何が?」
「魔の森付近へ連れてきたのは私だ」
ソラーヌはハンズ達を魔の森付近へと連れてきたことに対して謝罪を告げた。今回は危険過ぎたのだ。
「まあ、こんなこと誰も予想できないだろう? こうして無事だ、気にしないで」
「すまないな」
「良いってさ……とりあえず、依頼を終らせよう、あと数本だね」
「……そうだな」
◇
「無事終わりましたわね」
「ああ、これで依頼達成だ」
「色々ありましたが、楽しかったですわ!」
あの後、依頼達成に必要な薬草を集め終わり、クロハ達はサンクラット王国の王都にある冒険者ギルドへと戻って依頼を終らせていた。
「次はどうしようか」
「今日は疲れただろう、宮殿に戻るか?」
「みんなどうする?」
「僕は戻っても良いよ」
「私もね」
「わたくしも今日は疲れましたわ」
「私も」
「じゃあ決まりだね」
そうして、想像もしない非常事態に疲れが出たクロハ達は、その日の残りを宮殿で休むことにした。