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その先は朱か黒か……  作者: ぬい葉
二章:鎮静

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第19話:クロハの覚悟

「それじゃあ、食べようか」


 使用人が持ってきた料理を、毒味役が毒味し、大丈夫だと確認が取れたところで、ハンズはそう告げる。


「では。自然の恵みに感謝を、いただきます」


 皆手を合わせ、そう言って食べ始める。


「……っ」


「食べても良いのよ?」


 なかなか食べ始めないクロハを見て、そう言うリリア。


 クロハは強烈な食欲に駆られながらも、あまりに豪華なため、食べて良いものかと迷っていた。


「遠慮せず食べると良い」


「そうよ」


「……いただきます」


 ハンズ達からの言葉を受け、耐えきれなくなったクロハはそう言って目の前に出されている料理へがっつく。


「お、おいしいっ……!」


 そう言って、久しぶりの美味しいご飯にクロハは思わず涙を流す。 


「そうか、良かった」


「料理人が聞いたらきっと喜ぶわ」


 料理を食べて涙を流すクロハの様子を見て、ハンズとリコットはそう言う。


「クロハ、これで涙を拭くのですわ、折角の可愛い顔が台無しですわよ?」


 リリアはそう言って、自身が持つ手拭いをクロハへ渡す。


「あ、ありがとう、ございます……」


「良いのよ、さあ食べましょう」


「うん……」



    ◇



「一緒に寝ましょう」


「……え」


 クロハは食事を済ませ、どうしてもというリリアと、一緒に入浴もしたところで彼女からそう言われていた。


「お嬢様、流石にわがままが過ぎますよ、それと無理やりは駄目ですよ」


 そんなリリアに呆れ始めていたカーラ。


「そうですわね、少し強引さがありました、ごめんなさい。ということで、どうですか?」


 元々強制させるつもりは無かったリリアだが、カーラの言葉を受けて、強引さがあったと自省し、今度は誘うようにクロハに聞く。


「……いい、ですよ」


「!」


 クロハの答えに驚きと共に顔を綻ばせるリリア。彼女はクロハが断ると思っていたようだ。


(私も、あまり離れたくないし……)


 実はクロハもそう思っており彼女には始めから断る選択肢など考えていなかった。


「嬉しいですわ! ではさっそく私の部屋へ!」


「はぁ、王女がこのようで良いのでしょうか……」


 一緒に寝れることで喜んでいるリリアを見て、そんなことを思っていたカーラであった。



    ◇



 深夜、辺りが静まり返った時間帯に、王城で一つの影が動いていた。その影はゆっくり、ゆっくりとリリアの部屋へ迫る。


 ――ギィィ


(?)


 扉が開いたような音を聞いて、リリアと一緒に寝ていたクロハは目を覚ます。


(!)


 何事かと思い、暗闇の中薄く目を開けたクロハは、そこで足音を立てずにゆっくりと近づいてくる者を見た。その手には短剣が握られている。


(また、失う……!)


「ッ!」


「なッ!?」


 短剣を見て、居ても立ってもいられなくなったクロハは、ベッドから起き上がり、近づいてくる者に素早く体当たりをして押し倒す。謎の者はそれに驚き思わず声を上げる。

 クロハは声から相手が男だと推測する。


「んぅ?……クロハ?」


 大きな物音を聞き、リリアは目を覚ます。


「このッ!」


「ぅッ……」


「き、きゃあッ!クロハ!?」


 男は、押し倒したまましがみついて離れないクロハの背中に短剣を刺す。痛みで彼女は呻き声を上げ、その様子を見たリリアは思わず悲鳴を上げる。


「邪魔しやがって……!」


「ゔッ」


 男はクロハを蹴って剥がし、そのまま転がった彼女に短剣でとどめを刺そうと迫る。


「あ、あなたクロハから離れなさい!」


「ぐっ」


 その様子を見かねたリリアは走って男に近づき、その勢いで男の横腹に頭突きを一発お見舞いする。


「何事ですか!」


 そこで大きな物音に気づいた三人の騎士が部屋へやってきた。


「明かりをつけます!」


 騎士の一人がそう言って部屋の明かりを点けたことにより、その場の騎士は事を理解する。


「お嬢様から離れろ!」


「チッ!」


 男は騎士が来たことに焦り、すぐさまリリアに短剣を刺そうと迫る。


「ぁっ」


「やめろおぉぉッ!」


 迫る短剣にリリアは動けない。その様子を見た騎士たちは彼女を守ろうと全力で走る。


(間に合わない……!)


 距離的にもう間に合わない、誰もがそう思ったその時。


「ゔぐっ……」


「こいつッ!」


「クロハッ!」


 リリアの前にクロハが入り込み、間一髪でリリアを守った。しかしそれによりクロハは首を刺される。


「お嬢様を守れ!奴を取り押さえるぞ!」


 呆気にとられつつも、そう言って騎士の一人はリリアを守るように立ち、二人は男を取り押さえに動く。


「ぐっ!」


「大人しくしろ!」


 二人の騎士は無事男を取り押さえることに成功する。


「クロハッ!クロハぁッ!」


「怪我は!?」


 リリアは首に短剣が刺さって血だらけになっているクロハを見て、泣きながら彼女の名前を呼ぶ。


「お、おちつい――」


「騎士の方! この子を!クロハを助けてください……!」


 クロハは痛みに耐えながらも、冷静であり、落ち着くようにと言おうとするが、リリアが完全にパニックになっていたため声が遮られる。


「み、見せてください」


「は、はい……」


 リリアを守るように立っていた騎士、長い金髪を一つ結びにしている青目の騎士はそう言って、クロハの状態を見る。


「っ!こ、これは……残念ながらこの出血量では恐らく助からないでしょう……」


「そ、そんな……!」


 金髪の騎士にそう告げられ、顔を青くするリリア。


「っ」


 そんな話をしている中、クロハは首に刺さった短剣を冷静に抜いていた。その際に痛みが強まり、少し顔を顰める。


「そんな、そんな……!」


「大、丈夫……! 見て」


「そんなわけ!……えっ?」


 泣いているリリアへ、クロハは少し声を荒げて大丈夫だと伝えて、首元を彼女に見せる。そんなわけないと思い、リリアはクロハを見たが、そこには傷跡すら無く、リリアは困惑した。


「治ってる?」


 騎士もそれを見て驚きと困惑を隠せないでいた。


「なんで……あ」


 なぜ、と困惑していたリリアだったが、彼女は思い当たる節を思い出した。


「元通りになる、そういうの持ってる」


 クロハはそう言って、安心させるためにぎこちなく笑って見せる。


(そういえばあの話でも言っていたように、この子超再生っていう天賦があるんでしたわ)


「……よ、良かったですわ……! 本当に!」


 リリアもクロハについて盗み聞きした話を思い出し安堵し、再度クロハを抱きしめる。


「……一先ず、大丈夫そうですね」


「おう、そっちの嬢ちゃんは大丈夫なのか?」


「なんかよく分からないけど大丈夫みたいだ」


「良かった~、お嬢様も怪我が無さそうだし」


 男を取り押さえていた二人の騎士も、縄に繋いだ男を担いでリリアとクロハの様子を確認する。

 二人の騎士は一方が銀の瞳に燃えるような赤髪をした大柄で気の強そうな男性であり、もう一方が薄緑色の髪と瞳をした細身の女性である。


「……とりあえず、俺は事を団長に知らせるから、アルーはこいつを適当な牢に入れといてくれ、ラーニはお嬢様達の護衛を頼む」


「分かった、気をつけてね」


「はいよ、ったくボロノは人使いが荒いな」


「まだ仲間がいるかもしれないからな、二人も気をつけろよ」


 三人の騎士はそう話して、髪を一つ結びにした金髪の騎士ボロノは事態を王都の騎士団長、クラゲーヌに伝えに行き。大柄で赤髪の騎士アルーは捕えた男を監獄へ送りに。薄緑色の髪の女性騎士ラーニはリリアとクロハの護衛としてその場に留まることとなった。


「お嬢様と、えっと」


「この子はクロハですわ!」


「クロハ様ですか、お二方無事?で何よりです」


「ちゃんと無事ですわ、この子も血だらけだけど大丈夫ですわ」


「そうですか、詳しくは聞きませんが良かったです」


「……うん、よかった」


 クロハは心の底から良かったと安堵していた。


(やっと、守れた)


 彼女は今まで両親も、レオナも守れなかったことを悔やんでいた。しかし今回はリリアを守ることができた。


(今度は、守る。守りたいものを、もう失いたくないから)


 リリアを守ることができた。その事実はクロハに自信と、新たな覚悟をもたらすことになった。



 ――翌日



「私は、ここで働きたい、です」


「おおそうか、大歓迎だ! あ、何か希望の仕事はあるかい? 分からないなら教えるよ」


 ハンズはクロハの言葉に多いに喜び、さっそく働く仕事についての話をする。


「護衛、です」


「護衛?」


 護衛と聞いて、ハンズは静かに驚く。


「はい」


「もしかして、昨夜の事が?」


 ハンズは少し威圧的にそう言う。

 昨夜の襲撃は既にハンズに知らされており、彼はクロハがその襲撃に何か影響されたのではと思っていた。彼は護衛という危険な仕事をクロハにさせたくないと思っている、そのため無意識のうちにクロハに少し威圧をしてしまっていることに気がついていない。


「はい、こんな私でも、守ることができたと思うと嬉しくて、だから今度こそ、私は守りたいと思う人を、守りたいです」


 覚悟の決まった様子で言うクロハ。


「……守りたいと思うのはリリアかい?」


「ここの王族の、人達です」


「私も含まれているのか、それは嬉しいな。しかし危険だ、王族は狙われやすい、今回のようなことはこれからも起こるだろう。私はリリアの命の恩人を危険に晒すことなどしたくない、それにまだ幼いじゃないか」


 クロハの守りたいという対象に自分が入っていたことに嬉しく思うハンズであったが、やはりまだ幼いクロハを危険な目に合わせたくないと思いそう告げる。


「私には、それしか道がないです、もう守れないのは嫌、なんです。お願いします」


「う~む……」


 昨日とは打って変わったようにしっかりと言葉を話すクロハに今更ながら困惑しながらどうするかとハンズは考える。


「……そうだな、そこまで言うなら……私達全員の護衛は君の気が休まらない、リリアの専属護衛でどうだい? ちょうどそろそろ新しく近衛兵を雇おうかと思っていたところだし、あの子も喜ぶだろう。昨夜の件もあるしね」


 流石に王族、ハンズ、リコット、アサーク、リリアの四人を護衛するのはクロハの気が休まないし無理だろうと考えたハンズは彼女にそう提案をする。


「……それで、お願いします」


 クロハも全員は無理だと思っており、承諾しそう言って頭を下げる。


「もっと気軽な感じで話して良いんだよ?」


「……私にとっての恩人、なので」


「君もカーラと似たようになるのかなぁ……まあ今は良いか、ちょうど休憩時間だし護衛のことやら色々説明するよ」


「ありがとう、ございます」


 ここからクロハの生活は一変することになる。

【あとがき】


 クロハは長時間喋れなかったことと、強いストレスでまだ辿々しい喋り方しかできないです。


 ぬい葉

「これ新科目『クロハ』のテストで出るから覚えておくように」


 黒葉

「テストにするな」


 ぬい葉

「ちなみにクロハの解剖数や解剖方法についての問題も出るから、さっそく実践形式で学ぼうか!」


 黒葉

「え、いやっ、やめ――」

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