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その先は朱か黒か……  作者: ぬい葉
二章:鎮静

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第16話:転機点

「私の知る限りでは、以上となります」


「そんなことが……」


 クラゲーヌから話を聞いたハンズは、とてつもないやるせなさに襲われてそう呟く。


「これはまだあの場にあった資料の一部から分かることです、実際はもっと酷いかもしれません……」


「むぅ……」


「お、お父様」


 どうしようかと考えていたハンズ、しかしその時甲高い声を聞き、彼は声の方を見る。

 するとそこには黄色のワンピースを纏った幼い少女が居た。それを見てハンズは驚く。


「リリア!?」


 リリア、彼女はハンズの娘である。


「なんでここに?」


「始めから扉越しに聞いていたようですね」


 ハンズが驚いていたのに対して、クラゲーヌは始めから分かっていたようにそう言う。


「居ることを知っていたのか?」


「勿論ですよ、私が城に入ってきた後からずっと付いてくるんですから、困ったものですよ」


 ハンズの問いに彼は肩をすくめてそう告げる。


「はぁ……ならば言ってくれ、こんな話、子供に聞かせるものじゃない」


 深く息をついて、呆れたようにそう言うハンズ。


「私が城に入ってきた時に見られたのです、気になってしまうでしょう? 見ず知らずの女の子が運ばれていく様子なんて……なら全て聞かせた方が言いかと思いまして」


「そうは言っても――」


「お父様」


 ハンズの言葉を遮って、彼を呼ぶリリア。


「ど、どうした……?」


 刺激の強すぎる話を聞いたリリアからの突然の呼び掛けに戸惑いながらも、彼はそう返す。


「わたくし、この子が欲しいですわ!」


「……ん?」


「わたくし、この子が欲しいですわ!」


「わ、わかったから落ち着け」


 この子が欲しい、と熱心に告げるリリアに気圧されながらもハンズは落ち着くようにと促す。


「……リリア、この子は物じゃない、それに話を聞いていたのなら分かるだろう、とんでもない経験をした、気軽に接せれる相手では無いだろう」


「分かってますわ! それでもわたくしはこの子が欲しいのですわ!」


「どうしてそこまで?」


 なかなか引かないリリアを見て疑問に思い、ハンズはなぜそこまで言うのかと問う。


「この子、酷いことされたんでしょ? ならわたくしがこの子の心の支えになって上げたいの……」


 俯き、そう言うリリア。


「リリア……」


 リリアのその思いを聞いて、ハンズは思わず感極まる。


「あと、可愛いからですわ!」


「……あれ、そっちが本命だったりする?」


 続くリリアの言葉に心の中でずっこけながら、彼はそう言う。


「どっちもですわ! なのでこの子を妹にしてください!」


「えぇ!?」


 妹にしたいということ、つまりは家族にするということだ。

 ハンズはその言葉を聞いて驚く、のと同時に流石に、と思っていた。普通の家庭ならばまだ良かっただろう、しかし王族となれば話は別になる。


「お嬢様!……やっと見つけました、もう急に居なくなるんですから」


 ハンズが困惑していると、そう言って一人の侍女が現れた。


「カーラ! わたくし、この子が欲しいわ!」


 クロハに指を指して現れた侍女、カーラへそう告げるリリア。


「一体何が?」


「リリアお嬢様がその少女を妹にしたいと言っている」


 カーラの疑問にクラゲーヌがそう答える。


「な、なるほど……お嬢様、陛下も困っております、それに淑女としてはしたない真似はしないでください」


「む!」


「リリア、流石に王族として血のつながっていない者を家族にする訳にはいかないんだ」


「……じゃあ、家族じゃなければ良いのですか?」


 ハンズの言葉を聞いてそう家族でなければ良いのかと考えるリリア。


「む……それは、まあ侍女などにするというなら良いかもしれないが」


「じゃあこの子はわたくしの侍女ですわ!」


「侍女は既に私が居るのですが……」


「侍女は何人いても良いでしょう?」


「えぇ……」


 侍女は何人いても良いとリリアに言われ、彼女の専属侍女として雇われているカーラは少々複雑な気持ちになっていた。


「リリア、その前に本人の意思を確認しないと話にならないよ、この少女はまだ眠っている、起きてからだ」


 ハンズは少々強い口調でそう言う。


「む~……分かりましたわ」


 それを聞いたリリアはしぶしぶそう答える。彼女も本人の同意が必要なのは理解していた。


「ってこの子、首輪が付いてますよ?」


 大人しくなったリリアはクロハに視線を向け、そこで彼女の首についている首輪に気が付いた。


「外すのを忘れていました、首輪の主は恐らく死んでいるので外せるでしょう」


 リリアの言葉で首輪を思い出したクラゲーヌは、そう言って首輪を外そうとする。


 隷属の首輪は登録している魔力の元が死ぬ、つまり主が死んだ場合、首輪を誰でも自由に外すことができるようになる。

 しかし込められた魔力が首輪の中から消えるのには時間が掛かり、首輪の効力は主が死んでから数日は続く。


 現在、博士が亡くなってまだ三日も経っていない、ゆえに首輪の効力は続いている可能性がある。


「ッな!?ぐっ!」


「きゃ!」


「お嬢様!」


「なんだ!?」


 クラゲーヌが首輪を外した瞬間、クロハの体から闇属性の球体が溢れ出すかのように出現した。

 一番近くにいたクラゲーヌはそれに当たり、大きく吹っ飛ばされる。


「一先ず離れましょう!」


「う、うん」


「そうしよう」


 そう言って三人はクロハから距離を取る。


「あれ? あの子目覚めてますわ!」


「ゔゔぅ゛ゔゔあああ゛!」


 リリアの言う通りクロハは起き上がっていた、しかし苦しそうに唸りながら頭を抱えている。


「安心、させなきゃ!」


「お嬢様!? きゃッ!」


 突然クロハへ向かって走り出したリリアを追いかけようとするも、足元で闇球が地面を破壊し、つまずいてしまうカーラ。


「リリア!」


 走っていった彼女を見て、ハンズも咄嗟に追う。


「っ」


「リリアッ!」


 クロハに近づくリリアに闇球が迫る。それを見てハンズは彼女を呼んで叫ぶ。





「えっ?」


「な、なにが……」 


 闇球がリリアに当たる、かと思われた時、突如リリアから光が発せられた。その光を受けた闇球は消え去り、結果彼女は無傷でその場に立っていた。


「お嬢様?」


 その場が困惑に包まれる。光の元であるリリアでさえも困惑していた。


「ゔゔぅ゛」


「……これなら行けますわ!」


 クロハの唸り声を聞いたリリアは、ハッとし再び近づいていく。


「何とかなるのですわ!」


 再び迫る闇球にそう言って何となくで力を込める。すると。


「な、なんとかなりましたわ……」


 またもや周囲が光り、闇球を消し去る。


「光魔法、か?」


 呆気にとられているハンズがそう呟く。


「捕まえましたわ!」


 そうしていると、リリアはクロハの元へたどり着いていた。


「ゔ、ゔぅ゛あ゛」


「大丈夫ですわ、ほら、大丈夫大丈夫」


 そうして彼女はクロハを抱きしめ、あやす。


「ゔ、う」


「そうそう」


 それはまるで母のように優しく。


 ――あたたかい


「うッうぅ、うわあああん」


 リリアの光はクロハの闇を押しのけ彼女の心へと届く。


「よしよし」


 クロハは泣き出し、リリアはそれを宥める。



    ◇



「すみません、遅れました……して、状況は?」


 クロハが泣き出し、魔法が消えたころ、クラゲーヌは部屋に戻ってきた。


「君がすぐに戻ってこれないほどだったのか」


 戻るのが遅かった彼を特に責めることもなく、ハンズはそう言う。


「ええ、情けないですがあの一撃でしばらく動けませんでした……まるで体の内側から攻撃されたかのような……っと、それよりも大丈夫ですか?」


「うん、なんかね、無事だよ……」


 疲れたようすでハンズは答える。


「お父様! この子寝ちゃいましたわ!」


 そんな会話をしているとリリアがそう呼んできた。


「カーラ、寝かせておい――」


 リリアの呼びかけを聞き、クロハを元の寝台へまた寝かせようとしたが、ハンズはとあることに気づいた。


(部屋が半壊、してる)


 そう、部屋が半壊していた。床や壁は所々抉れ、家具なども壊れ、それは誰が見ても酷い有様であると思うほどであった。


「……カーラ、その子を隣の客室で寝かせて上げてくれ」


「承知しました、陛下この子を洗っても良いですか?」


「あぁ、是非頼んだ」


 半壊している部屋で寝かせるのは気が引け、ハンズは隣にある部屋へ寝かせるようカーラへ言う。

 カーラはそれに答え、長時間風呂に入っていなかったクロハから少し汗の臭いを感じたため、ついでに彼女の体を洗うことにした。


「お嬢様、その子を運びます、貸してください」


「私も行きますわ!」


「頼んだ」


 そうしてクロハを抱えたカーラと、リリアは浴場へと移動していった。

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