幕間:研究所での生活
グロ描写注意です。
「はい、では今から腹の切開を始めます」
博士は周りの研究員へそう告げクロハの腹を裂こうと、ナイフを動かす。
(やめて、こわい……!)
自分の腹にナイフを当てられ、彼女は思わず恐怖する。
「――!!!」
(ッいたい!いたい!、やめてッ!いたいッ!!)
ついに博士によってナイフはクロハの腹へ沈む。当然麻酔などは無く、彼女は心の中で悲鳴を上げていた。
「っ!っ!」
暴れようにも拘束されており、暴れることはできず見ていることしかできない。
「ふむ、特に違いはない、普通といったところですか」
クロハの腹は博士によって完全に裂かれ、そこからは彼女の内臓が見える。
「おっと、こうしている内に傷が塞がり始めていますね」
博士がクロハの内臓を観察していると、裂かれていた彼女の腹が徐々に再生し、傷が塞がり始めていた。
「何をするにしてもすばやく行わないといけないのが面倒ですねッ!」
「ッ!!」
博士は塞がり始めた彼女の腹の傷を手で強引に広げる。あまりの強引さに、更なる激痛が彼女を襲う。
「内臓は確認できましたね、次は……そうですねぇ、胃を圧迫して見ましょうか」
そう言って博士はクロハの胃を握り、強く力を込める。
「ゴポッ」
すると苦しげに顔を歪めているクロハの口から胃液が飛び出す。
「なるほど、では次は潰してみますか」
博士は物体に衝撃を与える魔道具を彼女の胃にあて、起動する。
「――ッッ!!!」
衝撃をもろに食らった胃は弾け、クロハは口から胃液の混じった血を吐く。
「ちゃんと胃も再生してきていますね」
しばらくすると、彼女の胃は再生を始めていた。それを見て満足したように頷く博士。
「さて、次は取り出してみましょうか」
「ッッ!!」
博士は続いて肝臓を切断し、クロハの体から切り離す。
「ほう、流石ですね、新しく生成されている」
結果、彼女の体は新たな肝臓を生成し出していた。
「良いですね、もっと進めましょう」
◇
「博士、火で炙るのはどうですか?」
「良いですね、やってみましょう」
(熱ッ、熱い!)
「ふむ、これくらいのやけどなら再生していますね、一旦全身焼いてみましょう」
(あつい、あ、つい、いたい)
「だいぶ香ばしい匂いがしてきましたね、あまりよく見えませんが、再生しているようです、そろそろ良いでしょう」
「全身焦げていましたが、今ではその面影が無いくらいに綺麗な肌ですね。肌質も改善される、と」
◇
「念のため全身凍らせてみますか」
(さむい……さ、むい……)
「冷凍することには成功しましたが、だいぶコストが掛かりますね、それと流石に意識は無くなりましたか、では解凍しますか」
「予想通り、無事ですね」
◇
クロハの超再生の実験は終わり、翌日からは究極複合生命体の製作が開始されることとなった。
「他の生き物の融合方法は別の方々に研究してもらった結果判明しました。昨日それを私も拝見させていただきました。そしてこれからは複合生命体をキメラと呼ぶことにします。……では本題へ。究極を追求するならば、この娘の超再生が必要です、ですのでどうしたらキメラに超再生を持たせられるか、これについて思いつく限りの実験をしましょう」
「博士、この黒髪の少女を媒体にキメラを作るのは駄目なのでしょうか?」
博士の長ったらしい説明の後、一人の研究員がそう聞く。
「駄目ではありません、むしろ将来的にそうする可能性の方が高いです、ですがまずはどれほどの生き物を融合できるか等の情報が必要ですので、一先ずと言ったところです……質問は以上ですか? ではまずは動物や魔物を使用して実験しましょう」
博士は研究員にそう返し、実験を開始する。
◇
「再生中の体液を注入すると微力ながらも再生能力を得ることができる、と……しかし再生能力はこの娘の100分の一も無い。もっと他に方法は無いでしょうか」
「なら再生中の細胞などを与えるのはいかがでしょう」
博士が悩んでいると、ある研究員からそう提案があった。
「細胞、ですか。しかしそれは非常に難しいですね、細胞自体我々が長年の研究の末やっと発見できたもの、あんな小さきものを与えるのは……私的には厳しいと思います」
「やはりそうですか……」
「なら、あの娘の肉を与えるのはどうでしょうか?」
二人で思案していると、また別の研究員が近寄り、そう告げる。
「しかしもう既にあの娘の腕や足を魔物に融合する等のことはしていますが……」
「いえ、襲わせて食べさせるのです、直接。それならまだ生きた状態の肉の細胞を体内に入れることで再生能力を得ることができるのでは?と思いまして」
「なるほど! やってみましょう」
研究員の案を呑んだ博士は即座に行動に移す。
「――!――!」
「ガゥゥゥ!」
博士はさっそく傷だらけで空腹状態の一匹のフォレストウルフとクロハを一つの部屋に閉じ込め、観察する。
フォレストウルフは森に生息する一般的な狼型の魔物である。
討伐の際は一匹であっても、一般の成人男性が三人ほど必要と言われており、そこそこ手ごわい魔物だ。
クロハはそんなフォレストウルフを見て、狭い部屋の中で逃げ回っていたが、すぐに抑えられる。
「――!――!」
「ガッガゥガゥ!」
クロハは恐怖に表情を染めているが、フォレストウルフはそんなことよりも、獲物を捕らえられたことに酷く集中し、興奮しているようだ。
「ガァ!」
空腹のあまり我慢できなかったフォレストウルフはクロハの腹に噛みつく。
「――!ッ――!」
皮を剥いで、彼女の腹を引き千切り、内臓を食す。
(痛い!痛い!痛い!痛いッ!)
腹の中ををまさぐられる、内臓を嚙み潰される、引き千切られる感覚にクロハは内心で悲鳴を上げ、暴れる。しかし体の大きさに大きな差がある中で押さえつけられておりその抵抗は無駄に終わる。
(……ッ!ゔ)
絶え間ない激痛にクロハは何度も気絶するが、その度に激痛によって叩き起こされる。
「ガゥ?」
食べても食べても減らないことにフォレストウルフは疑問を抱く。
クロハの体は再生を繰り返しており、フォレストウルフが肉を食しては再生している。
研究所に来たばかりのクロハであれば、すぐに食い尽くされていただろう、しかし様々な実験の傷を治したことによって、彼女の超再生の再生速度は比べ物にならないほどに上昇していた。その結果今では食される速度よりも早く再生をしている。
「ガゥ!」
腹を空かせたフォレストウルフは、その疑問よりも沢山食べることができる、ということを嬉しく思い、次々と食していく。
「ガゥ……」
そうして、しばらくの間黙々と食べていたフォレストウルフであったが、腹が満たされたことによって、その内に食べることを止めた。
「実験成功みたいですね」
その様子を見ていた研究員がそう呟く。
そう、全身傷だらけであったフォレストウルフの体は、今では傷一つない体へとなっていた。
「フフッ、いいですねぇ。まだ改善の余地はありそうですが、これなら魔物やキメラの食料費を抑えられ、尚且つ再生能力を得させることができる、皆さん、ほかの魔物も投入しましょう」
そうして、博士らは次々と魔物を部屋に投入し、クロハの餌食地獄がしばらく続くこととなった。
【あとがき】
ということでクロハの研究所での生活はこのようなものでした。
黒葉
「私ってよく耐えたね」
ぬい葉
「そうそう、自己肯定感あげてこー!」
黒葉
「舐めたこと言ってんじゃねぇ」
ぬい葉
「え?」