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その先は朱か黒か……  作者: ぬい葉
一章:地獄へと
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第14話:アズラの砦

「助太刀するぞ」


 その声と共に、ブラッドスネークへ巨大な火球が飛来する。


「ギャアアアアアッ!!」


 巨大な火球に呑まれたブラッドスネークは耳をつんざくような悲鳴を上げる。


「あ、貴方は……! クラゲーヌさん、どうしてここに……」

「遠征でな、一人でだが」


 突然アバートの前に現れた、白髪紅眼の男、クラゲーヌと呼ばれた男は、そう言って苦笑する。


「遠征……ですか」

「ああ……っとそれよりもアイツを片付けるぞ、後方支援を頼んだ」


 そう言ってクラゲーヌは自身達を睨み付けるブラッドスネークへ目をやる。

 ブラッドスネークの表皮は、先程の彼の火球によって焼け爛れており、心なしか先程よりも覇気が無いように見える。


「そうですね、牽制程度ならお任せを」


 クラゲーヌの言葉でアバートも思考を戻し、ブラッドスネークを見据えながらそう告げる。


「頼もしいな、行くぞ!」






「流石ですね……」

「お前も成長したな、アバート。だがまだまだだな」


 数分後、ブラッドスネークは絶命しており、二人はそのような会話をしていた。


「っと、そうだ。私はまだ任務中ですので、ここらで失礼させていただきます」


 アバートは研究所のことを思い出し、クラゲーヌにそう告げ、クロハを抱えて研究所へ戻ろうとする。


「ちょうどいい、折角だから私も行こう」


 そんなアバートを見て、彼はそう言う。


「……良いのですか?」

「ああ、問題ない。さあさっさと行ってその任務を終わらせようじゃないか」

「一応私が受けた任なんですがね……では付いてきてください」

「おう、頼んだ」


 そうしてアバートはクロハを抱えた状態で研究所へ向かって走る。それを見たクラゲーヌも走って彼を追いかける。



    ◇



 数日前。


「というわけで、魔の森の魔物を減らしにいって欲しいんだ」


 そうクラゲーヌに告げるのはアズラ王国国王、ハンズ・アズラ。

 魔の森とはアズラ王国の西に隣接している、魔物が数多く生息している巨大な森である。


「陛下、もう少し威厳のある喋り方を」

「いや君の前ぐらいは良いだろう?」


 クラゲーヌとハンズは数十年の付き合いであり、このように軽口を言い合える仲だ。


「はぁ、まあ良いでしょう。その任、承りました、ではさっそく私は遠征のための軍の編成に取り掛かりますので、ここで失礼します」


 クラゲーヌは思考を戻し、彼から受けた任務の為の準備に取り掛かろうとする。


「あ、いや。すまないが今回は君一人だ」

「はい?」


 ハンズの言葉を受けて、クラゲーヌは動きを止める。


「一人とは」

「先日オダール領のとある村が何者かに襲撃を受けたのは知っているだろう?」

「ええ、ヴァエールでしょう?」

「うん、詳しく調べた結果、奴隷狩りの可能性が高いと判明した」

「奴隷狩り、ですか」


 奴隷狩り、村や街を襲い、そこに住む人々を違法奴隷とすること。

 クラゲーヌも勿論それを知っているため、少々表情に影が差す。


「だからしばらく警備体制の大幅な強化、それと見習い騎士の教育にも人員を割きたいんだ。だから君一人の遠征になる」

「はあ……私じゃなければ無理な話ですよ?」

「だから君に頼んでるんじゃないか」

「はいはい、わかりました……で、用件はそれだけですか?」


 クラゲーヌはハンズへそうぶっきらぼうに返す。


「なんか急に刺々しいね、いつもそれぐらいで良いんだけど……うん、用件はそれだけだ、忙しいところすまなかったね」


 クラゲーヌの態度は間違っても国王に向けていいものではないが、ハンズはむしろこれぐらいが良いと内心喜んでいた。


「別に問題ありませんよ、それが仕事ですから。では失礼」


 ハンズからの用件がもう無いことを確認したクラゲーヌは、そう言って書斎を後にする。



    ◇



 そうして現在に至る。


「というわけだ」

「はあ、なるほど……」


 研究所までの道のり、クラゲーヌはアバートと走りながら、彼にここへ来た経緯を話していた。

 アバートはクラゲーヌの教え子であるため、二人は面識があり、このように気楽に会話をできる仲なのである。


「任務で来たとなると、その任はもう終わらせたんですか?」

「勿論だ」


 アバートからの問いに高らかにそう告げるクラゲーヌ。


「流石ですね……あ、見えました、あの建物です」

「あれがお前の任務地か……この辺り、臭うな。今更ながらお前の任務の内容を聞いていなかったな」

「今回の任務は異臭がするというあの建物の調査です。そして調べた結果、あそこは推測ですが、研究所か何かでしょう」

「研究所か……となるとその少女は」

「ええ、恐らく何らかの実験体である可能性が高いですね」

「なるほど……」


 黒髪の少女クロハが実験体の可能性がある、そう聞いたクラゲーヌは不快に思ったのか、眉間に皺を寄せた。


「まだ可能性ですがね……詳しいことはまた後で、恐らく研究所内に私の部下がいます、まずは合流しなければ」

「そうだな、まずは任務優先だ」



    ◇



「……なんだこの酷い有様と臭いは」

「……化け物共は無事に処理できたか」


 二人は研究所の地下へと降り、地下の惨状を見てそう呟く。


「あ、団長!」


 すると橙髪、琥珀色の瞳の若い男性騎士がアバートを見てそう声を掛けた。


「おう、フォド、無事で何よりだ」

「団長こそ、大きい怪我は無さそうで良かったです……で、そちらの方、ってクラゲーヌさん!?」


 フォドと呼ばれたその騎士は、クラゲーヌを見て驚いた様子を見せる。


「おう! 私のことを知っているのか?」

「勿論ですよ! アズラ王国の騎士で『アズラの砦』と呼ばれる貴方を知らない者は居ないですよ!」


 アズラの砦。クラゲーヌの二つ名である。

 如何なる敵も打ち払うその姿を見た者達が彼をそう呼んだことから始まった。

 その実力は確かなもので、アズラ王国一の騎士としても彼は知られている。


「そうか、少し照れ臭いな」

「フォド、それよりもこの研究所について何か分かったことはあるか?」


 二人の話を聞いていたアバートは彼、フォドにそう告げる。


「あ、団長、失礼しました。」

「良い。で、どうだ?」

「はい、まずここは研究をする場であると思われます、ここを詳しく調べたところ、様々な薬品や資料がありました。そして、その資料をざっくり見たところ……その少女を軸に、研究を、行っているようでした……」


 アバートへ報告をしていたフォドは、報告の際に内容を思い出したのか、徐々に意気消沈していく。


「お前がそこまでなるほどのことをしていたのか……」


 気分が悪そうにしているフォドを見て、アバートはそう呟き、腕に抱き上げているクロハを見る。

 彼女は彼の腕で気絶しており、生きているのかすら怪しく感じるほど静かである。


「数人でこの子を連れて一先ず領都の訓練場の救護室で寝かせておいてくれ、もし目覚めたら落ち着かせ、俺が来るまで救護室から出すな」

「団長はどうするのですか?」

「残った者達と調査を進める、後の事はここの資料やらを持ち帰ってからだな、頼んだぞ」

「了解です」


 そう言ってフォドはアバートからクロハを受け取り、数人の同僚の元へ行き、同僚と一緒にこの場を去っていった。


「もうしっかり団長なんだな、何というか感慨深いな……」


 話終えたのを確認したクラゲーヌがそう言う。


「私はまだまだですよ」

「まあ誰しもそうだがな……さあやるか、手伝ってやる」

「良いのですか?」

「勿論だ、後は帰るだけだしな……さて何をすれば良い?」

「では、部屋の隅々まで資料を探してください、その他の薬品なども慎重に集めて下さい」

「任せろ」

【あとがき】



 ぬい葉

「アバートは目上の人に話すとき一人称が私になると、メモメモ」

 黒葉

「クラゲーヌも目上の人になると敬語になると、メモメモ」

 ぬい葉

「それは当たり前だろぉ!?」

 黒葉

「あぁん?なんだってぇ?」


 ぬい葉

「そんなことよりも!」

 黒葉

「そんなことよりも?」

 ぬい葉

「おなかすいた」

 黒葉

「〇ね」


 何このクソ茶番。


 というのは置いといて、そろそろクロハの生活が一変しますよ~! お楽しみに!


 ぬい葉

「あ、幕間挟みま~す」

 黒葉

「なんか嫌な予感が」

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